フォーエバー・フレンズ -316ページ目

13、まけるもんか(7)

仁科先生率いる港南学院選手が1塁ベンチから出てくると、甲子園の観客達が立ち上がって暖かい拍手で選手達を迎えた。

その暖かい声援の中、選手達はアルプス席へと歩いて行って、そしてみんなで礼をした。

あたりはピー!ピー!と指笛が鳴り響き、割れんばかりの盛大な拍手と大歓声が鳴り響いた

そしてみんなに熱い思いが込み上げてきて、悔し泣きの顔は、やがて美しいさわやかな笑顔へと変わっていった。


スポーツは勝ち負けだけが全てではない。
全力を尽くす事こそが大切なのだ。

「よく頑張った港南!本当によく頑張った港南!球場内は今両校の選手達にあたたかいエールを送っています」実況のアナウンサーは涙声で声が枯れる程、絶叫していた。


恵も由香子の手を両手で握り締めながらテレビ画面を見て涙を流した。

観客への挨拶が終わると、大河内と篠宮が1塁ベンチにやってきた。

そして大河内は「お前ら本当に強かった」といって速見と握手を交わした。

すると報道陣のカメラマン無数のフラッシュをたいて撮影し、沢山のテレビカメラもその瞬間をとらえた。

篠宮は陽一に「来年は絶対にうたれないからな」と言った

陽一は「来年またここで会おう」と言って篠宮と固く握手をした。

すると大河内は、陽一と真を両方に抱き寄せ「記念撮影や!」と言った。

そして「これで撮ってください」とカメラマンへ要望すると、また無数のフラッシュがともった。

大きな男3人が肩を組んだ姿。

それは戦い終えた後の、男の友情だった。


そしてその3人の後ろのテレビカメラの前で文麿が土下座しながら「由香子、起きたか?ごめん準優勝だったよ」と言った。

それをテレビを見ていた由香子は、涙ながらに笑って「一ノ瀬の馬鹿」と言った。


真は一塁内野席の茜をみつめると、茜も泣いていた。

真は茜に向けて親指を立ててポーズをとると、茜は涙を流した綺麗な笑顔で、真と同じように親指を立てた。


少し時間が立って球場内が静かになってきた頃、速見は陽一に「土どうする?徳永もって帰るか?」と聞いてきた。

「いりません。また来年来ますから。速見さんこそ持っていって下さい」陽一がそう言うと、速見は夕焼けが差し掛った甲子園の空を見つめながら「いらない」と言った。

「どうしてですか?」と陽一聞くと、速見は「全部ここに置いて帰りたいんだ・・・」と笑顔でそう言った。

そして「そうだ!最後に仁科先生を胴上げしようぜ!」と言った。

「ええ!私スカートだからダメ!」と仁科先生は断ったが、生徒達に無理やり連れて行かれた。

そして仁科先生は涙を流しながら生徒達に胴上げされ、甲子園のフィールド上に舞った。


こうして球児達の夏の夢は幕を閉じた。

みんな本当に良く頑張った。

だから胸張って横須賀へ帰ろう。


宴が終わり、茜は今朝甲子園から無事帰ってきた。
由香子も完全に意識を取り戻した。

そして選手達汐入駅へ到着すると、駅前は大勢横須賀市民が集まり、凱旋帰国してきたこの横須賀の英雄達を歓喜の渦で迎えていた。


昼すぎ、恵は家で夏休みの宿題をしていた。
なにしろ、ずっとアルバイトと由香子の看病で、宿題はたまったまんまだった。
すると恵の携帯に、陽一からのメールが届いた。


『鎌倉駅前のバスロータリーで待っている』


そのメールを見ると、恵は込み上げる気持ちを抑え切れずに家を飛び出して、鎌倉の町へと駆け出して行った。



おかえり陽一。

ずっと会いたかった。




写真素材 PIXTA
(c) ホワイトバランス写真素材 PIXTA




恵が鎌倉駅のバスロータリーで待っていると、陽一が改札口を抜けて、あたりを見回し恵の姿を探した。
その陽一の姿を見つけると恵は「陽一!」と言って、躊躇せず走りだした。
その声で、陽一も恵の姿を見つけ「恵!」と言って走り出した。
恵が陽一の大きな体に抱きつくと、陽一は恵を抱き上げた。
そして二人はキスをした、お互いのおでこをすり合わせた。
「陽一、会いたかった。大好きだよ」


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