フォーエバー・フレンズ -276ページ目

7、心の変化(1)

武南高校との練習試合の日がやってきた。

武南高校は今年も選抜に出場したが、小林が卒業してしまったという事もあり、3回戦で敗北してしまった。

しかし、強豪であることには変わりない。

この一戦の取材の為に、報道陣も数社やってきた。

そして試合前、報道陣は車椅子姿の美人マネージャの由香子を取材していた。

「手嶋さん。マネージャーの仕事大変じゃないの?」という取材陣の質問に、由香子は「ええ!そんな事ないですう。私、全然苦じゃないです。まあマネージャーの仕事は大変と言えば大変なんですけどお・・・洗濯したり、タオルくばったり・・・でもチームが勝ってくれると信じていつも頑張ってます」と思いっきりブリッコをしていた。

「そうかあ。頑張ってね。あすの記事に、『港南の勝利の女神』と入れるよ」

「そんなあ。女神なんて恥ずかしいですう」

この由香子のブリッコインタビューに司はもうキレそうだった。



そしていよいよ港南学院高校にとって進化が試される試合が始まった。

この試合は負けられない。

プロテクターを着けた淳紀は、これから始まる練習試合を先発メンバーとして迎える事となった。

「しまっていこう!!!」

淳紀の声が、港南学院グラウンドに響いた。

「おう!!!」



そして初球。

「いくよ、清志朗君」

淳紀はいきなりビーンボールのサインを送った。

すると清志朗は武南高校の先頭打者胸元スレスレにシュートを投じた。

「うわ!」武南高校の打者は、声を上げてのけぞった。

武南のバッターは一瞬清志朗を睨みつけたが、清志朗はそれに負けない闘志で、相手選手を睨み返した。

「もう一球行こうか?」淳紀は再びビーンボールのサインを送った。

「ああ」

清志朗は、そううなずくと、再びビーンボールを投じた。

武南のバッターは再び、のけぞりながらボールを避けた。

すると怒りをあらわにして、主審役の武南の補欠選手に抗議をした。

「危険球だろ?」

「危険球じゃないです。頭に行ってない」

そして一気に清志朗はリズムに乗り出し、次にスライダーを投じた。

すると武南の打者は空振りしてしまった。

「清志朗君。インハイのシュート行こうか?」

「ああ」

次に投げたシュートボールを武南の打者は差し込まれ、ファールとなってしまった。

カウントは2―2となり、最後清志朗はアウトローのストレートで相手打者を三振にしてしまった。

その瞬間清志朗は「よっしゃ!」と大声を出し気勢を上げた。



清志朗は、恐ろしい気合を見せるピッチャーだが、実はきめの細かいコントロールで勝負するピッチャーである。

前捕手の俊介は、ストライク先行型のリードをしたが、清志朗はコントロールが良い為、ボールが先行しても全然平気なのである。

だから、初球にビーンボールを投じる事が出来たのだ。

淳紀は清志朗の特性を把握していたのだ。

そして1回表を、新バッテリーの清志朗と淳紀は無難に乗り切った。

「あいつ、いいなあ・・・」古屋監督は、淳紀のリードに感心してしまった。



その後も清志朗は三振の山を築き、その度「よっしゃあ!」と声を張り上げた。

まさしく『燃える男 清志朗』である。

そして3回裏、打線の援護が始まった。

まず2番の修二が、シングルヒットを打ち、続く陽一もシングルヒットを放った。

「徳永さん!ナイスバッティング!」淳紀も懸命に声援を送った。

すると続く真が、走者一掃の2ベースヒットを放なち、2点を先制した。

ホームに帰ってきた陽一は「今日はなんとかなりそうだな」とチームの雰囲気をみて、なんとなくそう思った。



6回表、清志朗はツーアウト1塁3塁のピンチを迎えていた。

「タイム!」

淳紀はタイムを取って、清志朗のいるマウンドへと走っていった。

「悪いクセが出ちまったなあ・・・」清志朗は、頭を抱えた。

清志朗は、最近後半に大量得点を取られてばかりだった。

「大丈夫だよ。最悪歩かせてもいいじゃん。だから得意のビーンボールで攻めない?」

「カウント悪くなったらどうする?満塁になっちまうぞ?」

「清志朗君のコントロールなら大丈夫だよ。最悪点取られたっていいじゃん」

「そうかなあ・・・」

「絶対大丈夫!」淳紀はそう言ってニッコリ笑うと、マウンドを去っていった。

「不思議な奴・・・あいつに言われると出来るような気がする」



そしてビーンボールから入った次の打者を、清志朗は見事三振に仕留めピンチを乗り切った。

「よっしゃーーーー」清志朗はマウンドで吠えて、仁王立ちした。

今までならここで崩れていた。

しかし清志朗と淳紀のバッテリーは力を合わせて乗り切ったのだ。



そして陽一の援護射撃が7回表に飛び出た。

特大のツーランアーチだった。

そして続く真もホームランを放った。

久々のアベックアーチにチームの雰囲気は、盛り上がった。



9回表、港南学院は6点の大量リードで、清志朗はここまでなんと無失点。

ツーアウトまでこぎ着けると、最後の打者をファーストゴロに打ち取り、清志朗は高校初勝利を完封シャットアウトで締めた。

試合が終わると、淳紀と清志朗の新バッテリーはハイタッチをして喜んだ。

選抜出場校を、6―0で倒すと言う、申し分ない試合内容だった。

そしてこの試合で、淳紀は正捕手の座をゆるぎないものとしていった。

それは『小さな巨人』淳紀の誕生だった。


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