フォーエバー・フレンズ -255ページ目

11、恋(4)

試合が終わると、由香子は弥生にアイスクリームを奢ってあげた。

そして二人して、昼下がりの横浜スタジアムの外で、花壇の縁にすわりながらアイスクリームを食べた。

「美味しい」食べる事が大好きな弥生は、とても満足だった。

「そうかなあ」

「美味しいよ」

弥生は汗ばむ由香子の顔を、ハンカチでそっと拭いた。

由香子の肌を真近でみると、弥生は「由香子さんて本当に綺麗だなあ・・・」と改めてそう思った。

すると由香子が「文麿といい関係なんじゃない?」と聞いてきた。

「えっ?」弥生は突然の由香子の言葉に驚いた。

「でしょ?」

「ち・・・違います」

「私に気使わなくていいよ。奴とは終わったんだから」

弥生はしばらく下を向いていた。

そして「あの・・・由香子さんはなんで文麿さんと別れたの?」と聞いてきた。

「う~ん・・・結局合わないんだよね」と言って由香子は笑った。

そして「私も文麿もワガママだもん。お互い何かをして欲しいばっかりでさ」そう言うと、由香子は横浜の空を見上げた。

「陽一と恵もそう。真と茜もそう。司と私もそう。合うもの同士って言うのは、なんとなく自然にくっついていって、ある日その人の大切さに気付くんだよね」

弥生も由香子と同じように、横浜の青空を見つめた。

「私と文麿さんって合うのかなあ・・・・」

「合うと思うよ。弥生ちゃん面倒見いいしさ。あいつ甘えんぼだから」



茜は生まれてくる子供の為に一生懸命働き、由香子は新しい恋を見つけ、弥生は今一人の男性を気になりだしていた。

さまざまな青春が流れていく。




うん?誰かを忘れていないか?

そうだ。


恵を忘れていた。



恵は・・・。

なんと陽一の家のソファーの上で、試合の結果を見ずに寝てしまったのだ。

8階にある陽一の家は、ベランダから部屋へと心地よい風が入ってくるので、気持ちよくなっていつのまにか寝てしまった。

ソファーの横のテーブルの上には『柚シャーベット』を食べた後の食器が置かれていた。

恵はふと目を覚ますと、午後2時になっていた。

「あれ・・・寝ちゃった・・・。試合どうなったんだろう・・・あっ!やばい!もうこんな時間だ!」

恵は今日の陽一の晩御飯を作り終えると、急いでバイト先へと向かっていった。



いよいよ準決勝の日がやってきた。

対戦相手は、小田原の鷲野高校であった。

その日は朝から小雨がぱらついていたが、試合は予定通り決行された。

そんな雨の中、清志朗は序盤から苦しい展開になっていた。

微妙なコントロールが武器の清志朗は、雨の為に指先が滑ってしまい、ことごとくボールと判定されていた。

それに、微妙なコースでも、審判のジャッジは厳しく「ボール」と宣告されてしまう。

「畜生!クソ審判!」清志朗の怒りは、頂点に達していた。

1回表、なんとノーアウト満塁のピンチ。

カッカする清志朗をなだめようと思い、淳紀はタイムをかけて清志朗の立つマウンドへと駆けて行った。

「清志朗君、落ち着きなよ」

「あの、主審気にくわねえ!殴ってやりたい」

すると今度はベンチから司が走ってきた。

「どうしたの?」

「もう嫌になるぜ。雨でボールが滑るし、主審のジャッジは辛いしさあ・・・」清志朗はマウンドの土を蹴ってそう言った。

「淳紀君、主審に言って、マメにボール取替えてもらって」

「それが・・・主審にそれを言うと、高校生が生意気言うなって言われるんです」

司は淳紀からそう言われると、雨空を見上げてしばらく考えた。

ルール上、主審はプレイヤーのボール交換の要求には、応じなければならない。

しかしそれをたてにして咎めると、不公平なジャッジをされかねない。

司はその事をずっと考えていた。

そして「よし、わかった」というと全選手をマウンド上に集めた。

文麿は「また司の屁理屈かよ」といいながら、面倒臭そうにマウンドへとやってきた。

そして司に「何だよ」と言った。

「みんな、今日は主審をお客様と思ってほしいんだ」

司がそう言うと、文麿は「はあ?」と言って、目を細めた。

「なんで審判ごときに!」

すると陽一が「司の言う通りだ。ウチのチームは、ちょっとマナーが悪すぎるよ」と言った。