12、使命を背負って生きる(5)
資材置き場では今日も吉村と川崎の2名が機械のメンテナンスをしていた。ずっと仕事にありつける事ができなかった。
完璧すぎてもうメンテナンスをする箇所等何処にもなかった。トラックも新車のようにピカピカ。いつでも工事現場へ乗り込める状態だった。
そんな中、突如作業着姿の圭一郎が、資材置き場に姿を現した。胸には『西原開発工事』という文字。吉村はその圭一郎の姿を見て驚いてしまった。
「野島さん!」
すると圭一郎はニコリと微笑み「今日から西原開発工事の社長をさせていただきます。野島圭一郎です。どうかよろしくお願いします」そう言うと、ペコリと挨拶をした。
その言葉を聞いた吉村は思わず目頭を熱くさせた。川崎も同様、目を真っ赤にさせながら、圭一郎の姿を見つめた。
「皆さん。どうかついてきてください」
圭一郎がそう言って深々と頭を下げると、吉村の目からポロポロと涙が溢れだした。
「社長が従業員に頭下げてどうすんだよ!」
「吉村君・・・」
「社長がそんな事でどうするんだよ!野島さんが社長やってくれるなら、俺たちはついて行くだけだよ!だから『やれ』でいいんだよ!『行け』でいいんだよ!命令すりゃいいんだよ!俺たちは地の果てまでついていくさ!」
そう言って、ひっくひっくと号泣する吉村。川崎もひたすら号泣し続けた。
西原開発工事の再出発だった。
3月のある日。
西原開発工事は、夜間工事を行っていた。3月になったせいもあり、過酷な寒さの中での夜間工事も、少しは楽になってきた。
「社長。最近暖かくなってきたな」
休憩時間、吉村が缶コーヒーを口にしながそう言うと、圭一郎は夜空を見つめながら「もう春なんだよ」と一言。
「春がすぐそこまで来ているんだよ」
その証拠に、夜空には春の星座群が煌びやかに光っていた。それはまるで優太が西原開発工事の前途を見守っているかのようだった。
その時、一台の乗用車が工事現場の目の前に止まった。
それは今月始めに、圭一郎が恭子に買ってあげた乗用車だった。その車を見た吉村は「社長、あれ恭子さんの車だよ」と言って指差した。
「本当だ」
一体何をしに来たのだろうかと、不思議そうな目でその乗用車を見つめていると、恭子が「お疲れ様」と言って車から降りてきた。なんとその両手には手さげ袋が下げられていた。
「みんな、お弁当持ってきたよ」
恭子はそう言うと、ニッコリと微笑んだ。
おわり