フォーエバー・フレンズ -17ページ目

10、そばにいてくれた人(1)

救急車で病院へと搬送された恭子。このまま死んでしまうのではないかと思い、圭一郎は、いてもたってもいられなくなってしまった。

そして恭子がそのまま集中治療室に運ばれると、圭一郎は真っ暗な病院の廊下の椅子に、崩れるようにして座り込んだ。

「恭子ちゃん・・・」



一体何がどうなってこのようになってしまったのか、圭一郎は全く理解出来ないでいた。


そして恭子が持っていた大き目の茶封筒を手に取ると、くくるようにして止めていた、とじひもをゆっくりと回すようにして開けた。すると中には数枚の書類が入っていた。

その書類に書かれていた会社名。




『イー・フラッシュ・ネット』




その会社の名前を聞いて、圭一郎は愕然としてしまった。

去年青田と口論の原因となった『イー・フラッシュ・ネット』。

その時のやり取りを思い出した。






「青田さん、残念ですがそれは出来ません」

「野島部長、経営とは教科書通りにいかないものです」

「いくら教科書通りに行かないと行っても、やっていい事と悪い事があります!」

「またそれか!いい加減にしてください!」

「いくら青田常務と言っても、役員会で承認もせずにこんな事をするのは許されません!」

「先行投資だと言ってるだろ!」

「モラルの欠いた先行投資をするのですか?」




その時の事を思い出すと、圭一郎の目から涙がこぼれてきた。自分が丸和工務店を離れたばかりに、会社は犯罪に手を染める組織と化してしまったと。




『イー・フラッシュ・ネット』




その会社は北朝鮮系の会社であった。青田は北朝鮮の開発先行投資として、その会社を利用し不正送金をしていたのだ。

何事も最初にやったものが勝つ。そんな理論を持っていた青田。勿論その考えは決して間違いではないのだが、これは立派な犯罪であり、一歩間違えてしまえば、社運すらも揺るがしかねない事である。

圭一郎が下野したと同時に、青田は北朝鮮高級官僚への送金を開始したのだ。




しばらくすると病院へ綾乃が走って駆け付けてきた。「はあはあ」と息を荒げる綾乃は、驚いた表情で「ノンちゃん!恭子の身に一体何があったの?」と言った。

すると圭一郎は「俺がダメなんだ・・・」と言って肩を落とした。

「ノンちゃんが???」

「恭子ちゃんは、殺されかけたんだ・・・」

「そんな!」


圭一郎はこの事件の概要について、綾乃には一切話そうとはしなかった。何故ならこれは知ってはいけない事だったからだ。そして、ガクッと肩を落とすと、圭一郎は何も言わずに、ただただ下を向いて黙り込んだ。

すると綾乃が「恭子はノンちゃんの事が好きなんだよ」と話し出した。

「え・・・」

「恭子はずっと陰でノンちゃんの事を想っていたの。ノンちゃんが丸和を追われたのが可哀相で、だからずっと何とかしなきゃいけないっていつも思っていたの。この間恭子、カフェで泣いてた。ノンちゃんが新しい環境で幸せそうに生きているみたいだから。でも、恭子は恭子で、これまで本当にノンちゃんの事を考えていたの。不器用な恭子なりに、本当にノンちゃんの事を考えていたの」

圭一郎は目に涙をためながら、そんな綾乃の話をずっと黙って聞いていた。

「ノンちゃん、ちょっと前に沢山の人に好かれなくても、たった一人の理解者がいたらそれでいいって言ったじゃん。今のノンちゃんの一番の理解者。それはきっと恭子だよ」


その通りだった。圭一郎の最大の理解者。それは恭子だった。


恭子は、丸和の危機を何度も圭一郎に伝えようとした。しかし、自分はそれに対して、新しい道を進むからと言って、全く取り合わなかった。それでも圭一郎をなんとか丸和へと想う気持ちで、深く会社内へと踏み込んでしまい、知ってはいけない事を知ってしまったのだ。自分自身、その恭子の気持ちと言うものを軽く考えていたのだ。


自分が下野しなければ、結果はどうなっていたのだろうか?そんな事を思うと、尚更辛くなってきてしまった。


すると、集中治療室から、当直医が出てきた。

その姿を見ると、圭一郎と綾乃は咄嗟に立ち上がり、声をそろえて「どうですか?」と聞いた。

「う~ん・・・命には別状はありません。ただ・・・」

「ただ?」

「頭を強く殴られている為、ひょっとして後遺症が出るかもしれません」

「そんな!何とかしてください!」

圭一郎が必死にそう言ってお願いするも、医師はそれ以上の事は何も言おうとはしなかった。