フォーエバー・フレンズ -135ページ目

8、たった1ミリの進歩ー3

次の日、ジュリはバイト先でいつものように菜月と一緒にワッフルを焼いていた。

「こうやってキーウィとラズベリーと、生クリームを挟んで・・・」

そんな事を言いながら、ジュリは一生懸命に新製品の開発をしていた。

「うんうん」

菜月は側に立って、ワッフルケーキを作るジュリの姿を見守っていた。

「それで、外側にチョコレートをササッと」そう言いながらジュリは手際よくワッフルにチョコレートの線を縦横に作った。

そして「出来た!」と言って、出来立ての新製品を両手に持って、菜月に見せた。

「やったあ」菜月は嬉しそうな顔で、そのジュリの作った新製品を見つめた。

「菜月さん、食べてみて」

「うん」

菜月は早速そのジュリの作った新製品のワッフルを味見してみた。

モグモグとそのワッフルを食べながら、天井を見上げる菜月。

そして「うん、美味しい!」と言った。

「本当?」

「うん。美味しい。全然大丈夫!」

そして二人は、熱いカフェモカと一緒に、客席のテーブルでこのワッフルを食べた。

「ねえ、菜月さん。このワッフルに名前つけてくれないかな?」

「う~ん・・・」

「カッコイイ名前」

「そうだ!天使のジュリさんが作ったんだから、天使のワッフルでどう?」

「ええ!それじゃこのお店と同じ名前じゃん」

「そう、このお店と同じ名前。看板商品の天使のワッフル」

「店長怒っちゃうよ」

「わかんないよ。言ってみたら?」

菜月はそう言いながら、優しい笑顔でジュリに微笑んだ。



午後6時になると恭介がお店へと帰ってきた。

そして早速ジュリの作った新製品を味見してみた。

「うん、美味しい・・・美味しいよ」

「本当?」

「うん。これなら商品に出来るよ」

「それでね・・・店長・・・」

「なんだよ」

「この新製品なんだけど、このお店と同じ『天使のワッフル』という名前にしたいんだけど、ダメかなあ?」

「う~ん」

「ダメかなあ?ダメならいいよ・・・」

「いや、そうしよう。『天使のワッフル』それでいい。このお店の看板商品にしよう」そう言うと、恭介は少年のような笑顔を見せた。

「本当にいいの」

「ああ、いいよ」

「やったあ!」

ジュリはそう言うと、その場で飛び跳ねた。

「来週からお店に出してみよう。この天使のワッフルを」



その日、お店をしまうと、ジュリは寮へと帰ろうとした。

右手に持った『天使のワッフル』

寮母さんとレナと一緒に食べようかと思ったが、なんとなく恵理菜の事が気になってしまった。

「恵理菜さん、お腹空いてないかなあ・・・」そう言って夜空を見上げると、ジュリの足はいつの間にか田町スケートリンクへと向かっていた。



真っ暗な田町スケートリンク。

そして今日もそこには頑張ってフィギュアの練習をする恵理菜の姿があった。

銀板の上で、3回転ジャンプをすると、リンク横にジュリが立っている事に気が付いた。

「あなたは・・・」恵理菜が練習を中断してそう言うと、ジュリは笑顔で「恵理菜さん、お腹空いてない?」と聞いた。

すると恵理菜は「あはは」と言って笑い出した。

「な、なにがおかしいの?」

「だって私、お化けだよ。お腹空くわけないでしょ」

「そうかあ・・・」ジュリは恵理菜のその言葉に、思わず納得してしまった。




そして「有難う。気を使ってくれて。ちょっと休憩する」と言うと恵理菜は、笑顔でジュリのほうへと滑ってやってきた。

恵理奈は、なんとなくうれしく感じた。なにせ何年もの期間孤独な浮遊生活だった。こんな自分を構ってくれる人がいる事はやはり嬉しかった。