「ぼくのお⽇さま」雪が降り始めてから溶けるまで、短い時の間に紡がれた静かな恋の物語 | 『Pickup Cinema』

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© 2024「ぼくのお⽇さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

2024年製作/90分/G/日本 監督・撮影・脚本:奥⼭⼤史 出演:越⼭敬逹、中⻄希亜良、池松壮亮、若葉⻯也、⼭⽥真歩、潤浩 ほか 主題歌:ハンバート ハンバート「ぼくのお⽇さま」 配給:東京テアトル 劇場公開日 2024年9月13日 ★関西マスコミ試写会で7月25日に鑑賞

    

北海道の小さな街に暮らすタクヤ(越⼭敬達)は小学6年生。⾔葉がうまくでてこない吃⾳が少しある。地元の仲間たちと夏は野球、冬はアイスホッケーをしているが、どちらもあまり身が入らなかった。

ある⽇、苦⼿なアイスホッケーの練習中にケガをしたタクヤは、名曲「⽉の光」に合わせ氷の上を滑る少女さくら(中⻄希亜良)と出会い、心を奪われる。

さくらを指導するコーチの荒川(池松壮亮)は、リンクの端でアイスホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て、何度も転ぶタクヤを⾒つける。

タクヤのさくらへの純粋な想いに気づいた荒川は、 スケート靴を貸してタクヤにフィギュアを教えることに。

荒川は、元フュギュアスケート男⼦の選⼿だったが、夢をあきらめ東京から恋人・五十嵐(若葉⻯也)の住むこの街に引っ越してきたのだった。

そんな事情を知らず、荒川に対してほのかな想いを抱くさくら。さくらを想うタクヤ。二人の仲をつなごうとする荒川の提案で、タクヤとさくらは、ペアを組み、アイスダンスの練習を始めることになる。

何をやっても中途半端だったタクヤは、熱心に練習を重ね、みるみるうちに上達していく。そして、二人は判定会に出場することになったのだが・・・。

時代は、カセットテープで音楽を聴き、二つ折り携帯が出始めたころ。今に比べると障がいのある人やLGBTに対する意識がまだ低かった時代。荒川と五十嵐の関係は、繊細な心をもつ思春期の子どもたちにどう映ったのだろう。

子役の二人が、揺れ動くそれぞれの気持ちを静かに演じる。コーチ役の池松壮亮の抑えた演技も好感がもてる。

 

印象に残るラストシーン。映画の余韻に浸り、正解のない問いかけに応えようとする観客の一人としての私がいた。

その答えはエンドロールに流れる主題歌に隠されているような…。