「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」胸に響く名曲の数々。日本のポップシーンを変えた音楽家の姿 | 『Pickup Cinema』

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(C)「トノバン」製作委員会

2024年製作/118分/G/日本 企画・監督:相原裕美 出演:きたやまおさむ、松山猛、高中正義、坂崎幸之助、つのだ☆ひろ、泉谷しげる、高橋幸宏、松任谷正隆、吉田拓郎、坂本龍一ほか 配給:ナカチカピクチャーズ 劇場公開日:2024年5月31日 ★オンラインマスコミ試写で5月10日鑑賞

 

なんとも不思議な楽曲「帰ってきたヨッパライ」で日本の音楽史に颯爽と現れたトノバンこと加藤和彦。

「ザ・フォーク・クルセダーズ」の結成秘話から始まり、サディスティック・ミカ・バンドの世界進出、ヨーロッパでの成功、そして多くの歌手への楽曲提供やプロデュースなど、その足跡と功績をミュージシャンや文化人の証言から紐解いていく音楽ドキュメンタリー。

とにかく証言者として登場するすべてがレジェンド。

音楽業界にさほど詳しくない私でも知っている音楽家たち。点で存在していた彼らがトノバンを中心に線でつながっていくことに驚きと心地よいショックを受けた。

当然ながら彼らの一言一言には、何とも形容しがたい重みがあり、次は誰が出てくるのか、とドキドキする。スピードと驚きと発見、こんなドキュメンタリーは初めてだ。

断片的にしか知らなかったけれど、ずっと気になる存在だった加藤和彦。時代を先取る人とはこういう人なのか、音楽性、ファッション、生き方、そのすべてがカッコ良い。しかし、その反面、本人が抱えていた苦悩も計り知れない。天才なのだが、繊細で、努力の人であり、誰よりも音楽を深く研究していた人なのだ。

故高橋幸宏が発案して企画がスタートしたという本作。

トノバンをよく知っている人もそうでない人も「あぁ、そうだったのか」と時代と彼の姿を照らし合わせ、納得していく。

ラスト、若い世代に歌い継がれる名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」を2024年バージョンとして、きたやまおさむ、坂崎幸之助、坂本美雨らが中心になり関係者が合唱する。

一緒に口ずさみながら、なぜか泣けて仕方なかった。