現在の日本では61万人以上の引きこもりがいるという。
20代~30代で引きこもり、それが40代~50代になってしまった長期引きこもりが大きな問題である。
その問題の根本原因は、高度経済成長期が終わった後のバブル崩壊ではないだろうか。
そして、バブル期を享受した世代とバブル崩壊後の世代の意識の違い、社会に対する考え方の違い、見解の違いが親子関係に亀裂を走らせたと僕は思う。
いま一度、この国の在り方や心の問題、コミュニケーションを考えてもらいたい。
戦後の60代以上の世代と現在の30代、40代世代の意識の違い。
戦後から高度経済成長期を支えた今の60代以上の世代は、集団就職、終身雇用、定年退職後は年金暮らしが実現された世代である。
その世代の人たちは、自分たちの成功事例だけが正しいと考え、転職を許さない、離婚を許さない、息子・娘の話をちゃんと聴かず、子供の考えを理解できない人が多いのではないだろうか。
その時代は、どこへ就職しても成功していた。給料は右肩上がりでボーナスは2倍、3倍もらうのが当たり前だった。
就職して必死に働き、結婚して、子供を育て、夢のマイホームを買い、家具や白物家電を揃え、車を所有する。
就職するのは中小企業から大企業まで、どこへ就職しても明るい未来が約束された時代であり、公務員を選ぶ人は少なかったそうだ。
就職活動で本当に行き先がない人間が選ぶのが公務員だったという。
日経平均株価は右肩上がりで毎年、会社に雇用された従業員は昇給もボーナスもある。日本全国、中流家庭の時代だった。
今の30代、40代の世代は、高校を卒業して就職する頃には経済のバブルは弾けていた。
就職氷河期であり、就職先を探すのもひと苦労、企業側の経営状況次第では転職せざるを得ない、昇給やボーナスにも期待できない世代である。
さらに定年退職後の退職金や年金もアテにならない。
年々、雇用は減り、リストラもあり、転職は難しく派遣社員や契約社員で働けたらいいほうだ。
いい高校を卒業しても大学を出ても一度、就職に失敗したり、転職すれば後は人生が転落していくことになる。
今の日本は消費税を増税して、企業の努力を水の泡にしてしまう。外国人を受け入れて日本国民の雇用を守らない。
しかし、60代以上の高度経済成長期の日本の良い部分だけを享受した運の良い世代の人々は、自分たちの子供の世代の息苦しさを軽く見て、批判・否定する。
毎日、親から否定・批判された子供は部屋から出ることがなくなり、最低限の食事と睡眠だけをして、引きこもりになって再就職を諦め、人生に絶望する。
日本人の特徴として、親は子供と対面のコミュニケーションしか取らない。つまり反対意見と否定・批判が”親であるべきだ”と思っている節がある。
子供の目線に立つ、同調する、一緒に考えるコミュニケーションが取れる親は賢い。大抵の日本人の親はバカだ。
子供は就職で挫折を味わい、雇用された企業で挫折を味わい、家では否定・批判にさらされて、やる気を失う。
自宅に引きこもれば、それをさらに罵り、罵倒する。どこまでいっても対面のコミュニケーションである。
自分たちの恵まれた時代を棚にあげて「お前の努力が足りない」「転職するな」「どうして離婚したんだ」という。
自分の子供を引きこもらせた原因の一部は親の心のない言葉である。
本当に子供に自律して、社会で強く生きてほしいのなら、子供と一緒にできることを考えるのが大切だ。
できることをコツコツとやる。積み上げていく。
否定や批判はせず、ただただ見守る。それだけで十分ではないか。
日本人の特徴として、他人には愛想よく接するが自分の子供や身内となると冷たく傲慢なコミュニケーションを取ってもいいと勘違いしている人間が多すぎる。
愛情のないコミュニケーションだから、親子の縁が切れてもしょうがない。それが当たり前である。
今の30代、40代の世代が息苦しく、雇用が不安定で離婚が多いのは収入が増えないことが原因ではないか。
60代以上の親の世代は、結婚した息子夫婦に言っていないだろうか?
「家を買いなさい」「車を持ちなさい」「子供を作りなさい」
それらすべては負債となり、収入が増えないのに一気に支出を増やして夫婦生活を圧迫する。
離婚すれば、離婚した自分の子供のせいになる。自分たちの助言が間違っていることには気づきもしない。
離婚すれば男性の場合、母子家庭となる元嫁と子供に養育費を払うようになり、離婚後には新築で建てた家と車だけが残って、どれだけがんばって働いても養育費で自分の給料が圧迫されることになる。
そこでもまた60代以上の親の世代は、「どうして自分の子供はこんなに不器用な生き方をするのだろう?」と首をかしげる。
対面のコミュニケーションしか取らない世代は、相手を理解することがない。
論理立てて問題を整理して、根本原因を理解する。それが何よりも大切だ。
自分たちの子供の世代が苦しくなっているのに選挙では、自民党と公明党を選ぶ。
生きにくい若者の世代に、さらに油を足して問題の火を燃え上がらせる。
60代以上の親の世代は、すぐに自分の息子・娘に説教するのではなく、社会構造が正しいのか考えるべきだ。
そして、グローバル化社会を推奨する自民党や公明党、経団連が原因であることを知れば、自民党や公明党には投票しないはずである。
ナショナリズムで自国民を守る政党に切り替わらない限り、これからも若い世代の苦労は悪化する。
自分の子供をニートや引きこもりにしたくないのなら、現代の経済がどうなっているのかを学び、政治を知るべきだ。
そして、自分の子供を痛めつけることをやめて、一緒にどうすればいいのか打開策を考える余地を作ることが大切である。
そうしないと一生、状況は変わらない。
なぜならその状況を作り出しているのは”自分自身”なのだから。
60代以上の世代は、自分を省みて、立ち位置や考える方向を変えるべきだ。
そうすれば自然に状況は変化する。それをしないから状況は変わらないのだ。