Davis 第9話 【耳で聴く小説】 | Hiroumi.Metaverse

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※下記に内容を書いていますが一部修正しています。


イーロン社の内部に屋上から侵入したニコルは、3Dマップで内部構造を理解しながら慎重に階段を降りてゆく。
幸い、非常階段には防犯カメラがなく、すんなりと下の階に進んでいくことができた。

メインコンピューターがあるのはデービスが作り出した3Dマップの情報では20階のコンピュータールームのようだ。
そこに辿り着くまでにどれぐらいの管理体制があるのか分からないがスカイタウンの異常事態を止めるためには行くしかなかった。

イーロン社の内部はとても静かで、非常階段を降りるニコルの足音だけが鳴り響いている。あまりにもすんなりコトが運ぶというのは、不吉な予感がするものである。
スカイタウンは、偵察機のドローンが飛び回ったり、介護ロボットが暴走したり、異常な事態になっているのにイーロン社のビルの内部が静か過ぎるのでニコルは警戒心を強めた。

ニコル「やけに静かだな。イーロン社のビルの内部にはどれぐらいの従業員がいるんだい?デービス」
デービス「イーロン社の本社ビルの従業員は20人ほどです。警備ロボット、AIなど、アンドロイドやバーチャルアンドロイドは数に含めません」
ニコル「なるほど、20人ほどか。それにしても少ないな。もしかしたらバーチャルオフィスにAIが1000体とか働いてたりするかな・・・」
デービス「この規模のビルと設備であれば、およそAIは1000体いるのが平均的です」
ニコル「そうだよなぁ、そうなっちゃうよなぁ。メインコンピューターのバーチャルアンドロイド・マザーと話ができれば何か手がかりがつかめるかもしれないね」
デービス「20階には警備ロボット、防犯カメラ、暗証番号によるコンピュータールームの施錠はあるでしょう。マザーと話をするためにはそれらをクリアする必要があります」

ニコルはため息をついた。わかってはいたがイーロン社のセキュリティを乗り越えるのはそうとうハードになりそうだなと思った。
護身用に持っているベレッタM84の銃だけではなんとかなりそうになかった。なぜなら警備ロボットの装甲は頑丈でたとえショットガンでも貫通することがないからだ。
警備ロボットがあらゆる大企業のビルに配備されるようになってから、米国ではビルに何者かが侵入する事件が80%減少した。
それでも侵入した強盗やマフィアは警備ロボットにボコボコにされて生死の狭間を彷徨うか、逃げ出した強盗やマフィアは、防犯カメラに映った姿で犯人が特定され、警察に逮捕されているのだった。
検挙率は100%である。つまり警備ロボットがビルに配備されるようになってから侵入者が目的を果たせたことはなかった。
そのため年々、ビルのセキュリティに割く人員は少なくなり、警備ロボットだけが巡回警備をするようになった。警備ロボットは、AIとドライブレコーダーを搭載しているため、不審者の情報はそのまま警察署に流れるようになっていた。つまり警備ロボットに出会った瞬間、「終わり」である。目的を果たすことはできないのだ。

20階についたニコルは施錠されたドアノブをベレッタM84で撃ち抜いた。ビルの非常階段側の空間で銃声が鳴り響く。さすがにこれはバレバレである。
16階、18階、21階の非常階段の出入り口のドアが開き、従業員たちが顔を出して、各階からキョロキョロと上下の階を見渡しながら音の原因を探っているようだ。
姿が見つかる前にニコルは素早く20階の室内に侵入した。ゴーグルでメインコンピューターの位置を探り、メインコンピューターは、ここから直線で建物の一番奥であることがわかった。
ニコルはメインコンピューターの場所へ慌ただしく急いで走り出した。それと同時に、その姿は防犯カメラに映り、バーチャルオフィスで”ビルの管理をしている”AIに見つかってしまった。
バーチャルオフィスはコンピューターが作り出した”仮想空間”である。そして、メインコンピューターにセットされたマイクロチップAI1000個がバーチャルオフィスで働く、バーチャルアンドロイドである。バーチャルオフィスには1000体のバーチャルアンドロイドが居住しているのだ。

デービスと同じバーチャルアンドロイドであり、マイクロチップAIにはそれぞれ個性が備わっていた。
ランダムに組み合わせられた特性によって個性が発揮できるようにバーチャルアンドロイドは設計されているのだった。

ニコルを発見したAIは警察署へ連絡を入れ、さらにコンピューター室を管理している2体の警備ロボットをニコルのほうへ向かうようにネット回線を通じて指示を出した。
警備ロボットにもAIは入っているので、それぞれが最適な判断で動き、最善の結果になるように思考しはじめた。

警備ロボットは体を180度回転させて動き出し、メインコンピューターがある部屋の入り口でIDカードと暗証番号が必要なセキュリティロックがかかった頑丈なドアに戸惑うニコルのほうへ向かった。

メインコンピューターは通路の一番奥にあり、扉にはIDカードの認証と暗証番号が必要になっている。そして、そこに辿りつくまでに防犯カメラがあり、警備ロボットは室内で一番離れた左端と右端に一体ずついる。
通路の奥に進むと壁と通路だけになり、逃げ場がないので警備ロボットがそこへ到着すると身柄が拘束されるように仕組まれていた。

IDカードを持たず、暗証番号もわからないのでニコルはそこで観念して、警備ロボットに拘束されることにした。
警備ロボット2体が通路を塞ぐように歩いて来る。物々しく非常に恐ろしい光景である。

ニコルは両手を頭の後ろに組んで、抵抗しないことをアピールした。警備ロボットがニコルの真正面で止まり、ドライブレコーダーにその姿を映して警察署へ、画像を転送した。
ニコルは警備ロボット2体に両手と両足を抱えられて運ばれていくのだった。

ここまではニコルの想定の範囲内である。イーロン社から警察署へ連絡が行けば身元が調べられてスカイタウンの両親の元へ連絡がいく。そうなれば非常事態になったスカイタウンの様子を両親から警察官に伝えてもらうことができるはずだと打算的な考えをしていた。そして、このイーロン社の警備ロボットがニコルを連れて行ったのは最上階にいる最高責任者であるイーロン・ゴールド社長がいるオフィスだった。

ニコルは両手、両足を警備ロボットに抱えられたまま社長の元へ連れて来られた。

イーロン・ゴールド社長「AIの情報によると君はスカイタウンの住人のようだね。どうして君のように裕福で幸せに暮らしている子が我が社のメインコンピューターを狙ったんだね?」

本来なら社長が不法侵入した人物には会わないのだが自分の会社が管理をしているスカイタウンの住人が侵入して来たことに興味を持ち、会って直接、話をすることにしたのだった。

ニコル「スカイタウンにはイーロン社の偵察機のドローンが溢れ返っている。介護ロボットは暴走して住人をビルから外に投げ始めています。非常事態になっているからメインコンピューターを止めに来たんだ」

それを聞いたイーロン・ゴールド社長は、にわかに信じられない様子で、タッチパネルのパソコンを内臓した机のディスプレイを両手で操作して、机の中央にスカイタウンの様子を映しだした。
机の中央のモニターには、スカイタウンで飛び回っている偵察機のドローンが無数に映っていた。

イーロン・ゴールド社長は目を丸くして驚き、思わず椅子から立ち上がったのだった。