艱難(かんなん)、汝を玉にする 〜 渡辺崋山
渡辺崋山は人の勧めで、ある師匠について絵を習うことになりました。
崋山は、母からわずかなお金をもらっては、紙を買い、昼夜を問わず熱心に稽古をしていましたが、師匠に十分なお礼をすることができなかったので、2年ばかりで波門にされてしまいました。
崋山は、1日も早く一人前の画家になって、父母を安心させようと思っていましたから、たいそう力を落として、泣き悲しみました。
父は、それを見て、
「それくらいのことで力を落とすようではダメだ。他の師匠について、しっかり勉強するが良い」
と言って聞かせました。
崋山は、父の言葉に励まされて、別の師匠につきました。
その師匠は、崋山のことを気の毒に思って、親切に絵を教えてくれ、崋山も懸命に勉強したので、崋山の絵はみるみる上達していきました。
そこで崋山は、絵を描いてそれを売り、家計を助けながら、なお熱心に稽古に励みました。
その間に、崋山はまた学問にも励みましたが、学問に割く時間がなかったので、毎朝早く起きてご飯を炊き、その火の明かりで本を読みました。
艱難、汝を玉にする。
(参考図書:尋常小学校 4年生 「修身書」昭和12年)