子供に親の希望する職業を押し付けているケースがあります。一番わかりやすいのが、親が自営業の場合。個人で商売をやっている場合、子供に跡をついでほしいと思う親は多いです。また、公認会計士や弁護士など、サムライ業と言われる資格商売も同じです。中小企業の創業社長の場合でも、やはり、後任は自分の子供に任せたいと考える社長は多いです。子供にとっても、親の築いた地盤に乗っかり、経営者として活動できるので、メリットがあるようにみえます。しかし、本当にそれが子供にとって幸せなことなのかは疑問です。
日本の財界人として有名な渋沢栄一氏の例です。彼の跡取りとして、長男の篤二がいたが、その長男が放蕩息子であり、長男に跡を継がせることを断念し、孫の敬三に跡を継いでもらうように頼みました。その孫の敬三は、自分のやりたい学問があったが断念し、東大の経済学部に進学して、銀行業を継ぎました。以下は、敬三の長男が書いた書物から引用です。
ゆくゆくは大学の理学部に進みたいと考えていた。ところが祖父の栄一が意義を唱えた。自分の後継者として、銀行の仕事をぜひ受け持ってほしいというのである。
栄一は強圧はしなかった。しかし、誠心誠意若い孫に懇願した。「とても悲しかったよ。悲しくてしょうがなかった。」と父は言った。
自分の一番好きな道、もっとも生甲斐とあこがれを感じる道に行くことができないのが淋しかった。今の世の中なら父の立場も違っていただろう。また、もし篤二が健在で、父が普通の意味での三代目だったら、自分の希望を通していたかもしれない。
「命令されたり、動物学はいかんと言われたりしたら、僕も反発していたかもしれない。おじいさんはただ、頭を下げて頼むと言うのだ。70いくつの老人で、しかもあれだけの人に頼むと言われるとどうにも抵抗のしようがなかった。」
以上、引用終わり。
その孫は、やりたいことがあり、その勉強のため学校に通っていました。もともと、その孫は、親を飛び越えて、祖父の跡を継ぐことなど考えていませんでした。しかし、栄一の長男が放蕩息子であり、親もしかたなく、長男に跡を継がせることを断念し、孫に頼み込んだのです。孫のほうも、偉大な渋沢栄一からの頼みなので、断るわけに行かず、引き受けることになりました。だけど、敬三本人の感情として、わだかまりが残っていたのが、感じ取れます。
外からみれば、日本の財界人のリーダーとしてのポストを与えられたわけだから、羨ましいかぎりと考えてしまいます。しかし、当人からしてみたら、自分が進みたい進路ではなかったのです。不本意ながら、親(祖父)から頼まれて、しかたなく後継者としての道を選択したのです。これは、肩書きがその人の幸せを左右するとは限らない例です。
おやじは自営業で社会保険労務士という仕事をしていました。長男である自分に後継者になることを期待しました。自分は後を継ぐのを拒否し、弟が後を継ぎました。
子供がどのような職業につくのかを、親がコントロールしないほうがいいです。それは、親のエゴイズムであり、子供の幸せを願う親の感情では決してありません。後継者だからといって、強圧してはいけません。子供が自分から望むのであれば問題ありません。しかし、親が涙を流して訴えたり、頭を上げてお願いしたりして、子供の心をぐらつかせてはいけません。江戸時代のような封建社会であれば、呉服屋の家に生まれたら、呉服屋の仕事をする以外の選択肢はなかったでしょう。しかし、今は、封建時代ではないのです。親は、子供が自ら進みたい進路を尊重してあげることが、結果として、親と子供の双方にとってハッピーな結果になるのです。
ヒプノセラピー/潜在意識への扉
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