芝居小屋日記 | 熊本 アラ還ホームティーチャーの毎日いきいきブログ~ECCジュニア鹿校通教室

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熊本県山鹿市鹿校通で英語教室を経営しています。
日々のできごとをエッセイのように綴っています。

八千代座 での 2日目。

今日は ちょっとした事件がありました。

正確に言うと 事件になりそうなことがありました。


口上が終わり 幕間になったとき ひとりの男性が近づいてきて こう言われました。

「近くの席の女性が 口上のあいだ ずっと動画を撮っていましたよ。あの人です。」


さあたいへん。

それを SNSにでもアップするならたいへんなことになります。

すぐに 責任者に連絡をしました。


責任者が言うには


まずは 実際に見たならよいが そうでないなら

注意はできない。

名誉毀損で 訴えられるかもしれない。


たしかにその通りです。

様子を見ることにしました。


次の踊りのとき、

その女性が 見える位置に座り 見てない振りをしながら観察しました。

果たして その女性は スマホを目の位置に掲げ 大胆にも画面を覗きながら 舞台を見ているではありませんか。

これは現行犯です。


わたしは 張り込みの刑事のように 静かに近づき、小声で、しかし 目を見つめながら しっかりした調子で こう言いました。


「お客様、恐れ入りますが スマホの電源をお切りください」


すると その女性、何と言われたと思いますか?


「だって こうしないとよく見えないんですもの」


スマホを通して 舞台をみていたんですね。

なぁんだ!


いやいや なぁんだ!では 済まされません。

観劇中に スマホを使ってはいけない決まりです。

そこで もう一度 お願いをしました。


女性は 不満そうな表情でしたが 渋々 電源を切りました。


若い責任者に報告をしたところ、オペラグラスを持って来られました。

「もし まだスマホを使われるようでしたらこれをお貸しください。」


その女性は もうスマホを使う様子はありませんでしたが、 次の幕間に わたしは その女性に近づきました。


「舞台が見づらくてスマホをお使いだったのですね。」

「もう いいです。使いませんから。」

ご機嫌を悪くされていました。

「よかったら こちらをお使いください。係の者が持ってまいりました。」

オペラグラスをお渡ししました。

はじめ、わたしもそのかたも使い方がわからず、反対から覗いていたので 物が小さく見えていました。

そのことに気付き、一緒に笑ったりするうちに 打ち解けてきました。


終わってから その女性が オペラグラスを返しに来られました。


「とてもよく見ることができました。ありがとう。」


よかった。


スマホを使うのはもちろんいけませんが、

せっかく来たのによく見えない無念さはよくわかります。

八千代座での 思い出が よいものに変わって よかったと思いました。