ようやく打線の調子が上向く気配が見えてきた中で唯一人出口が見えてこないのが四番打者、岡本和真だ。
え?好調なんじゃないの?と言う人もいるだろう。
6月7日現在、打率.280、本塁打10本、打点31という数字は立派なものだ。打点、本塁打共にリーグ2位という成績だけ見れば好調と言っても良いのかもしれない。
だが、ここまでの岡本の打点が巨人の勝ちに貢献したケースが果たしてどれだけあるか考えてみてほしい。
私の記憶の限りではあるが、負けている場面での同点打や点差を縮めるホームラン、逆に大勝ちしている時のダメ押しはあっても、試合をひっくり返したり勝ち越しとなる一打といった、期待に応える当たりが本当に少ないのだ。
2023年は逆点打を打っても投手陣が持ちこたえられず再逆転を許したり、岡本の前に走者が溜まらず一打で勝ち越しが狙えない状況であったりと勝ち運に恵まれなかったのはあるが、今年に関しては一打逆転やサヨナラの場面で回って来ても、三振や凡打、良くてせいぜい最低限の犠牲フライだったりする。もう1点足りないという歯痒い思いをする事が非常に多いのである。
批判を恐れずに言えば、打ってほしい場面で豪快な打球を飛ばせる打者こそが四番の、特に巨人の四番打者の資格を持つのであり、いくら数字を残そうとも肝心なところで勝ちを呼び込めなければ四番打者の役割を果たしているとは言えないのだ。
勿論、そんな打者はそうそういるものではない。
過去の巨人の四番打者を見ても、その条件に当てはまるのは王貞治や長嶋茂雄の様な伝説級か、私の覚えている範囲でも阿部慎之助くらいだろうか。
それに例え伝説級の打者であろうとも毎度期待に応えられるはずもないし、世界中どの球団を探してもそれ程の打者は見かけない。
四番打者ではないが、あの大谷翔平ですらその様な場面で結果を残すのは稀なのだ。
現状の巨人打線では長打を警戒するのは岡本のみと言っても良く、得点機での相手投手は最高の集中力を持って攻めてくる。しかも塁が埋まっていない限り歩かせてもよいのだから厳しいコースを狙って投げ込む事ができる。
そんな状況で期待に答えた結果を残すのというのは至難の業だ。巨人の四番打者ともなればその注目度やファンのプレッシャーも半端なものではないだろう。
そんな重圧の中、四番として打席に立ち続けるだけでも凄い事なのだ。調子が悪いからといってそうそう休むことも出来ない岡本の負担と苦悩は計り知れない。
それでも敢えて言いたいのだ。岡本、奮起せよ、と。
確かに全く打てていない訳でもスランプという訳でもないとは思うが、非常に迷って打席に立っているのがわかるのだ。
初球や2球目の真ん中付近の真っ直ぐを簡単に見逃し、わざわざアウトローギリギリの厳しい球に手を出してみたり、外に逃げる変化球に簡単に空振りし、内角には手が出ない。甘い球が来ても詰まったり打ち損じたりと、どうにも相手バッテリーに良いように翻弄されているように見えるのだ。
打席に立つ姿を見ても、顔は投手を睨みつける仕草はあってもどこか自信なさげで悩んでいる雰囲気が見えてしまう。
そういった雰囲気は勝負に間違いなく影響するもので、威圧感や恐怖感を感じないため投手に見下されて強気に攻められているのが分かる。
個人的にはそれ程外角の球が気になるなら内角を捨ててでももう少しベース寄りに立ち位置を調整するか、逆に外角は振らないと決めてもう少し真ん中から内角寄りに的を絞った方が良いのでは?とも思うが、そんな技術論は恐らく様々な意見が飛び交っている事だろう。
ただ、これだけはすぐにでも変えて欲しいことがある。
思うような結果が出なかったとしても下を向くな、無理をしてでも上を向け!と言いたいのだ。
悩んでいることも結果の出ない事に苛つくのも解る。
だが四番打者であると同時に岡本は巨人のキャプテンである。
チーム全体の雰囲気を作るのはキャプテンの役目なのだということを忘れてはいけない。
多くを語らず背中で見せるキャプテンもいるし、好調な時ならそれでも良いが、不調な時こそ無理をしてでも声を出しチームを鼓舞しなければならないのだ。
誰に何を言われようとも、結果を出せなくてどれほど辛くとも、胸を張って堂々としていれば良いのだ。岡本にはその資格がある。