たつの市アピール不足じゃない? | あくまでも私の持論なんですが

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あくまでも私の個人的な見解を好き勝手に語るブログです。
文中敬称は省略させていただきます


 

今回のGWは両親と共に旅行へ。


久留米と東京の中間地点ということで行き先は兵庫に決め、旅は基本的に行き当たりばったりという奥さんの方針に合わせて宿泊地以外はノープランという旅となった。


まず最初の宿の決め方がホテルの食事がバイキング形式では無いという条件のみだ。


最近ホテルでの食事がバイキング形式というのは意外に多い。まあランクや格式にもよるが、個人の好みに合わせて調整出来る点や、給仕の手間を省くことができるので客側にとってもホテル側にとっても都合が良いのだろう。


ただ、これが高齢の両親にとっては意外に面倒なのだ。まだしっかりしているとはいえ、多少なりとも膝や腰に不安があると立ったり座ったりといった動作が結構煩わしいのだ。


そこで今回は夕食と朝食をゆっくり座った状態で食べられるという条件に絞ったわけだ。



そこで奥さんの決めた宿がたつの市にある「片しぼ竹の宿  梅玉」である。


申し訳ない事に私はこの宿やその周辺に関しては全く事前に調べる事もなく、ただ温泉宿では無いことだけは聞いていたので普通の昔ながらの旅館なのだと単純に思っていた。


最寄りの新幹線の停まる駅は相生駅という岡山と姫路の中間だったのだが、周りには何も無い閑散とした駅だ。そのままレンタカーを借りて軽く昼食がてらドライブしてから宿へ。


そう、今回の宿は駅近ではなく、車でないと行きづらい場所だ。観光で移動する煩わしさも考え、今回はレンタカーを借りることにしたのだ。


川沿いから入って車が通るのも難しい細い路地を進んでいくと寂しい場所に寂れた感じの旅館を発見。

正直、今回は外れかなぁと思いながら入っていったのだが、受付などの内装は非常に綺麗だ。


我々は3人部屋だったのだが日本間の部屋は広々としており、檜の風呂は一見造りが古いのだが設備は給湯器とシャワー完備で使いやすい。

Wi-Fiも普通に使えるし、年季の入った見た目とは裏腹に若い人や外国人にも不満無く泊まれるのだ。


そして今回の決め手となった夕食だが、これは本当に期待を上回る美味しさだった。




メニューとしては、わらびや豆、桜海老といった和の食材が中心で一見普通の旅館の夕食だ。

肉類は使っていないので正直若者向けでは無いとは思う。


だが、どの料理も味付けが非常に上品で繊細なのだ。

ひとつひとつ丁寧に盛り付けられ、熱すぎたり逆に冷蔵庫で冷やされたひんやりとした冷たさも無い程よい口当たり。

けっして薄めの味付けというわけでは無く、素材の味がしっかりと生かされており、しかもえぐ味の様な癖は無くどれも好き嫌い無く食べられるのである。










そしてこの旅館の料理の売りとして寿司飯の代わりに素麺を使った巻き寿司、素麺の磯辺揚げ、汁物には煮麺と素麺を使った創作料理が目を引く。

味わいはやや蛋白に感じるが、それは素麺自体の美味さを損なわない様に気を使っているのがわかるのだ。







聞くと旅館の近くを流れていた川は揖保川、つまりあの有名な素麺である「揖保乃糸」の生産地だとのこと。

なるほど、素麺の味を生かした料理が出るのも当然といったところか。




勿論鯛を炊き込んだご飯も美味しいし、品数も多いので思いの外食べ甲斐もある。またどの食材も意外な程酒の肴として合うので会席料理として充分満足出来る内容だった。

しかもお腹には優しいので翌日胃もたれすることもなく、高齢の両親、中年の我々にも負担が少なかったのである。


翌日の朝食も焼き魚に海苔、出汁巻き卵や筍といった定番メニューではあるが、どれも味付けは柔らかで適度に温かく食べやすい。


調味料は無く、代わりに醤油を染み込ませた大根おろしが焼き魚のそばに上品に添えてある。

ご飯の友となるおかずが揃っていて、しかも梅干しや漬物の類に至るまで、酸味や塩味といった刺激は極力抑えてあり、朝食であることを意識した気遣いを感じるのだ。


一応断っておくが私は食事は基本的に腹一杯食べられればそれで良いと思っている方だ。

なので外食も美味しい店よりは食べ放題といった質より量を選んでしまいがちなので、それ程食通なわけでも舌が肥えているわけでもないと自負している。


だが実際に味わってみてふと思った。

旅行先で食べる食事でこういった感動をするのはずいぶん久しぶりなのだなあと感じたのである。


勿論ガイドブックで紹介されている店やホテルの料理は非常に美味しい。

ただし、確かに美味しいのだけれども皆はっきりとした分かり易い味付けで、良く言えば万人向け、悪く言えば画一的でここでなくとも食べられる様な味付けだと感じる事が多いのだ。


それに、特定の人気メニューであったり、バイキング形式の食事であったりは当然ながら作り置きを温めたり、逆に冷えた状態のままである事も多く、やはり数をさばく事を優先してしまっているのがどうしても透けて見えてしまうのである。


最近では旅先の食事というのはそういうものだと思い込んでいたのか、もしくはそういう事に慣れすぎていて気にもしていなかったことに改めて気付かされた気がするのだ。


勿論、きちんとした料亭であれば話は別だが、旅先での食事にひとつひとつの盛り付けや提供のタイミングに合わせた温度の管理といった丁寧な仕事を見る機会というのは本当に少ない。


だからこそ、こういった旅館の何気ない気遣いが見える食事というのは新鮮で、非常に贅沢な雰囲気を味わうことが出来たと思うのだ。


ところで、この旅館名「片しぼ竹の宿  梅玉」の由来である「片しぼ竹」というのは一般に表面がつるつるである竹の片側だけに皺が寄っているという珍しい竹なのだとか。逆に全面に皺が寄ったりする竹はあっても、片側のみに皺が寄った竹というのは日本中でもここでしか観ることの出来ない天然記念物なのだそうだ。






そういう貴重な竹が私有地内にあるというのも驚きだが、その事はあえて調べない限り出てこない情報だったのでなんとも勿体無い。まぁ宿の名前になっているのでそこは気づけよ、というところなのだが。

以前は一般にも公開していたらしいのだが、近くに猪が出たらしく現在は自由に見ることはできなくなっている。

一応宿泊者は断れば自由に見ることが出来るのだが、我々の部屋からは直接裏の庭園に出ることができ、これもまた贅沢な気分を味わうことができた。

このところの天候不順もあってか庭園がやや荒れており、せっかくの竹林も見づらい状況だったのが非常に残念だ。


旅館の方から聞いた話ではこの辺りは龍野城の城下町だった場所だそうで、近くを流れる堀や道路は勿論整備はされているものの、当時の面影を残した造りになっている。

街並みとしては昔の雰囲気を意識した装飾や普通に現代の建物、所々に見られる昭和レトロな雰囲気の建物が混在しており、逆に中途半端な統一感のミスマッチが面白い。






更に、並ぶ店舗の中には江戸時代から二百年以上続いているという和菓子店「觜崎屋」(はしさきや)があり、淡く透き通った小豆色、どちらかといえば桃色ともとれる美しさの「煉羊羹」は絶品だ。古くは龍野藩主や明治天皇にも愛されたというその味は今もそのまま変えていないとのことで、歴史を感じると共に主張の強すぎない上品な味が素晴らしい。

他にも醤油の風味と餡の甘さのバランスが絶妙な「醤油饅頭」や鮎の形をした「鮎最中」といった餡の美味しさを生かしたお菓子はどれも美味しい。


近くには龍野城跡を始めこの一帯全体が歴史を感じさせる観光地としての素材が揃っており、しかも和菓子や揖保乃糸といった名物もある。

正直、たつの市まだまだアピール不足じゃない?と思うほどの観光スポットだ。たつの市のホームページも一応見てはみたし、それぞれの観光スポットは検索すれば容易に出てくる。

だが、城下町の雰囲気が味わえる地域全体としてのアピールが弱いため、観光ルートとしてはもうひとつ魅力を感じることができなかったのだ。


確かに近くには姫路城や赤穂温泉といったメジャーな観光地がある為、どうしても初めて訪れればそちらを優先しがちだ。我々も残念ながらそちらを周った為に、この近辺には殆ど時間を割けなかった。


はっきり言ってしまえば単発での観光地的な魅力には少し弱いとは思うが、全体で捉えればじっくり時間をかけて周る価値は充分にあると思うのだ。


何故かこの近辺はガイドブックでも、ネットでも観光地としてのたつの市の記事は殆ど出て来ず、相生駅にもレンタカーでもらった観光案内でもたつの市近辺のものはなかった。


今回の情報の殆どは旅館で聞いたものばかりであり、そこから個別に調べたら思いの外色々ある事に気付いた位なのである。


確かに公共交通機関での移動が中心なら姫路市や岡山市の方が便利でメジャーということもあり、どうしてもそちらに目がいってしまうが、車での移動であれば龍野城跡だけでなく揖保乃糸記念館やペーロン城等施設はそれなりにある。それに国道2号線を中心とした道路は走りやすく、姫路城にも赤穂温泉の方にも走りやすいので移動拠点としても便が良い。


ただ肝心のたつの市近辺には、大通り沿いにお土産物屋的な立ち寄りのための拠点が無いのが残念なのだ。

揖保川沿いに大きな駐車場を併設した道の駅のひとつもあればそれだけでも大分立ち寄りやすく、しかもじっくり見て回れるだけのものがあるというアピールにはなると思うのだが。


今回は初めての場所ということもありこの近辺を検索した結果で姫路城周辺や赤穂温泉といった有名どころを中心に周ったが、ごたごたとした観光地ばかりでなく、車であちこち周りながらこういった場所でのんびりと過ごすのも悪くないのではないだろうか。