投手陣の世代交代が進む中、中々次を担う投手が出でないのが歯痒いのだが、それにしても何故これほど皆一様に結果が出ないのだろうか。
素材として素晴らしい選手はいる。
現時点での先発では山崎伊織、横川凱、中継ぎでは菊地大稀、田中千晴、船迫 大雅が今私が注目している若手達だ。
山崎はストレートのキレとカットボール、シュートの制球の良さが素晴らしいし、横川は球速表示はそこそこでコントロールも今ひとつではあるが、長身から投げ下ろす大きなフォームで見た目以上に打ちづらいようだ。菊池、田中はストレートに迫力がありあまり大崩しない安定感も良い。船迫はまだまだ発展途上の感はあるものの、投げっぷりか非常に良い。とにかくあの負けん気の強さとふてぶてしさに大器の予感を感じさせるのだ。
どの投手もコントロールにやや課題はあるものの、真っ直ぐの球速もキレも変化球も他チームの有望投手と比べて決して引けを取っているわけではないと思うのだ。
正直、まだ未完成とはいえもう少し結果を残しても良さそうなものだが、山崎以外に目に見える結果が出ていないのが残念だ。
本当に不思議に思うのだが、どの投手にも共通しているのが良い時と悪い時の波が極端なことだ。伸びのあるストレートをコーナーにバシバシ決めたと思えば次の回ではいきなり制球を乱して四球でランナーを出したり、突然甘い球をホームランされたりといった先の読めない不安定さがあるために今ひとつ信頼出来ないのだ。
思い返すとその傾向は以前からあり、以前有望視されていた投手が消えていったのも同じ様な共通点がある。
そうなると、投手の能力とは別に環境や起用法等にも何かしらの原因があるのではないかという疑問だ。
まず私が気になるのは捕手のリード面である。
ここ数年、正捕手の位置にいるのは大城だと言えるだろう。昨年までは小林や岸田も起用する機会も多かったが、やはり打撃の魅力からか今年はほぼ大城がマスクを被っている。
正直なところ、私は大城のキャッチングやリードはあまり好きではない。私も草野球で投手をやることがたまにあるのでそういう目線で捕手のリードを見るのだが、大城のミットを構えるタイミングが非常に悪いと感じる時があるのだ。
投球動作に入る前に一度ミットを構えたかと思えばすぐに降ろしてしまい、的を無くしたまま投げるまで構えない事が多いのだ。
下手をすると最初から構えないままで、投球動作を開始してからおもむろにミットを構え始ることもあり、投手の目線がブレやすく定まらない。
ひどい時には投球動作中に身体全体を移動したりすることすらあり、とにかく投手との間が合わず非常に投げ難そうな印象があるのだ。
ベテランや外国人投手の時には早めにピタッと構えていたりするので構えについて注文している投手もいるはずなのである。
若手にはそういった注文は出来ないであろうから大城の方でその辺りはケアすべき部分なのではないだろうか。
リード面で言えば、基本的にかわす事に終始している点が気になる。
ツーストライク目の取り方までは良いのに、というよりも決め球にしたいボールを先に持ってきてしまうために3つ目のストライクを取る球が無くなってしまうのだ。
結果外角低めギリギリから逃げる球ばかり要求し、ファールで粘られた挙げ句に四球であったり甘くなって打たれたりといった事になることが多い。
最初のうちは大胆に真っ直ぐで押す場合もインコースを突く場合もあり、リードが上手くなったと思う時もある。だが回が進むに連れ、そしてピンチになればなるほど外に逃げる傾向が強いので配球が非常に読みやすいのである。
強いチームは追い込まれてからの傾向がわかっているので中々外に外れる変化球に手を出さない。
若手では同じ厳しい球を投げ続ける精度がないので結果四球が増える原因になっていると思うのだ。
皮肉なことに、結果を出している投手に共通しているのは要求に対して首を振る事が多い。
菅野にしても戸郷にしても以前は首を振るシーンが非常に多かった。
今年に関して言えば山崎伊織がよく首を振っている。
逆に信頼するようになったのか首を振らなくなった菅野は結果が出せておらず、戸郷に至っては大城が構える前に投球動作を開始し、構えた所に投げていない感じがするのだ。
最初は随分リードに対して逆球になる事が多いなあと感じることが多かったが、もしかすると要求を無視してるのでは?と思う事があるくらいだ。
キャッチャーとしては岸田の毎回早めにピタッと構える姿勢が好みだし、直球で押して行く強気のリードも好きだが、まだまだ実戦経験が乏しいのか意表を突くようなリードは中々出来ない様に感じてしまう。
大城にしろ岸田にしろ巨人の捕手に共通しているのは終始一貫して型にはまったリードをしている印象がある事だ。
序盤の、しかも下位打線に対しても四隅ギリギリに構えて絶えず厳しい球を要求している様に見えるのである。
安易に甘い球を投げさせるのは論外だが、序盤から厳しいコースを突き続けるのは最初は良くても回が進むにつれて相手チームは見慣れてくるし、投手は徐々に集中力が切れて甘くなりがちだ。
特に精度の低い若手の場合は最初からコントロール重視で萎縮させるよりも、要所でのみ精度を上げられるように集中力を温存しておきながら伸び伸びと投げさせた方が良いのではと思うのだ。
最近出場機会が少なくて残念なのが小林だが、彼だけはそういったアバウトなリードをすることがある。勿論制球力に自信の無い投手の場合であったりはするが、別に打たれてもいいぞ?という表情で構え、受けた球にウンウンとうなずきながら返球するので投手にしてみれば非常に投げやすい雰囲気がある。
岸田も時折やっているが、経験に裏打ちされた余裕の差なのか安心感が違うのだ。
もっとも、投手によっては本当に甘く入って痛打される場合もあり、そこに捕手が責任を取る覚悟が必要なのだ。
巨人の型にはまったリードという点ではツーナッシングの場面で必ず遊び球を投げさせるというものがある。
ツーナッシングでは絶対に外さなければならないというチーム内でのルールではあるのだろうが、私にはここまで外す事に固執する意味がわからない。
少しでも三球勝負をする可能性があるならまだしも、ここまで徹底していれば相手も次の球にはまず手を出さない。
仮にストライクからボールになる絶妙な変化球を投げたとしても元々が見逃すつもりだったのでどちらにしろ手が出ないのだ。
相手が投手であっても、球数が多く交代が見えてきても外すリードというのはどうなのだろうか。
コントロールに自信の無い投手にしてみれば、この無駄球はプレッシャーでしかなく、ツーナッシングから一球外し、そのあと厳しい球が外れて四球にするパターンも何度も見た。
極稀に、外す予定の球がミスで入ってしまい三振を奪う事もあるが、大抵その時の打者は非常に驚いている。そのくらい他チームにはツーナッシング後には一球外すという事が浸透しているということだ。
それこそ戸郷辺りは意識してミスしているのではないだろうかと思うくらいだ。
こういった巨人のリードの型は、阿部慎之助が現役の時から変わっていないような気がする。
阿部の指導で巨人の捕手が同じ傾向のリードになったのは理解できるが、だとすると首脳陣は大事なことを忘れているのではないだろうか。
このリードは強い巨人を支えていた一流の投手陣だったからこそ有効なのだ。
それこそ全盛期の菅野に対してのリードと同じレベルの投球を今の若い投手陣に求めるのはあまりに酷だ。やはり投手に合わせた柔軟なリードは必要だと思うのである。
そういった意味では広島の會澤翼捕手のリードは非常に上手いと思う。
投手の力量や経験に合わせて構え方が変わり最後以外は結構アバウトに構えたり、リードも通り一遍ではなく柔軟でなかなか的を絞らせない。
やはりリードに関しては型を教わるだけではなく自身で個性を出せるように指導したほうが良いのではないかと思うのだ。
先にも触れた通り、若手投手の置かれている環境やその起用方法にも気になる部分はあり、全てが捕手のリードが原因と思っているわけではないが、そこはまた別の機会に触れたいと思う。とにかく今は早く若手が強く育ってくれるのを願うばかりだ。