それは夢だったのか、イメージだったのか…
私は一度目のお嫁入りの時に、今では見る事もあまりなくなった(住宅事情からか、流行り廃りからか)桐の婚礼家具セットを持っていった。
クローゼット、引きダンス、和ダンスという3棹でワンセットのあれだ。
さらには鏡台、食器棚。
その和ダンスの観音開きの扉を開けると、着物を入れる引き出しがあり、その上から三段目に、うこん色をした風呂敷につつまれた、いくつかの着物があった。
その中身は上ニ段に入っているような、誂えたものではなく、着物好きだった伯母の友人と、もう1人の叔母から譲られた着物だった。
ひらくと、クリーム色地に青や赤の紅型染めの小紋、黄八丈と…あとは思い出せないが多分普段使いの着物が入れられていたように記憶している。
結局それらの着物は(誂えてもらった色無地や訪問着も含め)
黄八丈を新婚時代に、自宅で数回着ただけで、後はしつけ糸もついた状態で、十数年後リサイクル店に二足三文で引き取られていった。
今朝、ふとその紅型染めの着物が、クリーム色から黒に染め替えられてフワっと目の前に広がったのだ。
夢だったのか、
イメージだったのか…。
おもむろに、起き上がり鏡面張りのクローゼットの引き戸をあけた。
常夏のバンコクで、
完全洋風の、まさしく備え付けのクローゼットの一番長い棚に積み上げられた
たとう紙に包まれた着物達。
下の段には洗える着物類)
この中に、紅型染めの小紋はない。
なんだったんだろう。
もうすぐ、義姪が二十歳を迎える。
振袖はどうするんだろう?
全く私には関係ない事なのかもしれない。
娘の支度も何一つしてこれなかった…。
とっくにハタチを、10年越してしまっている。
お嫁入りはあるんだろうか…。
普段着物をたまに楽しんでいるらしき事を、先日バンコクに来た息子から聞いた。
不思議な気持ちになった…
偶然なのか、血なのか(笑)
実家側とは折り合いが悪いままだが、
きっとこの状態が維持されるだろう。
義実家には女の子(義姪)が4人もいる。
私は私達夫婦単位の事だけを今は考えていればいい。
そして、実の娘と息子…。
「頼りのないのが元気な証拠」とは
よく言ったものだ、と思う。
が、常に心身の健康は祈っている。
どうか心穏やかに日々が送れていますように、と。
お気楽な私でも
いつか訪れるであろう
「仕舞う」日の事をたまに考える。
積み上がったたとう紙の中身は、私が着倒して終えるつもりだったけれど…
案外行き先はあるんじゃないか?と思ったりして。
紅型染めの着物は染め替えられて、誰かの日常を潤わせているのかもしれないね。