トランス脂肪酸で脳卒中40%増も,アスピリン使用者では増加なし | 二子玉川ライズ ひろ内科クリニックのブログ

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WHI-OS9万人の前向きコホート研究

 米ノースカロライナ大学のSirin Yaemsiri氏らは,The Women's Health Initiative Observational StudyWHI-OS)に参加した健康な閉経後女性(5079歳,平均年齢63.5歳)87,025例を約8年間前向きに追跡した結果,トランス脂肪酸摂取の最高五分位群では最低五分位群と比べて,虚血性脳卒中の発症リスクが40%上昇していたと報告した。このリスク上昇はアスピリン使用者の間では認められなかった(ANNALS of Neurology 2012年3月1日オンライン版 )。

総脂肪,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,コレステロールは関連なし

 ベースラインと3年後に自記式の食事摂取頻度質問票を用いて過去3カ月の食事評価を実施。Cox比例ハザードモデルを用い,脂肪摂取量の累積平均の五分位群別に虚血性脳卒中のハザード比(HR)を求めた。

 社会経済的地位の低さはトランス脂肪酸摂取量の増加と関連していた。トランス脂肪酸摂取量の最大五分位群をそれ以外と比べた場合,喫煙者,糖尿病,不活発が多い特徴が見られた。

 平均7.6年,663,041人・年の追跡中1,049件の虚血性脳卒中があった。脳卒中に関連する臨床要因,生活習慣,食物摂取状況を含む多様な因子を調整後のHRは,最低五分位群と比べ,トランス脂肪酸の摂取が少ない方から第2五分位群で1.2695CI 0.991.61),第3五分位群で1.331.041.71),第4五分位群で1.170.901.51),最高五分位群で1.39(同1.081.79)と上昇した(傾向性のP0.048)。

 一方,総脂肪,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,コレステロール摂取量,Keys score

はいずれも虚血性脳卒中と有意な関連がなかった。

スタチン,飲酒,HRTの交互作用は認められず

 トランス脂肪酸による虚血性脳卒中のリスク上昇は,アスピリン使用によって減弱した(交互作用のP0.02)。ベースラインのアスピリン非使用者(67,288人)ではトランス脂肪酸の最小五分位群と比べた最大五分位群のHR1.6695CI 1.212.36,傾向性のP0.001)だったが,アスピリン使用者(19,736例)ではHR0.95(同0.601.48)となった。アスピリン使用量の中央値は200mg(四分位範囲25500mg)だった。

 スタチンや飲酒,ホルモン補充療法(HRT)には交互作用はなかった。

 Yaemsiri氏らによると,これまでのコホート研究では総脂肪,コレステロール,脂肪の種類と虚血性脳卒中の間に有意な関連は報告されていない。しかし,今回,閉経後女性を対象とした最大規模のコホート研究において,非アスピリン使用者ではトランス脂肪酸の摂取が主な生活習慣,食事要因から独立して虚血性脳卒中のリスクを上昇させることが示された。

 同氏らは,特に虚血性脳卒中のリスクが上昇する閉経期の女性において,トランス脂肪酸の摂取制限とアスピリンの予防的使用の重要性を強調している。