2日がかりの移動を経て!
トランジット中についでに北京を散策し!

ようやく着いたニュージーランドはオークランド!夜に到着して、翌日の夜にはコンサート!
午前中にしっかりリハーサルをした後は街歩き!


南半球で1番高いというスカイ・タワー


羊の国という前情報とはウラハラに、しっかりモダンな大都会ヒツジ

スカイ・タワーからのオーシャンビューかに座



そして夜のコンサート...。師匠からは、だいたい1回目のコンサートが一番うまくいって、2〜3回目が気が抜けてイマイチな演奏になるから気をつけろ!との教えをいただいていた。


今まで、飛行機で長距離移動してからすぐの本番は避けてきた。湿度や標高によって楽器の具合がかなり変わるし、クラリネットは息を入れて音を鳴らす楽器なので、体調によって音色もかなり変わってしまうからだ。本番前に丸2日楽器を触れない、なんてことももちろんなかった。


とはいえそんなことは言っていられない。師匠はいつも言っている。「Quoi qu'il arrive !! (何が起きようとも!!)」お客さんとの出会いは一期一会だ。何が起きようとも、ベストな演奏をなさねばならぬ。


プログラムはベートーヴェンの7重奏と、

クラリネットはスウェーデン出身のスーパースター!踊るクラリネット奏者マルティン・フレスト!


シューベルトの8重奏。

こっちのクラリネットはベルリンフィルのイケメン担当、アンドレアス・オッテンザマー!


ベートーヴェンは45分、シューベルトは1時間近くある大曲だ。やるっきゃない!と言い聞かせ、約2時間の音楽の旅の始まり始まり...。


前半のベートーヴェンはなかなかうまくいったと思う。良い集中力で、最後まで吹ききった。そこですべてを使い果たしてしまったのかもしれない。休憩を挟んだらシューベルト。


始まって少しして、ポロッとミスをする。あ、やっちゃったな。また少ししてミスをする。終わったら「2回もやっちゃったよあせる」ってみんなに謝らないとだな...。


始めの方はまだ余裕だった。けれども、2回に留まらず3回、4回、とミスを重ねていくにつれて、どんどん笑えなくなってくる。何かがおかしい。なんだかうまくいかない。


曲も最終楽章に入りもうすこしで完走というところで、ソロパートを入りそびれるという痛恨のミスを犯し撃沈。後はもうなんだかよく分からない。1回目が一番うまくいくとはなんだったのか。


オークランドの皆さんには本当に申し訳ないけど、人生で一番ひどい出来のコンサートだった。それでも温かい拍手を送ってくれるお客さん。絶望顔で挨拶するわけにもいかないので、必死に口角を上げながら、虚ろな目で見渡すしかないのであった...。


終演後、誰とも話す気になれなかった。撤収作業の間、誰の目にも入らぬようホールの隅っこに収まり虚空を眺めていた。あまりにも自分が情けなかった。元気がなさそうだと気づいたホルンのアニキが近寄ってきたけど、まじでほっといてくれの精神で薄い反応しかしなかった。


しかしながら、私の目から静かに流れる液体を発見してアニキ、大慌て。「いいとこもたくさんあったって!!」と励ますと、ワタワタとどこかへ消えていった。


「面倒なことになったな...」と内心思い、場所を変えようと立ち上がると、ホルンのアニキから通報を受けた他のメンバーがわらわらやってきて、「大丈夫だって!!良かったって!!」と口々に励ましてくださった。ありがたいやら、恥ずかしいやら、情けないやら...。


その夜、ホテルの部屋に戻ってもすぐには眠れなかった。オーディションに落ちるより100倍悲しかった。「吹けないって、こんなに悲しいんだ。」なんてマヌケなことを思いながら、一晩中枕を濡らしたのだった...。


翌朝、ナメクジのように腫れたまぶたを鏡で見て、「人間の顔ってここまで変形するんだ...」とドン引き。今日もミニバスで移動して夜は別の街で本番だ。


状況は何も変わっていない。移動で疲れているし、ゆっくり練習する時間もなかった。喉がキュッとしまって息苦しい感覚がする。強いストレスを受けた時のサインだ。


でも、ここで心が折れてしまったら本当に終わり。あと3週間もあるのに全部地獄になってしまう...。ほんとのほんとに、「Quoi qu'il arrive
!!」やるっきゃない!


神に必死さが伝わったのか、その夜の本番は昨夜とは打って変わり、水を得た魚のように自由に吹けた。笑顔で拍手を送ってくださるお客さんに、やっと心から笑顔で応えることができたのだった..!


その後、ニュージーランドを南下しながら計14回のコンサート。疲労から演奏中に一瞬意識が飛んだことも、極度の睡眠不足から、海の底に潜って音をかき分けながら吹いているような感覚に陥ったこともあった。


睡眠不足にはアルコールを摂取した時と同じ作用があるらしい。プレッシャーから酒を飲んでステージに上がる音楽家もいるけど、なるほどこんな感覚で吹いているのか、悪くない。


結局、ツアー中最高のコンディションだった時は一度たりともなかったけれど、1回目のコンサート以降はどれもそれなりに満足のいくパフォーマンスで終えることができた。今までは、ある程度良いコンディションでないと良い演奏はできないと思っていたけど、どんな劣悪な環境でだってやろうと思えばなんとかなるらしい。



チーン「こうやって人は強くなっていくのか...!」



月並みな言葉ですが、いつだって最悪の出来事は次のステップへジャンプするための踏み切りみたいです。


ヒツジヒツジヒツジ


先日、長年独自にモーツァルトを研究している知人が、「旅をして、演奏をして、また旅をして...それこそが本当の音楽家の人生だ!」なんて言っていた。なるほど確かに、モーツァルトは幼少期から父親に連れられ各地を旅し、演奏をし、神童っぷりを広めていっていた。


今回ニュージーランドに一緒に行ったメンバーも、ヨーロッパやアメリカはもちろんのこと、アフリカや中東など実にいろいろな場所へコンサートで訪れていた。メンバーの一人が、「ついにオセアニアまで来たぞ!」とニヤリと笑いながらGoogleマップでニュージーランドの上にピンを立てるのを見て心底思った。



チーン「音楽家って、なんて楽しい職業なんだ...!」



いちいち海を越えないといけない日本で違う国に行くのは大変なイメージだけど、大陸に住む音楽家達はこんな楽しいことをやっていたのか、ずるいぞ。


人生最低のコンサートを経て、たくさんのことを学べた人生初の演奏旅行。また近いうちにどこかへ旅できることを願って...



チーン「音楽家人生バンザイ!」




2025.8.1
酒と音楽とブーフーウーにてブタ




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星



お月様