先日のこと。
諸事情につきデンマークへ行き、帰りにコペンハーゲン空港で一泊することに...。
20時に空港着、翌朝8時に飛行機に乗ってパリへ出発。
絶対しんどい。空港泊を回避する道はいくらでもあったはずなのに、何故この選択をしてしまったのか..。
きっと心の何処かで、やってみたい!って好奇心があったんだろう。空港泊といえばトム・ハンクス主演の「ターミナル」だ。結構好きだった。トム・ハンクスのせいだな。
20時。デンマークの辺鄙な空港から、乗客3人の貸切状態なプロペラ飛行機に乗ってコペンハーゲン空港着。
とりあえず免税店をウロウロ。デンマークは世界一のオーガニック大国だそうで、お土産品もオーガニックが売りのものばかり。
レゴブロックのLEGOはどうやらデンマーク発のおもちゃだそうで。空港にもレゴショップが何軒か。「よく遊べ」を意味するデンマーク語「leg godt」からLEGOという社名がつけられたらしい。
来る前、友人に空港泊の極意を尋ねたところ、「ネットにだいたい空港泊した人の体験が載ってるから、それをよく調べるんだよ!」と言われていた。
しかしながらコペンハーゲン空港、あまり空港泊体験記が見つからない。みんなちゃんとホテルに泊まるようだ。
どうしようかな〜と免税店辺りをウロウロし続けていたが、23時を過ぎると店も閉まり、どんどん人もいなくなっていく。「早く出てけよ!」の空気をうっすら感じとり、渋々ターミナル3へ移動。
免税店コーナーとは打って変わって、ターミナル3は未だ賑やか。到着ゲートから足早に出てくる大勢の人。24時間営業のバーガー・キングにも人がたくさんだ。
空港の椅子はどこも肘掛け付きの固い椅子ばかり。居心地が悪そうなので、いくつかボックス席のあるバーガー・キングを今夜の居場所に決める。
バーキンは2階に位置していて、ターミナルが一望できた。ストローでずるずるとコーラを啜りながら、他の空港泊者はどうするのか観察。
深夜0時過ぎ。到着ゲートから出てくる人の数も減り、私以外の空港泊者達は固い肘掛け付き椅子や地べたに陣取り始めた。1番居心地がいいだろうと踏んでいたバーガー・キング、気づけば客は私一人。
床や固い椅子より、バーキンのソファ席の方が絶対いいはずだ!何かトラップがあるのか?!私も移動したほうがいい?!ドキドキしながら思案していると、怪しげな男が数人店内に入ってくる。
挙動不審にうろうろしたり客の残していったトレーを漁った後、トイレに立てこもり一生出てこない。
「そういうことか...。」
航空券を持っていなくても、空港のターミナルに入ることはできる。加えてここのバーキンは24時間営業でドリンク飲み放題。深夜になると、ホームレスの人達が集まってくるのだろう。トイレに不審な人物が立てこもっているとあっちゃあ、おちおち眠りにつくこともできない。
トイレに籠るホームレス達と私だけになってしまった店内。どうしようかなぁと考えながら、ターミナルの監視を続ける。
夜が更けるにつれ、一層活気づいていく空港内。
深夜1時を過ぎる頃には、ゴーカートのような巨大清掃機が轟音を立てながら走り回り、列車のように連結された巨大ゴミ箱が、ドンガラガッシャンと音を立てながら猛スピードで引かれていく。
行き交うスタッフさん達の談笑が響き、バーキン内にもお食事をとりにきた整備員さん達が現れ始めた。
床や固い椅子に寝床を決めていた人達も、ゆらりと立ち上がり、ふらふらと徘徊を始める。あまりの居心地の悪さに耐えきれなくなったのだろう。その内みんなバーキンへ集まり始めた。
「やはり私の選択は正しかった...。」
これだけ人がいれば、トイレに不審者がいたとて、寝ても大丈夫だろう。
こんなにうるさくちゃ寝れやしない!なんてブツクサ考えながら、気づけば眠りに落ちていた。
コンコンコンコンコンコンッ
どれくらい眠ったんだろう。ドアをノックする音と不穏な気配で目を覚ます。なんやなんや!と起き上がると10人ほどのイカツイ制服を着た空港警備員さん達がトイレのドアを囲んでいた。
激しくドアを何度も叩き、中に立こもっているホームレス達を追い出していく。空港はホームレスさん達の良い寝床だな、なんて思っていたけど、そう簡単にはいかないようだ。
騒ぎが収まり警備員さん達がいなくなるとまた新たに、今度はおばさんのホームレスがぬるりとトイレに入って行く。イタチごっこじゃね..。まあええわ、と再び眠りにつく。
朝まで何度も、トイレに籠るホームレスと警備員の戦いは続いた。こりゃたまらん!とバーキンから立ち去っていくお客もいたけど、「今更よ!」の精神で朝まで寝続ける。
4時を過ぎれば朝の気配。そろそろ起きるか、と目を覚ますと、後ろのソファ席にはトイレから追い出されたはずのホームレスが堂々と横になっていた。
荷物をまとめ立ち上がり、懲りんやつじゃの..とチラリと目をやると、彼もまたギラギラとした鋭い視線でこちらを見ていて、ギクリとする。
見るんじゃなかった..。慌てて視線をそらし、なんとなく居心地の悪い気分でバーキンを後にする。
ターミナルを歩いてみれば、端っこの方の薄暗がりに長椅子やボックス席が備え付けてあって、そこで寝ている人が数人。どうやら私より正しい選択をした人はたくさんいたようだ。
我らがセブンイレブンで朝ご飯を調達。
デンマークはユーロ圏なので通貨ももちろんユーロだと思っていたら、「デンマーク・クローネ」とかいうわけのわからない(?)通貨だった。最近のレートは1デンマーク・クローネ21円ほど。寝ぼけた頭で値札を見る。頭が回らないので、結局何円なのかさっぱりわからない。
なんとなく買ってしまったあんまり美味しくないプロテインバーをもそもそ食べて、搭乗までの時間を潰す。もうすぐクリスマスだ。
私の初めての空港泊、これにて無事?終了。なかなか興味深い体験だった。友人曰く、プラハの空港はシャワーまで浴びれて快適な空港泊ができるらしい。それはちょっと興味がある。結論、
「空港泊、人にはおすすめしない!」
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