スンさんという友人がいた。
韓国人だけどオーストラリアで育ち、親の仕事や自身の学業、仕事の都合なんかで日本にも中国にもドイツにも住んだことがあり、フランスにはピアノ留学して以来10年ぶりにまた住むという。
パリに来てからは仕事の鬼のムッシュウとタッグを組み、バリバリ稼いでエッフェル塔の見える広いアパートに住んでいる。優秀な女性なのだ。
フラメンコをこよなく愛し、每日ジムに通い、仏教をよく勉強して自分が良いと思ったことにはなんの迷いもなく突き進む。ピンと背筋を伸ばし、パリの劣悪な石畳の道をピンヒールで闊歩するスンさんが大好きだった。
スンさんの家で夕食をとっていた時のことだ。
確か恋愛の話をしていたと思う。
やっぱりイタリア人の男が一番いいだとかなんだとか。ラテンの女なのだ。
突然スンさんが、
「アーーーモウ!!!こうなったら全部見せなきゃ!!!」
「お腹を開いて内臓まで全部見せるのヨ!!!それが友情ってもんでショーーー!!!」
と叫び部屋の奥へと消えて行った。
「と、突然どうなさったん...?」
スンさんが奥から手にして来たものを見ておったまげた。でかいアダルトグッズだった。
「しぇーーーーー!」
ホラ!といって手渡される初めてのアダルトグッズ。全く予想していなかった展開になんのリアクションもとれない。
「ハ、ハハ...」
「(こ、これ、洗ってあるんかな...そりゃ洗ってはいるか...。)」
「(さ、最後に使ったのは、いつ.....??)」
友情のハードルが思ったより高かったことを知る三十回目の冬の夜、なのだった。
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