皆さんこんにちは!
今回は、『アスリートに発症する疲労骨折 シリーズ⑤ 骨盤部 』 〜仙骨疲労骨折〜 についてお伝えします。
発症年齢は幅広く、大きく3つに分けられます。
①骨粗鬆症を基盤とした高齢者での受傷。②出産前後の受傷。③アスリート(20歳代が多い)スポーツでの受傷。
今回は③アスリートに発症するものを説明していきます。
受傷しているアスリートを競技別で見ると、主に陸上競技の長距離選手やサッカー・野球をしているアスリートで見られます。
症状は、下の図の通り、主に腰仙部痛です。その他に仙腸関節部の痛みが多くなっています。股関節や鼠蹊部・坐骨神経痛のような痛みを訴える場合もあります。
片側の腰部痛を訴える場合も多く、『成長期腰椎分離症』との鑑別が必要となってきます。
『成長期腰椎分離症』は以前、当ブログにも数回にわたって紹介しています。
診断は画像診断が有用とされています。
レントゲン画像では、骨盤軟部組織および腸管内ガスの存在、仙骨自身の湾曲した形態から初期の異常初見は見られず、一定期間経過し、仮骨形成は見られる場合がありますが、有用とはされていません。
一番有用なのはMRI検査になります。
「MRIで診断し得た若年スポーツ選手における仙骨疲労骨折の2例 阪田 武志ら」より引用・改変
上図のように、受傷初期の段階から仙骨翼を中心とした骨髄浮腫像がみられます。
特に、骨髄浮腫像の内部に骨折線を示す線状の低信号は特徴的だといわれています。
受傷原因をいくつか紹介します。
1つ目は、股関節周囲筋の不均等です。
下の図のように、「梨状筋」「腸骨筋」「大腿筋膜張筋」筋力の不均等が仙腸関節に剪断力を生じさせるため、原因の一つになるといわれています。
2つ目は、身体の使い方です。
今回は、ソフトボール選手の一例を紹介します。
「右仙骨疲労骨折を発症した女子ソフトボール選手の1症例 吉川 恵ら」より引用・改変
上図のような身体の使い方も仙骨翼に負担をかけ疲労骨折の原因の一つと言えます。
最後に予後と治療に関してです。
基本的には保存療法で予後は良好です。
数週間〜2ヶ月のスポーツ中止で疼痛は消失します。
その間、スムーズにスポーツ復帰ができるように患部外のトレーニングを行い、疼痛消失より数週間でスポーツ復帰となります。
我々は、1人1人の原因となる要素を見つけ出し、再発防止も含めて早期スポーツ復帰に向け治療を行います。
痛みを我慢し競技を行っていると、両側の仙骨骨折を受傷した症例も報告されています。
大きな合併症や後遺症はないとされていますが、診断がつかず継続していると症状の遷延(長期間の継続)・悪化につながります。
当院での治療を紹介します。
①徒手療法・運動、姿勢指導・トレーニング
当院では「Joint by Joint Theory」を基に原因と考えられる筋肉や関節に対して治療を行います。
「Joint by Joint Theory」については下記のブログで紹介しています。
先程、受傷原因として、「胸椎の可動域低下」と紹介しました。
胸椎の可動域改善についてのエクササイズは下記のブログより紹介しました!ぜひご覧ください。
②超音波骨折治療
当院では、下図のような「オステオトロン」を使用します。
『仙骨疲労骨折』は稀な疲労骨折です。
アスリートで腰部の痛みを訴えていたら発症している可能性があります。
『成長期腰椎分離症』との鑑別も必要となってきます。
発症した原因を突き止め疲労骨折に準じた治療を行うことが早期スポーツ復帰には必要です。
以上が『アスリートに発症する疲労骨折 シリーズ⑤ 骨盤部 』 〜仙骨疲労骨折〜 でした!!