351 アパートに戻る! | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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四十九日の日、みどりは朝からベッドに

もぐったまま、出てこようとしなかった。

 

健太は、余程体調が悪いのだろうと思って、

敢えて起こしに行かなかった。

 

一人で昼食を済ませると、骨箱を抱えて、

健太は一人で出発した。

 

納骨堂の前には、浩介夫婦が待っていた。

華江おばさんは、楓と哲也が駅まで迎えに

行っていた。

 

しばらくして、華江おばさん達が合流して、

納骨の準備が始まった。

 

大きな骨壺から小さな納骨壇用の骨壺に遺骨

を移して、納骨壇の中に納める。小さな箱の

ような納骨壇の前で、東福寺のご住職が

読経をして、皆で般若心経を唱えて終わった。

 

「眺めの良い所ね。私もこういう所なら、

少し狭いけれど入りたいわ」

 

華江が言った。

 

「お母さんがここが良いって決めたんですよ」

 

楓は、華江の両親と、自分たちの父親が先に

入っているので、君江が入ってちょうど

いっぱいになったと言った。これから、親子

夫婦でたくさん語り合う事だろう。

 

境内のカフェに移動すると、

七海が驚いていた。

 

「すごーい。今時のお寺って、カフェに

パフェまで置いてあるのね」

 

チョコレートパフェをぺろりと平らげると、

七海は言った。

 

「お葬式に来ていたみどりさんは、

今日は来ないの」

 

楓が何か言おうとした瞬間、

華江がピシャリと言った。

 

「身内でもない人を、納骨に呼ぶわけ

ないでしょう」

 

健太も楓も、他の皆もそれ以上何も

言わなかった。

 

浩介夫婦は東福寺からそのまま帰宅する。

駅まで華江と七海を送って、哲也と楓も

帰宅する。

 

健太は、一人で自宅に戻った。

 

いつもなら玄関に迎えに出てくれるみどりが、

今日はいない。

 

体調が悪くて、まだ寝ているのだろうか。

 

健太が喪服を脱いで、仏壇の前の祭壇を

片付けようと座敷に入ると、仏壇の前に

みどりが座っていた。

 

「みどり、もう、大丈夫なのか」

 

「健太、ここに座ってちょうだい。

話が有るの」

 

みどりのただならぬ様子に、健太は気圧され

そうになりながら、みどりの正面に座った。

 

「実は、私のアパートの事なんだけど」

 

健太は、みどりがアパートを正式に引き払う

と言うのだと思い込んでいた。

 

「私、この家を出て、

アパートに戻ろうと思うの」

 

健太!  ついに来たよ!

 

TO BE CONTINUED・・