349 みどりの迷い | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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月曜日の朝、みどりは熱が出た。

原因は良くわからないが、この1週間の疲れ

が出たのだろう。

 

健太は、休もうかと言ったが、みどりは出勤

するように言った。健太は、富岡社長と職場

の皆に配るお菓子を持って、出勤する。

 

急なことで、冷蔵庫に食べるものも無い。

健太は、渡辺さんに連絡して、来てもらえる

ように頼む。

 

お昼少し前に、渡辺さんがお弁当を持って

来てくれた。前もって、みどりにはLINEが

してあった。

 

渡辺さんがみどりの部屋に、お茶とお弁当を

持って行くと、みどりはベッドの上に起き

上がる。

 

「みどりさん、寝てなくて大丈夫」

 

「渡辺さん、ありがとう。

もう熱も下がりましたから」

 

「みどりさんも、先週はあまり眠れなかった

んでしょう。今日はゆっくりすると良いわ。

お洗濯もするからね」

 

金曜日が出勤で、土日が通夜式と葬儀だった

ので、洗濯物もたまっていた。みどりは、

渡辺さんの心遣いが嬉しかった。

 

午後3時ごろになって、渡辺さんが、今度は

プリンを持ってみどりの部屋に入って来た。

 

「熱っぽい時は、こういう食べ物が良いのよ」

 

渡辺さんも一緒に食べながら、みどりは

通夜式や葬儀の様子を、少しずつ渡辺さんに

話した。

 

「男の人って、子供が好きなんでしょうかね」

 

少しの沈黙の後に、みどりが急に言った。

渡辺さんは、少し驚きながら聞いた。

 

「どうしたの、みどりさん。何かあったの?」

 

「いえ、浩介君とこの紫織ちゃんがとっても

可愛くて、哲也や健太もメロメロだったから」

 

みどりは、少し話をごまかした。

 

「そうね、8カ月でしょう。今が一番可愛い

頃よね。でも、子供って結構大変よ。

 

少し大きくなれば生意気な口はきくし、お金

はかかるしね。大人になっても、やれ就職だ、

結婚だと心配させられて、挙句の果ては孫の

面倒まで見させられて。

 

男の人は良いのよ。お金だけ出して良い顔

しているだけだから。気楽なものよね」

 

渡辺さんは、愚痴っぽい事を言って終わった。

 

「渡辺さん、そう言えば高齢者サロンの

準備はどうなりましたか」

 

「お陰様でね。部屋の改装はもう済んだのよ。

市役所への色々な書類も、主人が手伝って

くれてね。

 

ぽかぽかさんの山崎さんにも具体的な

アドバイスをしてもらって、正式には10月

からオープンの予定なの」

 

渡辺さんは、君江の世話をしている頃から、

地域の高齢者の集まるサロンをやりたいと

言っていた。

 

「良いなあ、渡辺さん、夢に向かって

一歩一歩着実に進んでいて」

 

「みどりさん、何を言ってるのよ。

あなたはまだ若いんだから、今は治療が大変

かもしれないけど、元気になればまた、

色んなことに挑戦できるわよ」

 

渡辺さんの励ましの言葉も、今のみどりには

少し辛かった。

 

「若いか・・・。

そんなに若くないんだけどな・・・」

 

渡辺さんは、夕飯の支度までして帰った。

 

久しぶりの出勤で、健太は少し残業をして

帰って来た。健太が帰って来た時には、

みどりは起きて着替えていた。

 

「みどり、大丈夫なのか。無理はするなよ」

 

「うん、大丈夫よ。明日は仕事に行くから。

健太、心配かけてごめんね」

 

みどりの笑顔が少しぎこちないことに、

女心に鈍感な健太が気付く訳も無かった。

 

健太!  大丈夫かな?

 

TO BE CONTINUED・・