318 姉のサプライズ | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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「楓先輩に11時に健太の家に来てって」

 

みどりは、11時15分前に来ていた。

健太もみどりも、訳の分からないまま応接間

で待っていた。

 

11時になって、駐車場で車のドアの音が

した。健太とみどりが玄関に出ると、

そこには、スーツ姿の哲也と、半そでの

ワンピースを着た楓が立っていた。

 

「姉貴、遅いじゃないか。

しかも、なんで哲也がいるんだよ」

 

健太が少しムッとしながら言った。

 

哲也と楓は少し照れくさそうな顔をしている。

 

何かを察知したみどりが、とりあえず二人を

応接間に座らせた。

 

4人が応接間のソファに座ると、

哲也が立ちあがって言った。

 

「健太、みどり。僕と楓さんは今日入籍する

ことに決めました。

それで、二人には婚姻届けの証人をお願い

したい」

 

哲也が座ると、楓が婚姻届の用紙をテーブル

に広げた。既に当事者二人の欄は記入されて

いる。

 

健太は、事態が良く呑み込めないでいた。

 

「誰と誰が結婚するんだ」

 

「俺と楓さんだよ。これで晴れて、

本物の弟って訳だ」

 

哲也の言葉に、健太は急にいろんな思いが

込み上げてきた。

 

「哲也、ちょっとこっちに来い」

 

健太は、哲也を応接間から廊下に

引っ張り出す。

 

みどりはと言えば、それとなく二人の関係

に気が付いていたのだろう。

 

楓と、今から婚姻届けを出しに行くのか

とか、新居はどうするのかと話している。

 

廊下で、健太は声を潜めて哲也に聞く。

 

「哲也、本気なのか。

姉貴は、確かに気風が良くて面倒見のいい

人間だけど、お前より2歳年上のバツイチ

で大きな息子が2人もいるんだぞ」

 

「健太、何を今更、分かり切ったことを

言ってるんだ」

 

「お前、長男だろう。親御さんたちは大丈夫

なのか」

 

「健太、意外と古風な考え方の持ち主だな。

今時、長男だから家を継がなきゃいけない

とか、跡取りを産まなきゃいけないとか、

そんな名家じゃないんだよ、中村家は」

 

「でも、本当に良いのか?うちの姉貴で」

 

「健太、俺が楓さんのお陰で、どれだけ

精神的に助けられているか、お前だって

わかっているだろう。

 

うちの両親は、妹の家族と同じ敷地内に

住んでいて、もしもの時には、俺も協力する

けど、仕事柄面倒は見れないぞって、

前々から言ってある。

 

それに、俺だって立派なバツイチだぞ。

 

それとも、健太。楓さんと二人で暮らす予定

が、俺が横取りしたもんだから、悔しくて

寂しいのか」

 

哲也の言葉に、健太は急に現実を見始めた。

 

「ってことは、姉貴は今日からお前の

マンションで暮らすってことか?」

 

「そうだよ。昨日のうちにもう、引っ越しは

済んでいるから準備万端さ」

 

健太は、肩で大きく息を吐くと、

そのまま応接間に戻った。

 

「姉ちゃん、ひどいじゃないか、俺を騙す

なんて。何で今まで隠していたんだよ」

 

健太は、今度は楓に食ってかかった。

 

「健太、ごめんね。でも事前に言ったら、

きっと反対されると思ったの。哲也君がね、

健太は俺の弟になるのを嫌がって、きっと

反対するから、全部準備してからサプライズ

で知らせようって」

 

健太は、少しずつ冷静になって来た。

 

「姉ちゃん、本当にこんな奴で良いんだな。

こいつは、心が優しいだけで、甲斐性のない

ヤツだぞ」

 

「健太、失礼ね。哲也君がどれだけお母さん

の事で今まで助けてくれたと思ってるの」

 

楓は本気で怒っている。

 

「じゃあ、姉ちゃん、聞くけどさ」

 

健太は、真っ直ぐ楓の目を見つめた。

 

「今度こそは、絶対に幸せになって

くれるんだよな」

 

健太の声が震えている。

 

「うん、大丈夫よ、健太。

絶対に幸せになるから」

 

楓の声も震えていた。

 

健太!  めでたいね!

 

TO BE CONTINUED・・