293 運命の日 | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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翌日の月曜日、ミーティングの時に、日程

変更の報告があった。

 

「健太さん、鈴木様から連絡があって、3月

4日に引渡し前のチェックをしたいと言う

お話でしたが、大丈夫ですか」

 

この時期になると、毎週末は完成した家の

引渡し前チェックが入る。実際の引き渡しは、

ローンの関係もあり、平日の金融機関の

営業時間に行われる。

 

しかし、完成現場のチェックは、週末に家族

そろって行って、家具の配置やカーテンの

色合いなどを決める家族も多い。

 

当初、この日は午後から1件入っていたので、

健太は弥生病院の健診をF市から来る姉と

途中で交代するつもりだった。

 

しかし、午前中から仕事が入っては、病院に

付き添う事は難しい。健太は急いで姉に

連絡を入れる。

 

姉の楓は、それなら前日の夜に行くから

大丈夫と返事をくれた。

 

金曜日の夜、健太が残業して帰ると、

楓は既に来ていた。

 

「健太、明日の夜は時間取れるの?」

 

「ああ、引渡し前のチェックに問題が

無ければ、夕方には終わるよ」

 

「それなら、久しぶりに哲也君と飲みに

行ったら。このところ、お母さんの事で

色々忙しくて、ストレス溜まっている

いるでしょう」

 

楓がこう言って提案してきた時は、哲也の

日程を聞いて打ち合わせ済みの場合が

ほとんどだ。

 

特別養護老人ホームに勤める哲也は、夜勤

もある変則勤務だから、健太との日程調整

もなかなか難しい。

 

母親の君江の介護をしていた時は、楓が来て

くれる日に合わせて、飲みに行っていたが、

考えてみれば年末の忘年会以来、

哲也とはほとんど話していなかった。

 

「姉貴、ありがとう。

哲也には連絡済みなんだろう」

 

楓のセッティングのお陰で、健太は4日の

土曜日の夜は、久しぶりに哲也と飲み

明かすことになった。

 

4日の朝、楓はぽかぽかさんに君江を迎えに

行って、弥生病院に連れて行く。

 

いつも診察してもらっているイケメン先生

なので、君江も落ち着いて診察を受ける。

レントゲンなどのスタッフも、認知症の人の

対応に慣れているので、楓は安心して待合室

で待っていた。

 

途中、みどりが様子を見に来て、しばらく

談笑した後、みどりは職場に戻って行った。

 

今日も、弥生病院は混み合っている。

施設入所に必要な項目の検査を全て終えた

のは、午後1時過ぎだった。

 

診断書は後日、自宅に郵送してもらうことに

して、楓は君江とランチをして、ぽかぽか

さんに戻った。

 

健太は、午後からのお客様の引き渡し前

チェックに立ち会っていた。

最終チェックには、必ず健太が立ち会うこと

にしている。

 

お客様にしてみれば、20代の若者よりも、

「副課長」の名刺を持った健太の方が頼り

がいがある。何か変更箇所があっても、

すぐに対応してもらえる安心感がある。

 

午後4時頃、みどりから電話が入った。

仕事中とわかっているはずのみどりからの

電話に、健太は嫌な予感がした。

 

「ちょっと、打ち合わせの電話が入りまして」

 

健太は、お客様に断ってから、庭のすみで

電話に出た。

 

「健太、今グループホームから連絡があって、

おばさんの前の順番の人で、定員18人に

なりましたって。

 

残念だけど、今回は入所できないって」

 

「そうか、みどり、色々とありがとう。

姉貴には・・・」と健太が言いかけると、

みどりが言った。

 

「健太、まだ仕事中でしょう。

私から楓先輩には連絡するから」

 

電話を切ると、健太は空を見上げた。

弥生の空は、青く澄み渡っていた。

 

健太!  気持ちを切り替えていこう!

 

TO BE CONTINUED・・