91 KBL(君江防衛ライン) | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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翌日の土曜日は、健太は出勤日だった。

昼の休憩時間に中央包括支援センター

に電話をすると、運よく母親の君江を

担当している早川さんが出た。

 

健太は、母親の君江から聞いた話を、

かいつまんで早川さんに話した。

 

「タダで試供品を置いて行っただけ

なので、まだ悪質商法とも言えない

んですけど、昼間一人でいる年寄り

のところに足繫く通ってくるなんて、

とても違和感を感じるんです。

早川さん、どう思いますか?」

 

「そうですね。何だか怪しいですね。

今のところ、中央包括にそういう内容

のご相談は来ていないので、月曜日に

市役所の高齢福祉課と消費生活課に

問い合わせてみますね」

 

早川さんの判断の速さに、

健太は感心した。

 

「被害にあっている訳でもないので、

警察に相談するわけにもいかないし。

でも、また月曜日に来るんじゃないか

と思うと、心配なんですよね」

 

健太は不安な気持ちを正直に話した。

 

「そうですよね。ただ、うちの包括も

月曜日は手一杯なので訪問することも

難しいし、その鈴木君を信頼している

お母さんに会うなと言っても無理で

しょうし・・・。

誰か、佐藤さんが信頼できる人に、

お昼ごろだけ来てもらうというのが

一番良いのでしょうが・・・。みどり

先輩とかに頼めると良いんですけどね」

 

早川さんは、すまなそうに言った。

 

「わかりました。とりあえず来週の

月曜日水曜日金曜日に誰か昼時に家に

いてもらえるように手配してみます」

 

「お願いします。こちらも、市役所から

情報が入ったら、すぐにご連絡しますね。

それと、何か証拠になるものがあれば、

包括にFAXしてもらえませんか」

 

早川さんは、相当怪しいと思っている

感じだ。

 

「名刺をもらっているので、それと

栄養強化のビスケットとジュースの

パッケージがあります。今は仕事中なんで、

夜になりますがFAXしますね」

 

「包括のFAXは自動受信ですから、夜でも

大丈夫です。現物があった方が市役所にも

話しやすいですから」

 

早川さんはとても親切に相談に乗って

くれた上、市役所に問い合わせてくれる

ことになった。

 

健太はひとまず安心したが、月曜日のこと

が心配だった。ここはやっぱり、みどり

に相談するしかない、と健太は思った。

 

みどりに電話をすると、すぐに月曜日

のお昼ごろに健太の家に来てくれる

ことになった。

 

「ところで、健太、その鈴木君って

何歳ぐらいの人?」

 

「うーん、おふくろは若いって言ってた

けど、おふくろの年齢から言ったら、

俺たちでも若い部類に入っちゃう

からなあ」

 

「そうか・・・」

 

みどりは少し考え込んだ様子だったが、

急に健太に聞いた。

 

「健太、中村君とは最近会ってる?」

 

「なんだよ、急に。哲也とは、姉貴が

月に1回泊まりに来てくれる時に、

飲みに行ってるよ。

何だかほっとけないからな」

 

同級生の中村哲也は、最近離婚して

落ち込んでいる。

 

「あら、そうなの。うん、わかった。

それじゃあ、水曜日と金曜日のことが

決まったら連絡してね」

 

みどりはそれだけ言うと、電話を切った。

 

「何だい、みどりは、哲也のことが気に

なるのか・・・」

 

健太はちょっと面白くなかったが、

そんなことを言ってる場合じゃない。

 

健太は次に、君江の元同僚の渡辺さんに

電話をして、水曜日のお昼ごろに来て

もらえるか聞いてみた。事情を話すと、

渡辺さんは、快く引き受けてくれた。

 

次は、金曜日だ。

翌日から温泉旅行に出かけるから、

姉の楓に前日から来られないかと

健太は電話した。

事情を聞いて、姉はビックリして

「絶対に行くからね。そんな奴、

私がこらしめてやる」

と、すごい剣幕だった。

 

あちこちに電話をしまくって、健太は

昼休憩なのにドッと疲れてしまった。

とりあえず、最後にみどりにLINEで

連絡した。

 

「みどり、月曜日はよろしく頼む。

水曜日は前に話したおふくろの元同僚

の渡辺さんが来てくれる。

金曜日は、姉貴が来てくれることに

なった」

 

すぐにみどりから返信があった。

 

「良かった。これでまずは一安心。

KBLの完成だね!」

 

健太は、何のことだか全くわからない。

 

「KBLって何だよ?」

 

「君江防衛ラインのことよ!」

 

どこかのタレントじゃあるまいし!

と健太は思わず笑った。

 

健太! 準備万端だね!

 

TO BE CONTINUED・・・