83 要介護認定通知が来ない | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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佐藤健太が母親の君江の認知症を

疑い始めて、1か月以上が経つ。

 

同級生のケアマネジャー田中みどり

の協力を得て、何とか要介護認定の

申請書を提出してから、もう4週間

を過ぎていた。

 

君江の症状は、急激に進んでいるとは

思えない。しかし、少しでも早くデイ

サービスに行かせて、君江の生活に

刺激を与えたいと、健太は思っていた。

 

「みどり、まだ認定通知が来ないけど、

どうなってるんだ?」

 

土曜日の夕方、健太は早めに仕事が

終わったので、職場の駐車場から、

LINEでみどりに聞いてみた。

 

すると、みどりから意外な返事が

返ってきた。

 

「建前上は、30日以内に通知される

ことになってるけど、よく遅れること

があるわよ」

 

健太はびっくりして、思わずみどりに

電話をした。

みどりは、すぐに電話に出てくれた。

 

「それって、どういうことだよ」

 

話が違うじゃないか!と言わんばかり

に、健太はみどりに食って掛かった。

 

「要介護状態区分の判定は、最終的に

介護認定審査会で審査して決定される

けど、毎日審査会がある訳じゃないのよ。

審査会の開催されるタイミングによって、

30日を超えてしまうこともあるし、

主治医の意見書の届くのが遅くて、審査

会に間に合わなくて次回に持ち越します

ってこともあるみたいよ」

 

みどりは、あくまで冷静に答える。

 

「じゃあ、いつまで待ってても認定通知

が来ないこともあるってことか?」

 

「30日を超えても通知できないときは、

遅れていますという案内文書が、市役所

から郵送されて来るから安心してね」

 

みどりの説明を聞いて、健太はふと思った。

市役所から郵便が来たら、おふくろは中を

開けてみるんじゃないか?

そうしたら、要介護認定がどうのこうのと

書いてあって、おふくろは、ビックリする

んじゃないだろうか。

 

「みどり、市役所から来る郵便物、おふくろ

が見たらどうしようか。変な風に勘繰られ

ないかなあ」

 

健太は、自分の不安をみどりに伝えた。

 

「実は、要介護認定通知を送るときは、

市役所からの封書の表に要介護認定通知書

って印刷してあるの。重要な書類だから、

分かりやすいようにっていう配慮なんだ

ろうけど、逆に本人に知られたくない

ご家族もいるからね。

そういう時は、例えば住所の違う家族の

ところに郵送してもらえるように、

手続きすることはできるのよ。

 

でも、健太の場合は、楓さんが県外でしょう。

それに、健太の職場には話ができないって

いうし、適当な郵送先が見当たらなかった

から、その手続きはしてないのよ」

 

健太は頭を抱えた。郵便物はおふくろが先に

見るに決まっているし、自分宛ての封筒なら、

開けてしまうだろう。

これはいったい何の話なのかと聞かれたら、

どう説明すれば良いのか・・・。

 

「みどり、どうやって、おふくろに説明

すれば良いんだ」

 

健太の悩みに、みどりはあっさり答えた。

 

「健太、おばさんにはデイサービスとかの

介護保険サービスを利用して欲しいと思って

いるんでしょう。

だったら、この前の75歳の健康診断や家庭

訪問の結果、おばさんは、少しサービスを

使って生活にリズムを付けたほうが良いって、

市役所から通知が来たんだよって、正直に

言えば良いじゃない。

別に要介護状態区分には、認知症の文字は

どこにもないんだし、おばさんには、区分

の詳しい説明はしてないから、大丈夫よ」

 

みどりの話を聞いて、健太はそれもそうだな、

と思った。

いきなりデイサービスの話を持ち掛けても、

おふくろは行かないとか言うかもしれない。

市役所からの通知だと言えば、その気に

なってくれるだろう。

 

「そうだな。みどりの言う通り、介護保険

サービスを利用するつもりなんだから、

おふくろにそういう話の持って行き方をする

のが正解かもな」

 

「健太、もし認定通知が遅れるって案内が

来ても、先に介護保険サービスを利用する

ことはできるのよ」

 

今日のみどりの話には、驚かされてばかり。

これも初耳だった。

 

「でも、どうやってケアプラン立てるんだ。

どの区分になるかも分からないうちから」

 

健太は、要支援と要介護の違いをみどりに

教えてもらったから、誰がケアプランを

立てるのかが分からなかった。

 

「要支援2以上には確実になると思うから、

とりあえず中央包括支援センターに相談して、

要支援2のレベルで暫定ケアプランを作成

してもらうの。

そのプランに従って、サービスを利用を

始めて、正式な認定通知が出たら、正式な

ケアプランに移行するのよ。

要介護状態区分と一緒に負担割合証が来る

から、それに書いてある負担割合でサービス

利用料と自己負担額を後から計算すれば良い

のよ。

サービス利用料も自己負担額も、月単位で

計算して、翌月の10日までに請求すること

になっているから、後払いで精算だからね」

 

健太はそれも良いなあと思ったが、中央包括

支援センターに行くのはハードルが高い。

第一あそこは日曜日は休みだし、みどりの

ように親身になってくれるかどうかも怪しい。

 

そんな思いをみどりに言うと、みどりは説明

してくれた。

 

包括支援センターでは、おそらく週2回の

デイサービスのケアプランを勧めてくれると

思う。

じゃあ、どこのデイサービスにするかは、

健太が希望を言っても良いけど、定員に空き

が無ければ入れない。

よくわからないようなら、包括支援センター

で候補を2,3か所出してくれる。

 

一番いいのは、候補の事業所を見学してから

決めることだけれど、土日は休みの事業所も

あるから、健太が見学できないかもしれない。

土日もやっているデイサービスという条件で

探してもらうこともできるし、最悪見学でき

なくても、パンフレットやインターネットで

事業所の情報を得ることもできる。

 

とりあえず通ってみて、おばさんが気に入ら

なければ、また事業所を変更することも、

いつでもできる。

 

「そうか、この前おふくろを連れて行った

デイサービス、新しくできたから、きれい

で良いかなあ、と思ったけれど、空いてない

かもしれないわけだ」

 

「まずは、来週いっぱい郵便を待ってみて、

認定通知が来なかったら、土曜日に中央包括

支援センターに電話してみたら」

 

みどりに言われて、健太はそうしようと

思った。とりあえず今日はもう遅い。

動き出すなら来週だ。

 

「みどり、色々とありがとうな。俺もネット

とかで、デイサービス探してみるよ」

 

翌週の火曜日、みどりの予想通り、市役所

から認定通知が遅れますの案内が来た。

母親の君江には、この前の75歳の健康診断

の件で、連絡が遅れるって話しみたいだと

言っておいた。

 

君江は、特に気にしていない様子だった。

 

水曜日に、健太宛にみどりから大きな封筒が

届いた。

中を開けてみると、S市の介護保険サービスの

事業所が色々と掲載されている冊子だった。

住所や連絡先なども書いてあるので、これなら

探しやすいと健太は思った。

それにしても、デイサービスだけでも、100

か所近くある。どうやって選ぶんだ?

 

健太! 前途多難だね!

 

TO BE CONTINUED・・・