「子どもに通帳を渡したら、自由に使えてしまうのではないですか」と思われるでしょうか?

でも、使えないとダメなのです。

 

 そもそも国は、みなさんに相続税を節税してもらうために、110万円という贈与税の「基礎控除」を設けているわけではありません。

 

親世代から子世代へお金をあげやすくすることで、日本経済を活性化するようにつとめているわけです。

 

ですから、贈与したものがきちんと使える状態にあるということが大切なのです。

 

 子どもが未成年のうちは、みなさんが管理していてもいいですが、子どもが成人したら、お金の使い方については、コミュニケーションをとりながら本人に管理させましょう。

 

 また、確実に贈与を成立させたいなら、「贈与契約書」を作っておくことです。

 

 契約書には、贈与の内容・日付を書き、贈与する側(贈与者)と贈与される側(受贈者)が、それぞれ署名・捺印します。

印鑑は実印が望ましいですが、認印でもかまいません。

 

未成年の子どもに贈与する場合は、受贈者の名前と親権者の名前を併記します。

 

 法定相続人への贈与で気をつけたいことは、贈与者が贈与後3年以内に死亡した場合は、相続税とみなされて相続税がかかってきます。

「生前贈与」によって相続税を減らしたいならば、とにかく早めに準備を始めるようにしましょう。

 

 また、たとヘ節税が目的だとしても、贈与する相続人と贈与しない相続人がいたのでは、相続争いにつながりかねません。

モメないためにも、それぞれの相続人が平等だと感じるようにすることが大切です。

 

 なお、贈与は法定相続人以外にもできます。

子どもにかぎらず、孫に贈与することもできます。

 

 しかし、孫に基礎控除額以下の暦年贈与した場合でも、後に税務署によって贈与と認められなければ、相続税を納めなければならないこともあります。

 

 孫に贈与する場合も、きちんと「贈与契約書」を作っておくことをすすめます。

また、孫に贈与する場合も、すべての孫に平等になるよう気をつけましょう。

 

 

  平成 29 年 10 月 31 日 

        行政書士  平  野  達  夫

 

 税金対策としてまず思いつくのは、「相続税がかからないように、生きているうちに子どもにお金をあげる」ということでしょう。

つまり、「生前贈与」です。

 生前に財産を贈与して、相続財産を減らしておけば、相続税を限りなく少なくすることができるということです。

 

 贈与にも「贈与税」がかかります。

この贈与には、相続税と同様に「基礎控除額」があります。

1人あたり贈与を受ける額として、年間110万円までは贈与税がかかりません。

 

 皆さんの中にもお子さん名義の口座を作り、その口座に毎年110万円ずつ振り込んでいる方がいらっしゃるかも知れませんね。

 

 ただし、このような贈与の仕方では、節税したつもりが、いざ相続をする段階になって税務署から贈与とみなされず、最終的に相続税の対象になってしまうことがあります。

 

 このように毎年お金をあげることを「暦年贈与」といいますが、ただこれを成立させるためには、双方の「合意」が必要です。

「贈与しました」「贈与してもらいました」と、お互いが合意しているということを証明しなければなりません。

 

 口座が子ども名義であっても、通帳や印鑑、キャッシュカードを親が保管していることがわかりますと、合意がないものとみなされます。

すなわち、贈与は成立しないのです。

 

 このような預金は、「名義預金」と呼ばれ、贈与した者の財産として相続税がかかることになってしまいます。

 

 「名義預金」と判断されやすいケースとしては、次のものがあげられます。

 

・「贈与契約書」が交わされていない

 

・子どもが、自分名義の口座があることを知らない

 

・子どもが口座の存在を知っていたとしても、親が通帳や印鑑を管理している

 

 これら当てはまるものがあれば、みなさんが行っていることは、正式な「贈与」として認めてもらえないかも知れません。

 

 

    平 成 29 年 10 月 15 日

          行政書士  平  野  達  夫

 「物納」にあたっては、資産価値の高い財産から物納する必要があります。

「あの土地はいらないから、それを物納しよう」というわけにはまいりません。

地価の高いものから納付することになります。

 

 相続財産に不動産が多いなら、それを売って納税資金に充てればいいのですが、それが難しいこともあります。

 地主さんによくあるケースです。

「先祖代々の土地は、売りたくない」という方が多くおられるようです。

 

 親がJRの駅周辺にたくさんの不動産を持っており、二次相続の時に多額の相続税が発生したという話を聞きます。

 相続税を納めるにも、現金がありません。

先祖代々の土地は手放すわけにはいかないということで、最終的に銀行から多額の借金をするということになってしまいます。

 

 もし、親が納税資金のことを考えていれば、不要な借金をすることはなかったでしょう。

 また、遺言書に「この土地は、売っても良い」という一言があれば、子どもも不動産を処分するという決断も容易にできたかも知れません。

 

 一次相続の時までに、問題点を探って準備をしておくのがベストですが、一次相続が終わってから二次相続が起こるまでにできることもたくさんあります。

 

 時にみなさんのお子さんが一人っ子の場合は、相続税がかなりの負担となってしまうことが多々ありましょう。

 「贈与」や「生命保険」を使って、相続税対策を講じておくのも一つの方法といえます。

 

 

      平 成 29 年 10 月 3 日 

            行政書士 平  野  達  夫

 皆さんが亡くなった時、相続人は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告をし、納税をしなければなりません。

 しかも、現金による「一括納付」が原則です。

相続人それぞれは、受け取った財産に相当する相続税を納めることになります。

 

 また、この相続税には、「連帯納付義務」というものがあります。たとえば、長女と次女、三女が3人で財産を分けて、長女と次女は相続税が納められたとします。

 けれどももし、三女が何らかの事情で納められなかったとしたら、長女と次女は、三女に代わり、相続税を納めなければなりません。

 

 長女と次女に現金を、三女には不動産を、といった偏った遺産分割にしてしまいますと、このようなことが起こり得ます。

 

 二次相続の時も、各々の相続人が納得できる取り分にするとともに、納税資金のことも考えなければなりません。

 

 現金による一括納付が困難な場合、「延納」という方法があります。

 これは、分割払いで納める方法ですが、本税に加えて「利子税」の納付が必要となってきます。

 また、預貯金や収入などの情報を税務署に提示し、一括納付ができないということを証明する必要もあります。

 

 もしこの「延納」もできないということであれば、「物納」といって、土地建物といった不動産などの財産で納付することもできます。

  ただし、相続人が少しでも現金を持っていれば、先ずはそれを納付しなければなりません。

 

 相続人としては、相続税が払えないと、大変なことになります。

このように相続人はもちろんのこと、いずれやってくるであろう相続開始に向け、皆でしっかり考えておかなければならないことでしょう。

 

 

     平 成 29 年 9 月 26 日

          行政書士 平  野  達  夫

 「一次相続」の時は、母親がほとんどの財産を相続するという家庭が多いようです。

その場合、税務署への申告は必要でも、多くは相続税は発生しません。

とりあえずのところは、モメなくてすみます。

 

 問題は、「二次相続」の時でしょう。

もう親はいないわけですから、子どもが相続人となります。

 

 遺言書などない場合は、兄弟姉妹が、各々自分の権利を主張します。

もし兄弟姉妹の中で誰かが亡くなっていたら、その子どもである甥や姪が相続権を代襲します。

 

 そのため、相続人の人数が増えることもでてきます。

そうしますと、ここで「遺産分割」で争い事が起こりやすくなってしまうのです。

 

 また、この「二次相続」では、「配偶者の税額軽減」のように、大幅に税金を減額できる優遇措置はなくなります。

その結果、多額の相続税なるものを納めなければならなくなります。

 

 なお、「小規模宅地等の評価減」は、親と同居していた相続人が自宅を相続する場合などは、適用できます。

 

 そのようなわけで、納税資金がないという問題も、「二次相続」の時は起こりやすいと言えましょう。

 

 

      平 成 29 年 9 月 8 日 

         行政書士   平   野   達   夫

 相続のモメごとしては、やはりお金が中心になります。

「財産の分け方に不服がある」「納税資金がない」など、いろいろ問題はありますが、モメごとが深刻化するのは、「2回目の相続」の時です。

 

 一般的に、子どもは父親が亡くなった時と、母親が亡くなった時の2回、相続を経験します。

1回目を「一次相続」、2回目を「二次相続」といいます。

その中で、「二次相続」の時が、よりモメやすいのです。

 

 もしみなさんの配偶者がすでに亡くなっていて、相続させるのは子どもたちのみとなっているようでしたら、要注意です。

 

 父親が先に亡くなった場合、母親と子どもが相続権を持ちます。子ども同士だけだとモメそうな場合も、「鶴の一声」を発するしっかりした母親がいれば、あまりモメることはありません。

財産の分け方に不満があっても、母親がその理由を説明することができます。

 

 また、配偶者が財産を相続する時は、相続税を減額できる「配偶者の税額軽減」という制度を利用できます。

1億6000万円以内、もしくは法定相続分内までは、相続税がかかりません。

 

 さらに、母親が自宅に住み続けると、「小規模宅地等の評価減」という制度を利用できます。

課税対象となる土地の330㎡までの部分については、相続税評価額を80%下げることができます。

 

 

  平成 29 年 8 月 28 日 

         行政書士  平  野  達  夫

 今の時代、親の「鶴の一声」が非常に重要になってきているのです。

 

 法的に有効な「遺言書」と「エンディングノート」をセットにしていれば、まずモメません。

 

 子どもから相続の話を切り出す場合は、まずは「感謝の気持」を伝えて下さい。

「今の自分があるのは、親のおかげ、育ててくれて感謝している」という気持ちを自分なりの言葉で伝えましょう。

 

 それを言わずして、「相続対策しておいてよ」「この本読んでおいて」なんて言ってしまうと、それこそ親は腹を立てて当然です。

親だって、自分の死んだ時のことなんて考えたくありません。

それを子どもから言われるのも、嫌に決まっています。

 

 まずは感謝の気持ちを親に伝えたうえで、「子どもからこういう話をされるのは嫌かもしれないけれど、せっかく育ててもらったのに、子ども同士でモメたくないです。これからも兄弟姉妹仲良くやっていきたいからこそ、話しておきたいんだよ」と、切り出せば、親も聞く耳をもってくれることでしょう。

 

 また、相続のことを考えるうえでは、兄弟姉妹同士のコミュニケーションも大切です。

他の兄弟姉妹を差し置いて、特定の子どもだけで親と話してしまいますと、それがモメる原因になってしまいます。

ぜひ兄弟姉妹同士でも、相続について話し合っておくようにしましょう。

 

 相続準備いおいて不可欠なのは、「コミュニケーション」です。

それを念頭に置きながら、具体的な内容を見てまいりましょう。

 

 

      平 成 29 年 8 月 3 日

          行政書士  平  野  達  夫

 コミュニケーションなくして、円満な相続は成り立ちません。

相続の準備をするためには、先ずは親子間のコミュニケーションが必要といえます。

 

 親が子の価値観や、人生設計を理解せずに、独断で準備してしまいますと、結局は相続争いが起こってしまいます。

 

 「子供と相続の話をするなんて・・・。みんなちゃんと話しを聞くかな・・・」

 もちろん、今までほとんど親子の会話がなかったとしたら、いきなり相続の話をされたのでは、さすがに子どもたちも面喰ってしまうでしょう。

 

 親が亡くなることなんて、子どもからしたら考えたくないことです。でも、みなさんの死後、本当に子どもにモメてほしくなければ、みなさんの考えを、子どもたちに伝えなければなりません。

 

 自分の死後、お前たち兄弟姉妹で争ってほしくないんだということをよく話した上で、「自分はこうしたいと思うけれど、お前たちはどうなんだ?」と、聞いてみてください。

 

 そうすることで、思いもよらないことが返ってきて、相続準備の方向性が大幅に変わってくるかもしれませんね。

 思い切って相続の話を切り出すことで、親子の絆が深まるきっかけとなった方も多いのではないでしょうか。

 

 親の言葉は、大変影響力があります。

子どもは、本能的に親の言うことに従おうとします。

親がきちんと意思を示していれば、出来る限りそれを尊重しようとします。

 

 「親が死んだ後のことなんて、子どもが考えるもんだ」と、何も言わないでおくと、子どもたちからは親の意思が分かりません。

 最後は、兄弟姉妹がそれぞれの権利を主張してモメてしまいます。

 

 

   平成 29 年 7 月 29 日

          行政書士  平  野  達  夫

 特に今気をつけていただきたいのは、親と子の「コミュニケーション」です。

 みなさんは、親子で十分な「コミュニケーション」ができていますか。

もしかすると多くの方は遠く離れていて、なかなか話す機会もない、また一緒に暮らしていても、男同士だと、あまり話しをしないというのではないでしょうか。

 昔は、それでも良かったのです。

親子で話し合う機会がなくても、相続の際にモメることもなかったようです。

 

 戦前の民法では、長男がすべての財産を受け継ぐものと決められていました。

それが当たり前だったのです。

 長男以外が「権利」を主張することはあり得なかったのです。

それが戦後の民法では、すべての兄弟姉妹が「平等」に財産を相続できることになりました。

 兄弟姉妹が均等に財産を受け継ぐ「権利」が、法律で定められました。

 

 ただ法律が変わっても、旧民法が当たり前だった戦前・戦中生れの人は、「長男がすべてを継ぐのは当たり前」だと思い続けています。

 そういう両親に育てられた子ども(60代以上)は、同じようにそれが当たり前だと思っている人もいるようですが、一方「そんな時代じゃない」と言う人もいます。

 

 ではその子ども(30代以上)はどうでしょうか。

だいぶ意識が違うのではないかと思います。

 「権利を主張するのが当たり前」だと思っているかも知れません。

実際そうしないと生き残りにくい世の中になっているのではないでしょうか。

 

 相続に限らず、時代の流れの中で、「権利」に関する意識は、確実に変わってきています。

 今日は、「親子間」で意識や価値観のギャップが大きくなりやすい時代だということです。

 

 親が「自宅は残したいから、長男が継ぐのは当たり前」「長男なんだから、しっかり考えてくれているだろう」と思っていても、子どもが同じように考えているとは限りません。

 長男にしてみれば、「えっ今どき、そんなことありえない!」と思うかもしれません。

 

 核家族化も、価値観のギャップに拍車をかけています。

親子や兄弟姉妹が一緒に住んでいれば、大体同じような価値観を持ち、家族全体が運命共同体のような感覚を持ちます。

 けれども、それぞれが独立して世帯を持つと、自分の世帯のことを優先的に考えるようになります。

特に金銭的なことは、そうだと思います。

 不況のあおりを受けて、リストラや子どもの教育資金のことで悩んでいれば、なおさらです。

 

 意識や価値観に大きな違いがあるうえに、「コミュニケーション」もとれないとしたら・・・・。

 相続の際、モメてしまっても、当然だと思いませんか?

 

 

 

     平成 29 年 6 月 7 日

              行政書士 平 野 達 夫

 相続の問題点が見えたら、あとは解決方法を見つけることです。

その解決策とは、「遺言書を書く」、「生命保険を活用する」、「エンディングノートを書く」ことの3点です。

 

 相続にみなさんの意志を反映したい時や、遺産分割でのモメごとを防ぎたい時は、主に遺言書やエンディングノートが役に立ちます。

 節税、納税資金対策などでは、相続税に関する特例を使ったうえで、生命保険を利用するのも良いかも知れません。

 

 また、いったん対策を立てたら、時々内容を見直して検証することも大切です。

 遺産分割の内容を決めたあと、財産が大きく増減することもあります。

特に、不動産や株券の評価は、大きく変わる時もあります。

 またあってはならないことですが、子どもが亡くなって、孫が相続人になることもあるかも知れません。

 

 相続対策は、元気なうちに始めておくことです。

そして、大きな変化があった場合には、見直すことです。

これが、基本です。

 

 ただ、ある程度相続対策をしていても、モメることがあります。

遺産分割の想定はしていたのに、結局争いが起こってしまった・・・・・という切ないこともよく起こります。

 

 そういう家族には、一つの共通点があります。

それは、互いにコミュニケーションがとれていないことがあげられます。

母娘や夫婦、兄弟姉妹間で、十分なコミュニケーションがとれていないのです。

 

 みなさんは、「え、そんなこと!」と思われるかも知れませんね。

実は、このコミュニケーション不足が近年相続争いが増えている大きな原因と考えられます。

 

 

        平成 29 年 6 月 3 日

             行政書士 平 野 達 夫