分身構造理論 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  分身構造理論

 

 これは「三角構造理論」との絡みで、ここで簡単な説明をします。

 

 「となりのトトロ」でサツキとメイという少女が登場します。

 少女たちの名前は、5月を意味しています。

 もともとこの少女は、1人の少女として構想されていましたが、宮﨑駿は、二人の少女に分けて、幼いやんちゃな少女と、少し分別のある大人びた少女という形で表現をしました。この二人は分身です。トトロという存在も、大きなトトロの分身として、小トトロや中トトロが存在しています。

 宮﨑駿作品では、こういう分身がよく登場して、基本的な構図を作り出しています。

 

 「魔女の宅急便」では、飛べなくなって悩むキキのところに、ウルスラという先輩の女性が現れて助言をします。

 キキもウルスラも、声を高山みなみさんが演じています。つまり二人は同一人物の二つの影なのです。これを私は「分身構造」と呼んでいます。

 

 そもそも高山みなみさんは、分身構造をすぐに思わせる存在です。

 「名探偵コナン」というアニメーションがあります。高校生探偵工藤新一と、コナンは同一人物であり、分身として作品に登場します。コナンを演じているのが高山みなみです。新一は山口勝平が声を演じています。

 

 この関係は、すぐに、「ハウルの動く城」の、18歳の少女ソフィーと90歳のおばあさんソフィーを思い出させます。娘のソフィーとおばあさんのソフィーは分身関係にあります。声は倍賞千恵子が演じわけています。主題歌も歌っています。

 

 「もののけ姫」のサンと、アシタカを慕う少女カヤも、分身構造です。二人とも、石田ゆり子が声を演じています。アシタカが、カヤの玉の小刀をサンに渡すのは、そういう理由からです。

 

 こうした分身構造をもつことが、作品の奥行きを増すという理論が、「分身構造理論」です。

 「三匹のこぶた」という話がありますが、私は、ここには三角構造理論と分身構造理論が組み合わされていると考えています。

 

 夏目漱石の「吾輩は猫である」の場合、くしゃみ先生も、黒猫も、夏目漱石の分身として作品に現れています。この分身構造が作品の基礎となっています。この場合の面白いところは、作者と登場人物と黒猫が三角構造をなしている点であり、分身三角構造として面白い形を作り出しています。

 

 分身構造というものには物語の揺れが反映されます。

 

 「魔女の宅急便」の場合、黒猫ジジが最初にキキの分身であったのですが、パートナーを見つけてキキを離れたので、新しい先輩の分身が登場しているのです。ジジと「吾輩は猫である」の黒猫と比較をしても、面白いでしょう。宮﨑駿が夏目漱石を愛読していることは周知の事実です。「崖の上のポニョ」は、漱石の「門」を取り込んで作られています。

 

 私の「トムとジェリー理論」については、すでにお話をしていますが、追いかけっこを続ける天敵は、実は分身構造を持っています。トムとジェリーの顔を見ると、表情がよく似ているのです。動きなどもよく似ています。

 「ルパン銭形理論」とも呼んでいますが、例えばルパン三世は、有名な大泥棒の子孫、銭形警部は有名な刑事の子孫ということで、血筋を背負っている存在です。お互いに共感を持つこと、ある意味で分身構造にあることは、自然な流れであると言えます。

 

 

 

 

 

天天快樂、萬事如意

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