岩谷薫氏の石仏の笑い | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  岩谷薫氏の石仏の笑い

 

 これはなんと、2年前の記事です。再録します。

 天才写真家の岩谷薫氏は、天使の写真集のお仕事で有名です。

 その天使の写真のかげに埋もれてしまいがちな写真集が、『笑とる仏』です。

 このタイトルが、関東の人間には読みにくいかと思いますが、「わろとるほとけ」と読みます。

 打ち捨てられたような、どうもあまり大切にされているとは思えない石仏(石棺仏たちを見出し、その深い表情をとらえていく岩谷氏ですが、そのときにかならず石仏と対話をくりかえしていることがわかります。

 石仏たちが言おうとしていることを、しっかり受け止めるという姿勢です。

 岩谷氏はシャーマンなのです。天使や石仏たちが言おうとしていることを受け止め、それを整理し、古典などの引用を通して集成したものが、名著『亡くなる心得』となるわけです。岩谷氏が通常の写真家という枠を超えた思想家であることがわかります。

 私の紹介などは、まだまだ表面的に話題にしているだけなのですが、岩谷氏のお仕事はもう少し正当に評価されるべきものであると思い、ささやかなご紹介をさせていただきます。

 

岩谷薫氏の石仏の笑い

 

 天才写真家の岩谷薫氏の重要な仕事に、石仏の写真集があります。次の書籍です。

 

  岩谷薫『笑とる仏』西日本出版社 (2011)

 

 たとえば天使を追いかけていると聞けば、西洋かぶれなのかとも思われることがあるでしょう。しかし岩谷氏は中国古典などにも詳しく、また日本の伝統文化にも詳しいのです。実に博識です。そしてこの本は日本の石仏の写真とエッセイとがあいまった素敵な書物です。

 あの世とつながった霊界とのやり取りを、岩谷氏は追及していることがわかります。

 これも哲学とユーモアにあふれた本で、箴言も多く、様々な発見があります。とにかく素朴な石仏の表情がすごいですね。とても重要なお仕事だと思います。

 

 しかし、どちらかというと、私は天使の写真のほうが好きなのです。

 天使の表情が悲しみをたたえているからかもしれません。

 岩谷氏は天使像を撮る時に、常に空を意識していますね。

 空を飛べるというところに天使の喜びと悲しみを感じます。天使には、やはり翼の魅力がありますね。

 私の趣味を告白するようですが、天使像の作品集の中では、イタリア篇の死の匂いがとりわけ好きです。

 

 『笑とる仏』から少しだけ写真を引用します。

 もちろん、石仏の笑顔の背後には、かなしみも込められているのです。

 「道はすぐ近くにあるのに、人々は遠くを探している」

 これは心に沁みる言葉ですね。

 

 なお、引用する写真は、私が机の上に本を開いて撮影しているものなので、光が入り込んだ参考程度の写真になっています。複製を予防するための措置です。

 

   

 

 

   

 

 

   

 

天天快樂、萬事如意

  みなさまにすばらしい幸運や喜びがやってきますように。

   いつもブログを訪れてくださり、ありがとうございます。