今日の授業 横光利一の「火」 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  今日の授業 横光利一の「火」

 

 「火」は最初期の作品ですね。

 問題点は二つあります。

 途中で、少年が落書きをやめるという構図。

 母親の不倫現場をみんなに教えたくてしかたがありませんが、それを村の橋に落書きしてしまうと、大きな問題が起こることを自分でも感じています。

 もう一つの問題は、のぞき見という構図です。

 のぞき見ることには、エロスの問題が付きまといます。

 お母さんが隣家で男たちにお酌をするのをのぞき見しながら、少年は障子に指をぶすぶすと突き立てます。

 のぞきは垣間見ともいわれ、「源氏物語」で多用されるドラマの源泉となっています。

 今日は「となりのトトロ」の場合と、ヒッチコック「裏窓」の場合を比較しながら、考えてみました。どちらにも、のぞきの構図が用いられています。

 この問題は後期も継続して考えていきます。

 

 落書きもそうですが、言葉を発信する、作品を発表するということは、自分の姿を世の中にさらしていくことになります。

 こうしてブログで顔と名前をさらし、自分の意見を発表していくことも、大変なエネルギーが必要です。批判にさらされることも多いです。内容をよく理解しようとしないで、批判のための批判、無理解の批判もたくさんあります。

 「蠅」で空に飛び立った蠅には、自分の飛翔を世界にさらしていくことへの、横光の覚悟が秘められていると思います。

 

 

 

 いつもブログを見てくださり、ありがとうございます。