アメリカの歴史を、「大統領の執事」の目から描くという着眼点が良い。
あらすじ
奴隷の子供として育ったセシルは目の前で白人の主人に父を殺された過去を持つ。農園を去り、盗みに入った店の黒人に救われ、働くことになる。教えられたことは「客の目を見て望みを知れ」「相手の心を読め」「ボスが思わず微笑むように」で「白人用の顔と自分の顔を持て」だった・・
しかし、アメリカという国は色々酷いことをしてきたもんだ。
ということをこの映画は隠さない。もちろん、それはアメリカに限らないわけだが。
その酷いことの中でも、この映画は黒人を中心とした人種差別を軸にしている。
7人の大統領に仕えた彼は、その歴史の裏側を間近で見ているわけだが、「執事の仕事に徹する」ことで、自分の感情は可能な限り押し殺して従事していた。
この7人の大統領の性格が、当たり前だがそれぞれ違っていて楽しい。
当然だが少し似ている俳優を使っているところも面白い。
そしてラスト。7人の大統領からもらったアイテムのうち、彼はふたつを選んで身に着けるわけだが、選ばれたアイテムを送った大統領は、少なくとも黒人である主人公に認められた人物だった、と明確に示す場面が興味深い。
ものすごい展開が続くようなドラマではないため、退屈に感じる人もいるかもしれないが、「仕える大統領が変わる度」、この映画ではどのような人物として描かれるのか楽しみに観ることができた。
ただしっとりと感動するような題名とパッケージだが、相当酷いアメリカとアメリカ人の暗部が描かれている映画で、先日観た「アメリカン・スナイパー」同様、一人の男の人生を割と淡々と、ノンフィクション風に、客観的に描くことで、その効果を逆に高めているのかも知れない。