I LOVE 陸上自衛隊 -4ページ目
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射撃訓練・前編

まずいきなり実弾はおろか、空砲も撃たせてもらえません。自衛隊の射撃姿勢の基本は寝撃ちと膝撃ちで、基本は右手で引き金を引くのですが、左利き(効き目が左etc.)の隊員の場合は、部隊によっては左撃ちで撃たせてもらえる事ができます。ただ薬莢(弾の胴体部)は右に飛ぶので、左撃ち隊員の場合は薬莢カバーが必ず付けられ、顔の火傷を防ぐ工夫をします。一方、右打ちの場合はうちわみたいな物を薬莢が飛びそうな所に構え、地面に落とすと言う単純な物。右打ちでも薬莢カバーを付けさせてくれる部隊も、一部ですがあります。


まず最初にやる事は的に向かって銃を構え、的の向こうにいる班長によって照門を合わせ(的には穴があり、班長が照門を最初のうちは上手に合わせてくれ、これは隊員毎に違います。最初は照門0の位置から初め、上下左右に微調整します)、薬室の金属部分を引きながら引き金を引き、引き金を引いた後「カチャ」っと音がします。これを何度か繰り返し、最後訓練終了時には、薬室の蓋を固定し内部を除き、空に向かって空撃ちをして「安全状態確認完了」と言って終わりです。傍から見てたら「バカらしい」かもしれませんが、班長と新隊員は真剣そのもの。最初は射撃姿勢から徹底的に仕込まれ、午後は小銃の分解結合をやって、3時半からジョギング。最初の3週間はこれの繰り返しです。


その合間に中隊長・区隊長の精神教育(座学)や、あと意外かも知れませんが、中隊毎によって中隊オリジナルのTシャツのデザインや、ジャージのデザインも行います。最初のジャージは官品(自衛隊の所有物)ですが、ジャージは私物になります。尚、このジャージの代金はチャッカリ給料から引かれています(安いですけどね)。Tシャツはほとんどの部隊が無料で作って全員に配布されます。


前期教育の大隊長の要望事項は「仲良く、明るく、元気であれ」が前期教育の部隊のほとんどで、ノリはほとんど学校のノリです。分かりやすく言えば、大隊長が校長・中隊長が副校長・区隊長が教頭・専任班長(2曹)が学年主任・そして班長が担任と言えばいいかな。


では明日は、射撃訓練後編を書きます。

武器受領

昨日は用事で更新できへんかったからスマンね。さていよいよ自衛隊員だと実感する時、それは小銃受領の時です。中隊長から突き出された小銃を製造番号(例えば0123456)だったら「0123456」と大きな声を出して、引っ手繰るように受け取ります。基本は製造番号部分を読み上げるのですが、部隊にとっては銃底(銃の握り)の部分に書かれた番号を読む部隊もあるように、一概にどれが正しいのかは言えません。


小銃を受領したら、最初に分解結合訓練をやります。大抵64式小銃だけど、中には91式小銃の所もあります。

小銃の分解結合は基本中の基本訓練で後期教育課程で、小銃とほとんど縁の無い音楽隊や会計隊に行っても小銃は受領されます。レンジャーと呼ばれる隊員は目隠しして逆立ちの状態で小銃の分解結合を行えるほど。


64小銃は部品数が非常に多く、プラモデルの感覚で楽しめ、組み上がったときの喜びは、他の銃では味わう事ができないものがあり、命中精度に関してはM14などに比べて格段に良く、7.62mm系列の小銃の中では最高の性能を誇ります。


結合した後に弾も入っていないのに引き金を引いて、わざわざ弾が入っていないのに、なぜそんな事をするのか結構疑問に思う人も多いと思いますが、自衛隊において小銃の発砲は非常に慎重です。私が区隊長時代に教えていたWACで、上官と部下の関係でありながら同じ大阪と言う事もあって仲がよく、後に婦警に転職した生徒に逢って、警察はどのような銃の取扱かを聞きました。


警察では2002年まで「撃つぞ!」と言った後に、初めて発砲する事が許されていました。今は、言う前に撃たれてしまう恐れがあるから廃止されましたが、警察官の拳銃には実弾6発が装填できるのですが、実は一発目は空砲。撃っても一発目は弾丸が出ないようにしている位に、銃には慎重そのもの。


2発目からは実弾が発砲されるものの最初は空に向けて撃ち、3発目でようやく犯人に向けての発砲となり、この時も足を狙うように指導されているそうです。また警官にとっては発砲したくないのが現状で、発砲したら監察官と言う「警察官の警察」に指導され、ケースにもよりますがその所属部署内での居心地が悪くなり、出世にも響きます。


また拳銃を使用したら、その後の書類・口頭での報告に1週間から10日ほど忙殺され、その面倒を避けたいのが本音のようです。


明日は、射撃訓練の話をします。

最初の訓練は

基本教練と言うもので、敬礼の仕方や、体育の時間で習った「右向け右」や「回れ右」などの反復練習を行います。大体、武器(小銃)受領の間はこれがメインです。午後は3時位まで服(部隊によって呼び方は様々で、戦闘服・作業服・OD等)のアイロンのかけ方と、半長靴と呼ばれるブーツの磨き方を教わりますが、半長靴のつま先の部分は「顔が写る位に光られろ」と指導されます。


このやり方にはコツがあり、まずつま先部分に大きく息を吐き、靴墨を少量手ぬぐいに付けて細かく円を描くように薄く塗って、また息を吐いて、靴墨を少量付けて薄く塗り、仕上げる時には「少量のツバ」を付けて光らせます。慣れて来たら10分程度で終わりますが、最初のうちは悪戦苦闘し1時間かかる隊員も珍しくはありません。この半長靴磨きは、夕食・入浴後の自由時間内に行います。これは毎日行うのですが、理由として最初のうちは半長靴は硬い状態なので、足首部分を覆う所を「保革油」と言う物で柔らかくします。


午後3時位にジョギング(自衛隊では持続走)を行いますが、最初のジョギングでクラス分けをして、A組(速い組)~E組(遅い組)と分かれ、それぞれに担当する班長が付きっ切りで指導します。この持続走は陸上自衛隊の最も基本的なトレーニングで、最初はスタミナが無かった隊員も、前期教育が終わる頃にはスタミナが付き、そして走破タイムも最初の時に比べて大きく変わります。


教育隊では「汗の記録」と言う題目で、1日何㌔走ったかを班長に毎日報告します。ちなみに私の知ってる最高記録者は、3ヶ月で約1700㌔走った女性自衛官(WAC=ワックと言います)がいて、その隊員は現在某部隊で、既に三曹になってると聞きました。


基本教練と持続走。これが陸上自衛隊の基本中の基本訓練で、どこの駐屯地でも午後3時くらいから一斉に持続走を始めます。終礼はだいたい4時45分なので、着替える時間等も含めたら約1時間半走るのです。


明日は、自衛隊員の基本装備と言える武器の話をしましょう。

いざ入隊・その2

翌日の午前は「精神教育」と言う中隊長の挨拶を兼ねて、自衛隊の仕事や役目などに付いて教育されます。精神教育と言っても「洗脳教育」ではないのでご安心ください。


そして昼食ですが、新隊員の初めのうちは営内班全員で1つのテーブルに着き、最初のうちは班長も一緒に食事をします。駐屯地には陸士食堂・陸曹食堂・幹部食堂と別れていますが、この時班長は陸士食堂で食事を取ります。陸上自衛隊の食堂で食事を作っているのは、駐屯地内の部隊の隊員で、これは幹部からスタートした私のような自衛官以外(早い話が2等陸士から始めた隊員)は必ずやらされる仕事です。理由は陸上自衛隊は「サバイバル」要素があるため「料理の仕方を覚えるのは当然」と言う考えの下からです。一方で、海上自衛隊と航空自衛隊は「調理専門」の隊員がいて、海上・航空共この調理専門部隊は「大人気御礼」状態で、競争率はメチャクチャ高いです。


自衛隊の食事は駐屯地によって味はよりけりで、小規模な駐屯地の方が味が美味しい傾向があり、中大規模な駐屯地は、味の変わりに2種類のおかず(例えば肉と魚・麺類とカレーなど)の選択や、ファミレスなんかにある「ドリンクサーバー」を設置している駐屯地もあり、私が最後の赴任地となった朝霞駐屯地の食堂は、ふりかけやマヨネーズ・お茶漬けの元etc.があり、ドリンクサーバー(ジュース・コーラ・コーヒー)もあります。

尚、自衛隊の食事は無料と言いますが、これは独身隊員で営内で過ごしている陸士と陸曹のみ。既婚者と幹部自衛官は有料です。幹部食堂はセルフサービスではない所もあり、また幹部と体育学校の生徒には「特別メニュー」もあります。


話は戻って午後になると書類の手続きを始めます。住民票の転入届から始まって、(大規模な駐屯地だと)預金口座の情報など、イヤと言うほど書類を書かされます。そして最後に「宣誓書」、分かりやすく言えば「雇用契約書」にサインをします。この宣誓書を見て入隊拒否する事もできますが、宣誓書にサインをしたら「よっぽどの事情がない限り」(任期制隊員の場合は特に)退職させてくれません。これを書くのが28日。そして審査は2~3日で通り、来月の1日に初めて「二等陸士」に任官されます。自衛隊に入るのが26日と言うのは、この手続きなどからなのです。


明日は、新隊員の訓練について説明します。

いざ入隊・その1

合格して、いよいよ自衛隊員になった若者がまずやらされる事は、身体検査。試験時の身体検査と違って、これがまぁハズカシイのなんのって。肛門と男性ならペニスを、女性ならバギナを見られるんですから。これが終わったら髪の長い・染髪している人間は駐屯地内の床屋で、男子はスポーツ刈り・女子はショートボブにされます。


そして居室の事を「営内班」と言うのですが、班長(三曹)の自己紹介から始まって、全員自己紹介をやります。班長と言うのは自衛隊用語で「三曹」の事を指す言葉で、これは教育隊に限らず、一般の部隊に配属されても三曹=班長な訳です。


その後、一般部隊に入った一等陸士(二等陸士や陸士長の場合もあり)がやってきて、毛布とシーツのたたみ方をレクチャーしてくれます。これが結構めんどくさいと言うか、教育隊を終えて一般部隊に配属された隊員は、毛布を解かずに枕と掛け布団だけで寝ます。居室は冷暖房完備なので、わざわざ毛布は使う必要はありません。


翌日は制服等の被服の受領を行い、階級章・帽章を縫い付けるのですが、班長が直々に丁寧に教えてくれます。そして、縫い終わったら普段かぶる帽子に入れる「針金」をPX(自衛隊の売店)で買って、後は自由時間です。ちなみに自衛隊の消灯時間は午後10時。起床は午前6時ですが、部隊によっては土日と冬季は午前7時になる部隊もあります。


続きはまた明日。


自衛隊員を目指す人たちへ

自衛隊員、昔は駅や職安なんかで身体の丈夫そうな若い男性に「お兄ちゃん、自衛隊入らないか?」と、地連の広報官が(彼らも自衛隊員)スカウトしていましたが、いまや自衛隊は折りしも不況が重なった上、災害派遣等で自衛隊の活躍がテレビのニュースに映し出されて大人気職種と変貌し、いまや自衛隊員になるのはかなりの狭き門です。自衛官募集とポスターで書いてはいますが、自衛官は事務官・技官も含めるので、自衛隊員(以下、隊員)募集の方が正しいのです。


自衛官になるには志願表を地連に出し、出させた志願票を調査課と言う部署が「犯罪歴・暴力団とのかかわりの有無等」などを調べるので、普通に生活してたら書類審査は通ります。そして試験を行いますが、昔は地連の広報官が答えとかを教えたりしていましたが、今はそう言うのは無くなりました。出される問題は高校卒業程度の国語・数学・英語・社会科で、警察のような「適正診断」は行いません(調査課が前もって調べているから)

そして、次に健康診断。身長・体重・視力・聴力・色盲の有無・レントゲン検査等を行いますが、警察と違って運動能力試験は行いません。最後に、面接でどこの自衛隊(陸海空)に行きたいかを聞かれます。海自と空自はほぼ満員状態なので、新卒隊員はなら海自・空自にも行けますが、中途採用隊員(6月・9月に採用試験を行う)はほとんどが陸自に配属されます。また、女性自衛官の採用試験は新卒隊員試験の行われる9月のみです。


合格発表は約3週間程度してから、地連の広報官が合格なら家まで出向いて合格の知らせを受け、それと同時に合格者の家族に挨拶を兼ねて訪問します。合格したら大体26日に入隊しますが、新卒隊員は曹候補学生・曹候補士は教育隊に、任期制隊員(2年後との契約の隊員)は最寄の駐屯地に配属されます。ただ、中途採用隊員は教育隊からのスタートです。


自衛隊に入って何を最初にするかは、明日書きます。

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