50代女性の2人に1人!「元低血圧」でも要注意の「更年期の高血圧」の実態
8/31(水) 7:03配信
現代ビジネス
低血圧だったのに!? まさか自分が高血圧!?

 「健康診断で、高血圧と言われ驚愕。ずっと低血圧だと思っていたのに」(54歳)

「ジムで運動前に血圧計で測定したら、上が160、下が92。毎回それぐらいの数値で。トレーナーに血圧が高いと指摘されても、まさかと思っていた」(56歳)

「頭痛とめまいで病院を受診したら、高血圧と言われてショックだった」(53歳)

 更年期世代になって、高血圧症状が出て「まさか私が!?」「ずっと低血圧だったのに」とショックを受ける女性たちは少なくない。

 歳を重ねれば、誰もが迎える「更年期」。この時期には、卵巣ホルモンであるエストロゲンの分泌が不安定になることから、さまざまな不定愁訴が現れることが知られている。代表的な症状は、ホットフラッシュ(ほてりや発汗)やだるさ・疲れやすさ、イライラなど。ほかにも、めまい、動悸、手足の冷え、肩こり、記憶力の低下、落ち込みなど症状は多岐にわたる。

 症状の出方は個人差が大きく、つらい症状に悩まされる人もいれば、楽に過ごすことができる人もいる。生活に支障をきたすほどの症状は「更年期障害」といって、治療の対象にもなる。

 最近になって、こうした更年期特有の症状はよく知られるようになった。一方で意外と知られていないのが、閉経後に変わる体のことだ。例えば、「血圧」や「LDLコレステロール」といった健康数値の変動に注意を向ける人はまだまだ少ない。

 特に「血圧」については、更年期に入って突然血圧が上がってくる人、めまいや頭痛などの症状と併せて血圧が上がる人、イライラや睡眠不足のストレスで一時的に血圧が上がる人など、血圧が不安定になる人が増えてくる。女性はもともと血圧が低めの人が多いため「気にしない」と放置してしまう人もいる。たまたまだろう…と見過ごしてしまうと、動脈硬化や心不全、脳梗塞といった重大な病気のリスクにつながるので注意が必要だ。

 血圧がもともと低めだった人が、更年期に注意すべきポイントとは? 油断しがちな更年期血圧の特徴や血圧によい生活について、医療ライターの及川夕子さんが性差医学や女性医療を専門とする医師の宮尾益理子さんに伺った。

「高血圧」は男性だけじゃない

 何を食べたら健康になれるか、肌にはどんな化粧品がいいか。私たちは見た目や外から与えるものに目が行きがちだ。でも本当は、体の中で起きている変化を見逃さないことが大切。全身の細胞へ酸素や栄養を届ける「血管」は、美と健康の生命線だ。血管壁は本来、やわらかくて弾力性があるもの。しかし、年齢が上がるにつれ老化して厚く・硬くなっていく。

 血管が老化しているかどうかを知るにはどうしたらいいだろう? 
いちばん身近な指標が「血圧」である。血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことをいう。診察室での収縮期血圧(最大血圧)が縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、 あるいは両方が 140/90mmHg 以上であれば、「高血圧」と診断される。

 しかし、高血圧というと男性や高齢者の病気で、自分には関係ないと思い込んでいないだろうか。

 まず、年代別の高血圧の割合でみると、女性は40歳代ぐらいまでは、血圧が基準値を超えることはそう多くはない。ところが、血圧が少し高め(130~139/85~89mmHg)の予備群も含めると、女性で高血圧の人は、40代では4人に1人、50代になると2人に1人に増えていく(平成25年国民健康・栄養調査)。

 医師の宮尾益理子さんは「私は普段20代から90代まで幅広い年代の患者さんを診ていますが、女性の場合、もともと血圧が低めの方が多いのですが、40代後半の更年期頃から血圧が高くなり、正常血圧を超えてくる方も少なくありません。眼科や整形外科などに他の病気で受診した際にたまたま測定した血圧が高く、初めて内科を受診する高血圧の“フレッシュケース”の患者さんがとても多いです」と話す。

 ※1:https://www.omron.com/jp/ja/news/2017/05/img/h0511.pdf

なぜ更年期以降、女性の高血圧が増える!?

 宮尾さんによると、更年期女性の血圧を上昇させる主な要因として、1.加齢、2.エストロゲンの低下、3.ストレスや睡眠不足などによる交感神経の緊張、4.更年期以降の体重増加、5.家族歴(遺伝的な体質)などが挙げられる。

 「血管の老化という加齢変化に加え、閉経で血管のしなやかさを守り、血管抵抗を下げる働きをしてきたエストロゲンが激減することも関与して、血圧の上昇を招くのです。また、エストロゲンの低下により体内の脂肪分布も変わり、内臓脂肪が増えやすくなります。血圧を上げるような要素がいくつも積み上がって、血圧が上がってくるということです」

 更年期には、自律神経のバランスも崩れやすくなるが、そのことも血圧変動の原因になるという。

 「交感神経が刺激されると、心拍数が増えたり血管が収縮したりするために血圧の上昇が起こります。例えば、ストレスや睡眠不足は交感神経を刺激する大きな要因に。更年期世代は、仕事では責任ある役職に就く年代でもあるし、子どもの巣立ちや夫婦関係、親の介護など人生のさまざまな出来事が加わります。さらに自分の更年期症状にも悩まされ、小さなものから大きなものまでストレスが増えてくる年代です。そうした精神的な不安定さや身体症状に対する不安感の積み重ねも、血圧を上げていきますね」

 睡眠時間が6時間未満だと、高血圧の発症率が上がるというデータもある。
「日本女性は世界的に見ても、睡眠時間が少ないことで知られています。シフトワーカーの方など、生活が不規則な方も血圧が上がりやすいです」

更年期高血圧の特徴は「不安定さ」

 更年期の高血圧の特徴は、血圧が不安定で変動しやすいことだ。健康診断では正常値でも、不安やストレスをきっかけに血圧がポーンと高くなる人、たまたま受けた検査で高血圧を指摘された人、「早朝高血圧」といって朝だけ血圧が高くなる人もいる。

 また、最近の研究で更年期にホットフラッシュ(ほてり・発汗・のぼせ)の症状がある人は、血圧が高めになることがわかってきた( Kagitani, Kario, et al. Am J Hypertens 2013)。

 「更年期は閉経に向けて、女性ホルモンが乱高下しながら低下していく時期です。若い頃は生理前だけ調子が悪いなど体調の変化がはっきりしていたのに、ずっと調子が悪いままになったり。ホルモン分泌が不規則になっていくがゆえのストレスも抱えがちです。

 そうした慢性的にかかるストレスや小さなライフストレスが、血圧を乱高下させる要因になっている可能性があります。不安定な状態は、更年期を過ぎると次第に治まってきますが、その後本格的な高血圧へ移行していく人も多いので、油断は禁物です。私は血圧が低いから大丈夫という思い込みは捨てた方がいいですね」

 少し血圧が高くなったくらいでは自覚症状はないのがほとんど。血圧がかなり高くなると、頭痛やめまい、肩こりなど起きやすくなるが、これらは普段の生活でもよくある不調だったりするので判断しにくい。

 「健康診断でたまたま高血圧がわかったという人もいます。だからこそ、症状のあるなしにかかわらず、血圧の変化に関心を持ってほしい。自分の本当の血圧を知りたかったら、更年期をきっかけに家庭での血圧測定を習慣にするのもいいと思います。スポーツジムや、薬局などで血圧計を見かけたら、測ってみるのもおすすめです」

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【高血圧になりやすい人はどんな人? 】
該当数が多いほど要注意
□45歳以上
□更年期に入りホットフラッシュの症状が強い、または強かった
□体重が増えてきた
□BMI25以上
□あまり眠れていない
□タバコを吸っている
□ストレスが多いと感じる
□両親や、兄弟に高血圧の人がいる
※BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
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意外と知らない血圧の平常値

 更年期以降、気をつけたい血圧の変動。でもそもそも血圧っていつ測るの? どれくらいの正常値なの? と疑問を持つ人もいるはず。血管の老化度を知るためにも、正しい血圧の基準値や測り方を知っておこう。

 まず、血圧は一日中変動するもので、起床後や食事中は上がり、睡眠時には下がる。前述したようにストレスを感じた時には交感神経が刺激され、血圧が上がる。

 「仮面高血圧」といって、診察室で測った時は正常値だったのに、家庭では高血圧という人もいる。仮面高血圧は治療に結びつきにくいため、家庭血圧の計測が勧められている。

 「高血圧の測定値は、診察室血圧と家庭血圧とに分かれ、家庭測定値の方が低く設定されています。血圧は変動するため、家庭で毎日同じ時間に血圧を測り家庭血圧を記録しましょう。血圧管理アプリや血圧手帳を入手して、血圧の数値とともに、その日あった出来事(ストレス)なども記録しておくといいでしょう」と宮尾さん。

 意外と知られていないのが、正常血圧。収縮期血圧が120未満、拡張期血圧が80未満と結構低く設定されている。また、高血圧は3段階と細かく分類されている。

 高血圧が進んで動脈硬化になると、心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全など、また脳では、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害(脳卒中)や認知症になりやすくなる。

 【まとめ】
1)更年期はエストロゲンが減少し、血管のしなやかさが失われる時期に入る
2)更年期にはホルモンバランスの乱れから、自律神経のバランスが崩れやすくなる
3)睡眠時間6時間を切ると、高血圧の発症リスクが上昇
3)上がったり下がったりを繰り返すのが更年期高血圧の特徴
4)更年期は「高血圧の入り口」。血圧が低めだった人も意識しよう。できれば家庭での計測を取り入れて

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宮尾益理子さん
アットホーム表参道クリニック副院長 

専門は加齢医学、糖尿病。骨粗鬆症、動脈硬化、内分泌代謝学、性差医療・女性医療。2018年から現職。東京大学医学部附属病院老年病科内の女性総合外来に開設当初から携わり内科医としてホルモン補充療法など性差を考慮した診療を行う。その経験をもとに、更年期の女性に西洋医学から東洋医学、生活指導まで含めた幅広い治療を行なってきた。著書に『臨床医が知っておきたい 女性の診かたのエッセンス』(2007年 医学書院 総合診療ブック) などがある。
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 後編では、40代から始めたい血圧ケアや血圧測定のポイント、血圧に関する素朴な疑問について、宮尾医師に聞いたQ&Aをお届けする。

及川 夕子(ライター)
59歳女性殺害で長男逮捕 「母親を刺してしまった」
9/2(金) 17:09配信
フジテレビ系(FNN)

59歳の女性が殺害された事件で、警察は、自分の腹を刺し入院していた25歳の長男を逮捕した。

逮捕された会社員・石川慶容疑者(25)は8月、帰省していた静岡市の実家で、母親の真矢さん(59)を刃物で刺し、殺害した疑いが持たれている。

石川容疑者は、自らの腹を刺し意識不明となっていたが、その後回復したとして、警察は2日朝に逮捕した。

石川容疑者は搬送される際、「母親を刺してしまった」と話していて、警察は犯行のいきさつや動機について、追及することにしている。
「明け方に大声、カッとなりたたいた」 兵庫・姫路
9/2(金) 23:28配信
神戸新聞NEXT

 兵庫県警網干署は2日、同居する母親の頭を殴ったとして、暴行の疑いで同県姫路市の無職の男(58)を逮捕した。母親(82)は同日朝、自宅の和室で布団に入ったまま死亡しているのを男の父親である夫(87)が発見した。

 男の逮捕容疑は8月29日午前6時20分ごろ、自宅で母親の頭や顔を殴打した疑い。「認知症の傾向があり、明け方に大声を出したのでカッとなってたたいた」と容疑を認めている。

 同署によると、母親は夫と長男である男と3人で暮らしていた。夫は2日午前5時ごろに妻(男の母親)を起こそうとしたといい、「(妻は)既に冷たくなっていた」と話しているが、通報はしなかったという。

 夫は2日午前7時20分ごろに男に状況を伝え、様子を確認した男が119番した。母親の体には頭部以外にも複数のあざがあったといい、同署が詳しい状況を調べている。
年金14万円の高齢者「死ぬまで搾り取る気か!」…老人ホームの請求額に激昂
8/27(土) 11:01配信
幻冬舎ゴールドオンライン

生活に制限が多くなってくる老後。少しでも快適に過ごすため、家族に迷惑をかけたくないから、体が思うように動かなくなってきた……さまざまな理由から「老人ホーム」を検討する人は少なくありません。最近は、さまざまな特徴をもった施設が誕生しているため、比較・検討して選ぶことが重要です。しかし、それでも入居後のトラブルは後を絶たないようで……みていきましょう。

毎月の利用料を払えずに…老人ホームを退所する高齢者たち
厚生労働省『令和3年簡易生命表』によると、2021年の日本人の平均寿命は女性が87.57歳、男性が81.47歳でした。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、2011年の東日本大震災の時以来、平均寿命は短くなったものの、日本が世界有数の長寿国であることには変わりありません。

また、「0歳における平均余命」のことである平均寿命に対し、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを指す、健康寿命という考え方があります。健康寿命は、日本では3年ごとに発表されていて、最新は2019年の値。女性は75.38歳、男性は72.68歳です。

平均寿命と健康寿命の差は、単純計算ですが、男性は8.79年、女性にいたっては12.19年。この間、何かしら健康の支障を抱えながら生活をしていくことになります。

【日本の「平均寿命と健康寿命」の推移】

2001年:「男性」78.07歳/69.40歳、「女性」84.93歳/72.65歳

2004年:「男性」78.64歳/69.47歳、「女性」85.59歳/72.69歳

2007年:「男性」79.19歳/70.33歳、「女性」85.99歳/72.36歳

2010年:「男性」79.55歳/70.42歳、「女性」86.30歳/73.62歳

2013年:「男性」80.21歳/71.19歳、「女性」86.61歳/74.21歳

2016年:「男性」80.98歳/72.14歳、「女性」87.41歳/74.79歳

2019年:「男性」81.41歳/72.68歳、「女性」87.45歳/75.38歳

出所:厚生労働省

※数値左:平均寿命、右:健康寿命

どれほどの制限となるかは、人それぞれであり、まわりに頼れる人がいるかどうかなども関係してくるでしょう。ただ日常生活が困難になってくると、介護、さらには老人ホームへの入居が選択肢になります。

最近は健康なうちから入居するタイプの施設も増えたことで、自ら時間をかけて老人ホームを探す人も多いようです。もちろん、なにかしらの理由で体の動きに制限がある場合、家族が代わりに探すこととなります。また、「老後のことなんて、ずっと先のこと」と思っていたら、親の入居のことを考えなければならず、あたふた……そのようなことも多いようなので、たとえ「自分はまだ若い」と思っていても、他人事ではありません。

自分が探すにしろ、家族が探すにしろ、最も気にかかることのひとつが費用。どんなに入居者本人に適した施設であっても、予算オーバーであれば意味がありません。

苦労して入居先を見つけても…後を絶たないお金のトラブル
国税庁『民間給与実態統計調査』(令和2年分)によると、日本の給与所得者数は5,245万人、平均給与は433万円、月換算で36万円程度となります。人にもよりますが、手取りではおよそ27万円となります。年金は「手取り収入のおよそ5割」であるため、13~14万円が給付水準と考えられるでしょう。

厚生労働省年金局発表の『令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』から年金受給額の状況を見ていくと、公的年金被保険者数は、令和2年度末現在で6,756万人。前年度末と比べ6万人減少しているようです。

厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金が14万6,145円、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、5万6,358円となっている。費用のミスマッチを減らし、年金だけで老人ホームへの入居を考えるなら、このあたりが費用の目安となるでしょうか。

では、老人ホームへの入居を検討するにあたり見るべき費用はというと、「一時入居金」と「月額費用」でしょう。まず一時入居金は、終身利用する権利を取得する目的に対し支払うもの。償却期間内に退去した場合は返還金を受け取ることができます。金額は施設によってまちまちで、数十万円、数百万円というところから、0円、という施設まであります。

次に月額費用には、「家賃」「管理費」「食費」「介護保険サービスの自己負担分」など「個人で支払う費用」が含まれます。こちらもピンキリですが、10万~30万円程度の施設が多いようです。

「年金だけで施設に入居」という場合、元・会社員で厚生年金を受け取っている人であれば、多くの選択肢があります。しかし、国民年金だけという場合は、施設は限られるのが現状です。ただ生活保護を受けながらでも入居できる施設もあるので、可能性がないわけではありません。

そのようななか、仮に「予算内で納得のいく施設に入居できた」と思っても、老人ホームのお金にかかわるトラブルは後を絶たないといいます。なかでも利用料金のトラブルでありがちなのは、施設のパンフレットに書いてある月額費用と実際の請求額に差異があるケース。

パンフレットと金額が違うじゃないか!子どもに遺すつもりの貯蓄を切り崩すハメに
ーーパンフレットには月額12万円と書いてあったのに、20万円も請求なんて、どういうことだ!

時間をかけて吟味をして、ようやく予算に見合った入居先を見つけたと思ったら、パンフレットに書いてあった倍近くの費用を請求された、というケースも珍しくないようです。ただしこのケースでは、「月額費用に含まれる内容を正しく理解していない」という、利用者側の落ち度もあるそうです。

どのようなサービスが含まれているかは、当然ですが施設によってまちまち。パンフレットに記載されていた12万円はあくまでも家賃・管理費であって、食事は別契約、介護保険1割負担分は含まれてない、レクリエーション代は都度請求……。入居前にしっかりと確認しておけば避けられるトラブルが多いのです。

もっとも、なかには故意に詳細は伏せるような施設も散見されるよう。以前はこの手のトラブルが多く、景品表示法違反で排除命令がなされ、指導の徹底が呼びかけられたことがありました。現在、一般消費者が有料老人ホームを選択する時点において重要な判断要素となると考えられる、以下1~7の事項について、明瞭に記載されてなかったり、表示の内容が明らかにされていないものについては、不当表示と規定されています。



1.土地又は建物についての表示

2.施設又は設備についての表示

3.居室の利用についての表示

4.医療機関との協力関係についての表示

5.介護サービスについての表示

6.介護職員等の数についての表示

7.管理費等についての表示

つまり、これらの内容を理解せずに入居を決めるということは、自らトラブルを招いているといえます。これらを明快にしておけば、トラブルにあう確率は低くなるでしょう。
ド文系ライター、理系開眼! 独学でわかった「物理学は最高のエンターテインメント」
8/16(火) 7:17配信
現代ビジネス

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この世界の摂理を解明するのが物理であるなら、それを語る言語が数学である。もし無数の真理の一つにでも辿りつけるなら、世界が拓かれる感覚に浸ることが叶うのだ――
自他ともに認める「ド文系のおっさん」が、いやおうなく数学・物理の世界にぶち込まれて勉強するうちにその面白さにハマり、ついに上のようなカッコいいことを言えちゃうまでに成長してしまった! ヒトは独学でそんなに変われるものなのか? 体験者が語る、その醍醐味! 
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 「宇宙という書物は数学の言葉で書かれている」

 しばしばポピュラー・サイエンス系の本などで引用される、ガリレオ・ガリレイの有名な言葉である。

 しかし、いまでこそシタリ顔で「有名な言葉」などと紹介してはいるものの、私は45歳になるまでこの言葉を見聞きしたことがなかった。数学も物理もきわめて苦手な「ド文系」を自認する私は、そういう類(たぐい)の本をほとんど読んだことがなかったからだ。

 ガリレオの言葉で昔から知っていたのは、超がつくほど有名な「それでも地球は動く」だけである(しかも「ガリレオはそんなこと言っていない」という説もあるので、私はガリレオの言葉を何ひとつ知らなかったのかもしれない)。

文系ライター、理系の魅力に踏み込む
「物理学なんて、何が面白いのかさっぱりわからない」と言っていた著者の書棚は理系の書籍が増え続け、いまやこの通り

 そんな私が、45歳のときに、初めてポピュラー・サイエンス方面の仕事に携わることになった。2009年のことだ。日本を代表する理論物理学者、村山 斉(ひとし)先生の『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)の編集をお手伝いしたのである。

 「なんで私にこの仕事を?」と怪訝(けげん)に思ったが、担当の女性編集者Kさんは、何も知らないド文系人間が関わったほうが、サイエンスライターに任せるよりもわかりやすくなると考えたらしい。

 そのとき村山先生から教わったのが、冒頭の名言だ。もしこれを十代の頃に教わっていたら、私は数学や物理の勉強を放り出すことなく、理系の道に進んでいたかもしれない。

 というのも、高校時代の私は、そもそも物理学が宇宙の謎を解き明かそうとする学問だなんて知らなかった。斜面を転がるボールの加速度(ただし摩擦力は無視する)だの、滑車や振り子の働きだの、作用と反作用だのと言われても、そんなことの何が面白いのかさっぱりわからない。きっと機械を設計する人なんかには役に立つお勉強なんだろうけどさぁ……ぐらいの認識である。

 実用的な知識という印象しか抱かなかったので、小学校の図画工作や中学校の技術家庭なども嫌いだった不器用な私は、物理にまったく学習意欲を持てなかった。

 当時はそんな言葉も知らなかったが、高校時代の私は、物理学をいわば「工学」的なものだと思い込んでいたのだろう。「科学技術」という言葉でいっしょくたに語られるせいで、サイエンスとテクノロジーを混同する人は多い。私もそのひとりだったわけだ。

 村山先生の企画も、Kさんから最初に聞かされた仮タイトルは『素粒子物理学入門』だったので、宇宙の話だとは微塵も思わなかった。なにしろド文系だから、そもそも素粒子と微粒子の区別もついていない。ミクロの技術で医薬品なんかをつくる「ナノなんちゃら」的な素材の話かしら……ぐらいの認識である。

 物を知らないにもほどがあるが、やはり実用的というか工学的というか産業的というかイノベーティブというか、とにかくモノヅクリ方面のテーマなのだろうと思い込んだのだった。

 ところが、である。手始めに村山先生の講演会を聞きに行ったら、いきなり宇宙の話が始まるじゃありませんか。何かの間違いではないかと思って、ひどく狼狽(ろうばい)したものだ。

 それでもともかくお話を拝聴していると、これがめっぽう面白い。素粒子とは、物質の基本単位のことである。原子を構成する陽子や中性子よりもはるかに小さいから、「ナノなんちゃら」どころの騒ぎではない。ナノメートルは10のマイナス9乗メートルだが、現時点でいちばん小さいと考えられているクォークという素粒子は大きく見積もっても10のマイナス19乗メートルというオーダーだという。

 私の身長と東京スカイツリーの高さだって二桁しか違わないのに、ナノなんちゃらと素粒子は10桁もサイズが違うのだ。そういう物質の根源を探るのが、素粒子物理学なのだった。イノベーションとは、とりあえずまったく関係ない。

起源の問いかけはエンターテインメント

 その素粒子物理学がどうして宇宙と関係するのかといえば、ビッグバンで誕生した宇宙がどんどん膨張している(つまり宇宙には「始まり」があった)からだ。

 ずっと膨張し続けているのだから、生まれた当初はものすごく小さかったはずである。この世にそれより大きいものが存在しないのが宇宙だが、誕生の瞬間は、それはもう「無」に限りなく近いほど小さかった。これはまさに素粒子の世界である。そんなわけだから、宇宙も物質もその根源は素粒子なのだ。

 何であれ、物事の起源や根源はわれわれの好奇心を刺激せずにはおかない。この地球は、その地球に存在する生物は、その生物の一種であるわれわれ人類は、いつ、どのようにして生まれたのか。それを知ってどうするのかよくわからないが、とにかく起源を知りたくて知りたくてたまらないのが人情というものだ。

 そして、あらゆる「起源への問い」は宇宙の始まりに行き着く。宇宙が始まらなければ、何も始まらない。その宇宙の成り立ちを解明せんとする物理学は、われわれ人類という知的生命体にとって、究極の知的好奇心を満たす学問と言えるだろう。この謎を追究しなければ、知的生命体として生まれた甲斐がない。

 ならばそれは、いわば人類にとって最高のエンターテインメントではあるまいか。

 村山先生の本がベストセラーになったこともあって、私はそれ以降も相対論とか量子論とかインフレーション理論とか暗黒物質とか超弦理論とかニュートリノとか加速器実験とか原始重力波とかを取り上げる物理学の入門書を次々と手がけたが、どれも「このセカイはそんなふうにできている(かもしれない)のか!」と、心底からコーフンできる一級品の娯楽だった。

理系を敬遠しなければ……
 そうやって感動する一方で、私は失われた「理系の青春」を大いに悔やんだ。何だよ、物理ってこんなに刺激的なものだったのかよ。だったら、最初からそう言ってくれよ。そうと知っていたら、俺だって高校の物理にもっと真面目に取り組んだよ。宇宙を読み解くのに欠かせぬ言葉だとわかっていたら、数学だって面白がって勉強したと思うぞ。

 さまざまな仕事を通じて物理学に対する理解はそれなりに深まったものの、一般向けの入門書は「数式ナシの説明」がお約束だ。専門家がかみくだいてタテガキの日本語に変換してくれた説明だけだから、宇宙がどんな「数学の言葉」で書かれているのかは、それだけではまったくわからない。じつに残念である。若い頃にもっと勉強しておけば、仕事で知り合った物理学者のみなさんとも数式を見ながらより深い対話が楽しめたはずなのだ。

 しかし考えてみると、勉強するのはいまからでも遅くはない。無論、いまさら大学の理学部を受験して物理学者を目指すのは無理だ。社会人の独学といえば、ふつうはキャリア形成や資格取得やスキルアップといった自己研鑽(およびその結果としての出世や成功)を目的にするのだろうが、私が物理や数学を勉強したところで、そんな御利益が得られるわけがない。

 でも、たとえば音楽は聴くだけでも楽しいけれど、ちょっと自分で楽器を習ってプレーヤーの真似事をしてみると、ミュージシャンにはなれないまでも、プロの凄さがわかるようになる。すると、聴くのがより楽しくなるわけだ。物理学というエンターテインメントをより深く味わうには、真似事レベルで「数学の言葉」を学んでみるのも一興だろう。

 そう思い立った私は、2015年、51歳のときに、「アインシュタインの一般相対性理論を数式で理解してやろうじゃないか」という突拍子もない挑戦を始めた。その6年に及ぶ苦闘を体験型ドキュメンタリーとして書き下ろしたのが、2021年5月に上梓した『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた~ガチンコ相対性理論』(講談社ブルーバックス)である。

 広義の「入門書」ではあるが、入門するのは読者ではなく著者。しかも、理系本の権威として知られるあのブルーバックスの中でもあまり見られない分量の数式の嵐。自分で言うのも何だが、かなりイカレた奇書だと思う。

理系独学の深みにはまる醍醐味

 さすがにド文系のおっさんがひとりで勉強するのは不可能なので、仕事で知り合った高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室の「しょーた君」こと高橋将太さん(「高」は「はしごだか」)にガイド役をお願いして、ふたりで取り組んだ。

 とはいえ、微積分や線形代数(ベクトルと行列)などの基本から全部いちいち教わるわけにもいかないので、自分でアレコレ教科書を探して独習した部分もかなりある。アインシュタイン本人さえ苦労して勉強したリーマン幾何学などの超高度な数学を駆使している相対性理論を学ぶのに、「微分って何?」から始めるあたり、無理・無茶・無謀の三無主義としか言いようがない。

 でも、わからないことがあるたびに教科書を物色して手に入れ、書棚がどんどん理系色に染まっていくのは、それだけでうれしかった。楽器を習い始めた初心者が、まったく弾けないピカピカのギターを部屋に飾ってニマニマするような感じでしょうか。

 何年かすると「相対性理論」と書かれた背表紙は見飽きてしまったが(そういう本だけで10冊ぐらいある)、勉強を進めるにつれて『弾性体と流体』みたいなマニアックなアイテムが追加されていくと、「ああ、俺はとうとうこんなものにまで手を出してしまったのか……」と、ディープな世界にズブズブと踏み込んでいく自分にウットリするのだった。独学のヨロコビここにあり、だ。新しい風景は、人生をリフレッシュしてくれる。

 もちろん、通常業務も忙しいので、勉強時間はなかなかつくれない。あまり間が空くと前に勉強した内容を忘れてしまい、「三コマ戻ってやり直し」みたいなことにもなるから大変だ。しかし忙しい中でやっているからこそ、ポッカリと2~3週間ほど暇になり、「しばらくは相対論の勉強だけしていればいい!」という状況になったときの解放感は格別だった。勉強は自由の象徴でもある。

 当然ながら(と言っては入門書の著者として無責任かもしれないが)、最後までわからないこともたくさんあった。なにしろアインシュタイン方程式を読むためには、その前提として、測地線方程式、オイラー=ラグランジュ方程式、ポアソン方程式といった見たことも聞いたこともない別の方程式を読まなければならなかったりする。

 そんな方程式地獄をズタボロになりながら突破した先にあるのが、アインシュタイン方程式なのだ。いや、まあ、突破できずに迂回したところも多々あるわけですが。

 それに加えて、ニュートン力学はもちろん、電磁気学だの解析力学だの流体力学だの、基礎知識として踏まえておかなければならない物理学の分野も多岐にわたる。なるほど理系の学問は基本からの積み重ねが大切なのだな、と、身をもって痛感させられた。やはり本当は高校生ぐらいから始めるべきなのだ。

 しかし、高校時代にその道から離脱して以来、ほぼ40年ぶりに「数学の言葉」と戯れ、式変形をくり返しながら両辺を等号でつないでいく作業は楽しかった。かの有名な特殊相対性理論の式「E=mc2」や、アインシュタイン方程式の右辺に出てくる係数を導出する計算では、血湧き肉躍るような激情が噴出したものだ。

 ギター初心者が、大好きなミュージシャンの有名なソロ(たとえばイーグルス〈ホテル・カリフォルニア〉のアレとか)を完コピできたときのような感動がそこにはあった。やはり、勉強はエンターテインメントなのである。

役に立ちそうもないものの価値
 「数学なんて、社会に出てから何の役にも立たないでしょ」――数学を勉強したくない中高生がよく口にする紋切り型だ。いや、中高生だけではない。大阪方面で首長を歴任した元タレント弁護士が「三角関数なんて大人になってから使ったことがない(だから全員に教える必要はない)」という趣旨の発言をして物議を醸(かも)したこともあった。

 それが多くの人にとって「役に立たない」「使わない」という指摘は、決して間違ってはいないだろう。三角関数や微積分を知らなくても、生きていくのにそんなに困ることはない。

 だが、役に立つかどうかだけで勉強の意味を語るのは野暮というものだ。一般的に、勉強と遊びは水と油、二律背反、トレードオフみたいな関係だと見なされており(遊んでばかりいないで勉強しなさい! )、生きていく上で役に立つのが勉強、面白いだけで役に立たないのが遊びということになっているわけだが、役に立たない遊びとしての勉強だってあり得る。そして、そのほうがはるかに楽しい。

 それに、「数学なんて社会で役に立たない」と嘯(うそぶ)き、キャリアアップみたいな現世利益につながる勉強にしか意味を見出せない人々は、基礎科学に対しても「それは何の役に立つの?」と聞きたがるのではないだろうか。

 ヒッグス粒子やニュートリノ質量や重力波など「何だかよくワカラナイもの」の発見がノーベル物理学賞を受賞すると、必ず「それ、何の役に立つんだよ」と冷笑的に問いかける者が現れる。やはりサイエンスとテクノロジーを混同しているのだろうが、これは、ノーベル文学賞の受賞者に「あなたの作品は何の役に立つのか」と問うのと同じぐらい意味がない。

 よく引き合いに出される話だが、マクスウェルの電磁気学でその存在が予言されていた電磁波を1888年に発見したヘルツは、実験に立ち会った学生に「これは今後、何の役に立つのですか?」と問われて、こう答えたという。

 「たぶん何もない。これは単にマクスウェル先生が正しかったことを証明しただけの実験だ」

 世紀の大発見をした物理学者は、現世利益になどまったく関心がなかったわけだ。

 いまや人類は電磁波なしで暮らせないほどそれを役立てているが、それは結果論。いまの日本社会には、「選択と集中」と称して役に立ちそうな研究にばかり資金を投入する傾向があるが、そんな当たり馬券だけ欲しがるようなやり方では、電磁波は発見されなかったかもしれない。

 ちなみにアインシュタインの一般相対性理論も、いまはGPSの精度を高めるのに役立っている。相対論に基づく計算によって時間のズレを補正しないと、地図の距離が一日に12キロメートルぐらいズレてしまうそうだ。

 しかし、もちろんアインシュタインはそんなお役立ちのために理論を考えたわけではない。相対論を生んだのは、「光や重力の本質は何なんだ?」という好奇心である。そういうサイエンスを(どうせ何の役にも立たないだろうと承知の上で)山ほど積み重ねていると、何かの拍子にそれがテクノロジーと結びついてイノベーションが起こるわけだ。

文系ライターの果てしない理系探究

 そういえば、私の無謀な勉強も、結果的にひとつだけ役に立ちそうなスキルを私に与えてくれた。というのも、ライターとしてふだん使っているふつうのテキストエディターでは、数式をまともに書くことができない。そこで必要になるのが「LaTeX(ラテフ)」なる電子組版のソフトウェアだ。理工系の研究者たちも、ほとんどがそれで論文を書いている。

 私も今回、その使い方を懸命に習得して、数式まみれの原稿を仕上げた。決められたコマンドをタイプして変換すると、複雑な数式記号がきれいに出てくる。なかなか面白い。プロの研究者と同じツールを使って仕事をしているのがうれしくて、つくった数式画像をフェイスブックに投稿し、「こんなのできるんだぜ~」と自慢したことも一度や二度ではなかった。

 ここでも別の意味で「数学の言葉」を身につけたようなものだ。おかげで仕事の幅が少し広がった。LaTeXを使える文系ライターは稀少だろう。今後、数式含みの原稿がご入り用の際は、どしどし私にご用命ください! 

 ともあれ、役に立ちそうもない基礎科学から大きな技術革新がスピンアウトすることもあるのと同様、ただの遊びとして始めた勉強が思ってもみないところで役に立つこともある。強い目的意識を持って「今後のキャリア形成には何が役に立つか」「自分には何のスキルが必要か」などと勉強のテーマを選ぶのもいいけれど、とりあえず「これ面白そう」と好奇心の赴くままに勉強を始めるのも悪くない。

 最後に、拙著に寄せられた寸評を紹介しよう。かつて村山先生の企画を私に持ちかけ、この分野に足を踏み入れるきっかけをつくってくれたKさんの言葉だ。

 「なんとも酔狂な本だよね(笑)」

 まったく正しい。伊達や酔狂で独学を遊ぶ人々が増えることが、サイエンスのさらなる発展につながると私は信じている。

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その「酔狂な本」がこちら! 
アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた――ガチンコ相対性理論
オレだって数式が読めるかっこいい男になりたい! 
微積分も知らずに、男(50代・文系)は数式世界の最高峰「アインシュタイン方程式」をめざし旅立った。予定調和なしの決死行を見守りながら相対性理論の「真髄」を体感できる、(おそらく)世界初の数式ドキュメンタリーここに誕生! 
ここだけの話、数式は飛ばして文章と絵だけでも楽しめます
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 物理・数学を独学した深川さんのほかにも、英語、ビジネス、美術、読書にノート術、漫画、冒険まで、多彩なテーマについて各界屈指の独学者たちが、さまざまな独学のスタイルを考え、学びの魅力と意味を探る『独学の教室』(集英社インターナショナル新書)は好評発売中! 

深川 峻太郎(フリーライター)