50代女性の2人に1人!「元低血圧」でも要注意の「更年期の高血圧」の実態
8/31(水) 7:03配信
現代ビジネス
低血圧だったのに!? まさか自分が高血圧!?
「健康診断で、高血圧と言われ驚愕。ずっと低血圧だと思っていたのに」(54歳)
「ジムで運動前に血圧計で測定したら、上が160、下が92。毎回それぐらいの数値で。トレーナーに血圧が高いと指摘されても、まさかと思っていた」(56歳)
「頭痛とめまいで病院を受診したら、高血圧と言われてショックだった」(53歳)
更年期世代になって、高血圧症状が出て「まさか私が!?」「ずっと低血圧だったのに」とショックを受ける女性たちは少なくない。
歳を重ねれば、誰もが迎える「更年期」。この時期には、卵巣ホルモンであるエストロゲンの分泌が不安定になることから、さまざまな不定愁訴が現れることが知られている。代表的な症状は、ホットフラッシュ(ほてりや発汗)やだるさ・疲れやすさ、イライラなど。ほかにも、めまい、動悸、手足の冷え、肩こり、記憶力の低下、落ち込みなど症状は多岐にわたる。
症状の出方は個人差が大きく、つらい症状に悩まされる人もいれば、楽に過ごすことができる人もいる。生活に支障をきたすほどの症状は「更年期障害」といって、治療の対象にもなる。
最近になって、こうした更年期特有の症状はよく知られるようになった。一方で意外と知られていないのが、閉経後に変わる体のことだ。例えば、「血圧」や「LDLコレステロール」といった健康数値の変動に注意を向ける人はまだまだ少ない。
特に「血圧」については、更年期に入って突然血圧が上がってくる人、めまいや頭痛などの症状と併せて血圧が上がる人、イライラや睡眠不足のストレスで一時的に血圧が上がる人など、血圧が不安定になる人が増えてくる。女性はもともと血圧が低めの人が多いため「気にしない」と放置してしまう人もいる。たまたまだろう…と見過ごしてしまうと、動脈硬化や心不全、脳梗塞といった重大な病気のリスクにつながるので注意が必要だ。
血圧がもともと低めだった人が、更年期に注意すべきポイントとは? 油断しがちな更年期血圧の特徴や血圧によい生活について、医療ライターの及川夕子さんが性差医学や女性医療を専門とする医師の宮尾益理子さんに伺った。
「高血圧」は男性だけじゃない
何を食べたら健康になれるか、肌にはどんな化粧品がいいか。私たちは見た目や外から与えるものに目が行きがちだ。でも本当は、体の中で起きている変化を見逃さないことが大切。全身の細胞へ酸素や栄養を届ける「血管」は、美と健康の生命線だ。血管壁は本来、やわらかくて弾力性があるもの。しかし、年齢が上がるにつれ老化して厚く・硬くなっていく。
血管が老化しているかどうかを知るにはどうしたらいいだろう?
いちばん身近な指標が「血圧」である。血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことをいう。診察室での収縮期血圧(最大血圧)が縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、 あるいは両方が 140/90mmHg 以上であれば、「高血圧」と診断される。
しかし、高血圧というと男性や高齢者の病気で、自分には関係ないと思い込んでいないだろうか。
まず、年代別の高血圧の割合でみると、女性は40歳代ぐらいまでは、血圧が基準値を超えることはそう多くはない。ところが、血圧が少し高め(130~139/85~89mmHg)の予備群も含めると、女性で高血圧の人は、40代では4人に1人、50代になると2人に1人に増えていく(平成25年国民健康・栄養調査)。
医師の宮尾益理子さんは「私は普段20代から90代まで幅広い年代の患者さんを診ていますが、女性の場合、もともと血圧が低めの方が多いのですが、40代後半の更年期頃から血圧が高くなり、正常血圧を超えてくる方も少なくありません。眼科や整形外科などに他の病気で受診した際にたまたま測定した血圧が高く、初めて内科を受診する高血圧の“フレッシュケース”の患者さんがとても多いです」と話す。
※1:https://www.omron.com/jp/ja/news/2017/05/img/h0511.pdf
なぜ更年期以降、女性の高血圧が増える!?
宮尾さんによると、更年期女性の血圧を上昇させる主な要因として、1.加齢、2.エストロゲンの低下、3.ストレスや睡眠不足などによる交感神経の緊張、4.更年期以降の体重増加、5.家族歴(遺伝的な体質)などが挙げられる。
「血管の老化という加齢変化に加え、閉経で血管のしなやかさを守り、血管抵抗を下げる働きをしてきたエストロゲンが激減することも関与して、血圧の上昇を招くのです。また、エストロゲンの低下により体内の脂肪分布も変わり、内臓脂肪が増えやすくなります。血圧を上げるような要素がいくつも積み上がって、血圧が上がってくるということです」
更年期には、自律神経のバランスも崩れやすくなるが、そのことも血圧変動の原因になるという。
「交感神経が刺激されると、心拍数が増えたり血管が収縮したりするために血圧の上昇が起こります。例えば、ストレスや睡眠不足は交感神経を刺激する大きな要因に。更年期世代は、仕事では責任ある役職に就く年代でもあるし、子どもの巣立ちや夫婦関係、親の介護など人生のさまざまな出来事が加わります。さらに自分の更年期症状にも悩まされ、小さなものから大きなものまでストレスが増えてくる年代です。そうした精神的な不安定さや身体症状に対する不安感の積み重ねも、血圧を上げていきますね」
睡眠時間が6時間未満だと、高血圧の発症率が上がるというデータもある。
「日本女性は世界的に見ても、睡眠時間が少ないことで知られています。シフトワーカーの方など、生活が不規則な方も血圧が上がりやすいです」
更年期高血圧の特徴は「不安定さ」
更年期の高血圧の特徴は、血圧が不安定で変動しやすいことだ。健康診断では正常値でも、不安やストレスをきっかけに血圧がポーンと高くなる人、たまたま受けた検査で高血圧を指摘された人、「早朝高血圧」といって朝だけ血圧が高くなる人もいる。
また、最近の研究で更年期にホットフラッシュ(ほてり・発汗・のぼせ)の症状がある人は、血圧が高めになることがわかってきた( Kagitani, Kario, et al. Am J Hypertens 2013)。
「更年期は閉経に向けて、女性ホルモンが乱高下しながら低下していく時期です。若い頃は生理前だけ調子が悪いなど体調の変化がはっきりしていたのに、ずっと調子が悪いままになったり。ホルモン分泌が不規則になっていくがゆえのストレスも抱えがちです。
そうした慢性的にかかるストレスや小さなライフストレスが、血圧を乱高下させる要因になっている可能性があります。不安定な状態は、更年期を過ぎると次第に治まってきますが、その後本格的な高血圧へ移行していく人も多いので、油断は禁物です。私は血圧が低いから大丈夫という思い込みは捨てた方がいいですね」
少し血圧が高くなったくらいでは自覚症状はないのがほとんど。血圧がかなり高くなると、頭痛やめまい、肩こりなど起きやすくなるが、これらは普段の生活でもよくある不調だったりするので判断しにくい。
「健康診断でたまたま高血圧がわかったという人もいます。だからこそ、症状のあるなしにかかわらず、血圧の変化に関心を持ってほしい。自分の本当の血圧を知りたかったら、更年期をきっかけに家庭での血圧測定を習慣にするのもいいと思います。スポーツジムや、薬局などで血圧計を見かけたら、測ってみるのもおすすめです」
----------
【高血圧になりやすい人はどんな人? 】
該当数が多いほど要注意
□45歳以上
□更年期に入りホットフラッシュの症状が強い、または強かった
□体重が増えてきた
□BMI25以上
□あまり眠れていない
□タバコを吸っている
□ストレスが多いと感じる
□両親や、兄弟に高血圧の人がいる
※BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
----------
意外と知らない血圧の平常値
更年期以降、気をつけたい血圧の変動。でもそもそも血圧っていつ測るの? どれくらいの正常値なの? と疑問を持つ人もいるはず。血管の老化度を知るためにも、正しい血圧の基準値や測り方を知っておこう。
まず、血圧は一日中変動するもので、起床後や食事中は上がり、睡眠時には下がる。前述したようにストレスを感じた時には交感神経が刺激され、血圧が上がる。
「仮面高血圧」といって、診察室で測った時は正常値だったのに、家庭では高血圧という人もいる。仮面高血圧は治療に結びつきにくいため、家庭血圧の計測が勧められている。
「高血圧の測定値は、診察室血圧と家庭血圧とに分かれ、家庭測定値の方が低く設定されています。血圧は変動するため、家庭で毎日同じ時間に血圧を測り家庭血圧を記録しましょう。血圧管理アプリや血圧手帳を入手して、血圧の数値とともに、その日あった出来事(ストレス)なども記録しておくといいでしょう」と宮尾さん。
意外と知られていないのが、正常血圧。収縮期血圧が120未満、拡張期血圧が80未満と結構低く設定されている。また、高血圧は3段階と細かく分類されている。
高血圧が進んで動脈硬化になると、心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全など、また脳では、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害(脳卒中)や認知症になりやすくなる。
【まとめ】
1)更年期はエストロゲンが減少し、血管のしなやかさが失われる時期に入る
2)更年期にはホルモンバランスの乱れから、自律神経のバランスが崩れやすくなる
3)睡眠時間6時間を切ると、高血圧の発症リスクが上昇
3)上がったり下がったりを繰り返すのが更年期高血圧の特徴
4)更年期は「高血圧の入り口」。血圧が低めだった人も意識しよう。できれば家庭での計測を取り入れて
----------
宮尾益理子さん
アットホーム表参道クリニック副院長
専門は加齢医学、糖尿病。骨粗鬆症、動脈硬化、内分泌代謝学、性差医療・女性医療。2018年から現職。東京大学医学部附属病院老年病科内の女性総合外来に開設当初から携わり内科医としてホルモン補充療法など性差を考慮した診療を行う。その経験をもとに、更年期の女性に西洋医学から東洋医学、生活指導まで含めた幅広い治療を行なってきた。著書に『臨床医が知っておきたい 女性の診かたのエッセンス』(2007年 医学書院 総合診療ブック) などがある。
----------
後編では、40代から始めたい血圧ケアや血圧測定のポイント、血圧に関する素朴な疑問について、宮尾医師に聞いたQ&Aをお届けする。
及川 夕子(ライター)
8/31(水) 7:03配信
現代ビジネス
低血圧だったのに!? まさか自分が高血圧!?
「健康診断で、高血圧と言われ驚愕。ずっと低血圧だと思っていたのに」(54歳)
「ジムで運動前に血圧計で測定したら、上が160、下が92。毎回それぐらいの数値で。トレーナーに血圧が高いと指摘されても、まさかと思っていた」(56歳)
「頭痛とめまいで病院を受診したら、高血圧と言われてショックだった」(53歳)
更年期世代になって、高血圧症状が出て「まさか私が!?」「ずっと低血圧だったのに」とショックを受ける女性たちは少なくない。
歳を重ねれば、誰もが迎える「更年期」。この時期には、卵巣ホルモンであるエストロゲンの分泌が不安定になることから、さまざまな不定愁訴が現れることが知られている。代表的な症状は、ホットフラッシュ(ほてりや発汗)やだるさ・疲れやすさ、イライラなど。ほかにも、めまい、動悸、手足の冷え、肩こり、記憶力の低下、落ち込みなど症状は多岐にわたる。
症状の出方は個人差が大きく、つらい症状に悩まされる人もいれば、楽に過ごすことができる人もいる。生活に支障をきたすほどの症状は「更年期障害」といって、治療の対象にもなる。
最近になって、こうした更年期特有の症状はよく知られるようになった。一方で意外と知られていないのが、閉経後に変わる体のことだ。例えば、「血圧」や「LDLコレステロール」といった健康数値の変動に注意を向ける人はまだまだ少ない。
特に「血圧」については、更年期に入って突然血圧が上がってくる人、めまいや頭痛などの症状と併せて血圧が上がる人、イライラや睡眠不足のストレスで一時的に血圧が上がる人など、血圧が不安定になる人が増えてくる。女性はもともと血圧が低めの人が多いため「気にしない」と放置してしまう人もいる。たまたまだろう…と見過ごしてしまうと、動脈硬化や心不全、脳梗塞といった重大な病気のリスクにつながるので注意が必要だ。
血圧がもともと低めだった人が、更年期に注意すべきポイントとは? 油断しがちな更年期血圧の特徴や血圧によい生活について、医療ライターの及川夕子さんが性差医学や女性医療を専門とする医師の宮尾益理子さんに伺った。
「高血圧」は男性だけじゃない
何を食べたら健康になれるか、肌にはどんな化粧品がいいか。私たちは見た目や外から与えるものに目が行きがちだ。でも本当は、体の中で起きている変化を見逃さないことが大切。全身の細胞へ酸素や栄養を届ける「血管」は、美と健康の生命線だ。血管壁は本来、やわらかくて弾力性があるもの。しかし、年齢が上がるにつれ老化して厚く・硬くなっていく。
血管が老化しているかどうかを知るにはどうしたらいいだろう?
いちばん身近な指標が「血圧」である。血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことをいう。診察室での収縮期血圧(最大血圧)が縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、 あるいは両方が 140/90mmHg 以上であれば、「高血圧」と診断される。
しかし、高血圧というと男性や高齢者の病気で、自分には関係ないと思い込んでいないだろうか。
まず、年代別の高血圧の割合でみると、女性は40歳代ぐらいまでは、血圧が基準値を超えることはそう多くはない。ところが、血圧が少し高め(130~139/85~89mmHg)の予備群も含めると、女性で高血圧の人は、40代では4人に1人、50代になると2人に1人に増えていく(平成25年国民健康・栄養調査)。
医師の宮尾益理子さんは「私は普段20代から90代まで幅広い年代の患者さんを診ていますが、女性の場合、もともと血圧が低めの方が多いのですが、40代後半の更年期頃から血圧が高くなり、正常血圧を超えてくる方も少なくありません。眼科や整形外科などに他の病気で受診した際にたまたま測定した血圧が高く、初めて内科を受診する高血圧の“フレッシュケース”の患者さんがとても多いです」と話す。
※1:https://www.omron.com/jp/ja/news/2017/05/img/h0511.pdf
なぜ更年期以降、女性の高血圧が増える!?
宮尾さんによると、更年期女性の血圧を上昇させる主な要因として、1.加齢、2.エストロゲンの低下、3.ストレスや睡眠不足などによる交感神経の緊張、4.更年期以降の体重増加、5.家族歴(遺伝的な体質)などが挙げられる。
「血管の老化という加齢変化に加え、閉経で血管のしなやかさを守り、血管抵抗を下げる働きをしてきたエストロゲンが激減することも関与して、血圧の上昇を招くのです。また、エストロゲンの低下により体内の脂肪分布も変わり、内臓脂肪が増えやすくなります。血圧を上げるような要素がいくつも積み上がって、血圧が上がってくるということです」
更年期には、自律神経のバランスも崩れやすくなるが、そのことも血圧変動の原因になるという。
「交感神経が刺激されると、心拍数が増えたり血管が収縮したりするために血圧の上昇が起こります。例えば、ストレスや睡眠不足は交感神経を刺激する大きな要因に。更年期世代は、仕事では責任ある役職に就く年代でもあるし、子どもの巣立ちや夫婦関係、親の介護など人生のさまざまな出来事が加わります。さらに自分の更年期症状にも悩まされ、小さなものから大きなものまでストレスが増えてくる年代です。そうした精神的な不安定さや身体症状に対する不安感の積み重ねも、血圧を上げていきますね」
睡眠時間が6時間未満だと、高血圧の発症率が上がるというデータもある。
「日本女性は世界的に見ても、睡眠時間が少ないことで知られています。シフトワーカーの方など、生活が不規則な方も血圧が上がりやすいです」
更年期高血圧の特徴は「不安定さ」
更年期の高血圧の特徴は、血圧が不安定で変動しやすいことだ。健康診断では正常値でも、不安やストレスをきっかけに血圧がポーンと高くなる人、たまたま受けた検査で高血圧を指摘された人、「早朝高血圧」といって朝だけ血圧が高くなる人もいる。
また、最近の研究で更年期にホットフラッシュ(ほてり・発汗・のぼせ)の症状がある人は、血圧が高めになることがわかってきた( Kagitani, Kario, et al. Am J Hypertens 2013)。
「更年期は閉経に向けて、女性ホルモンが乱高下しながら低下していく時期です。若い頃は生理前だけ調子が悪いなど体調の変化がはっきりしていたのに、ずっと調子が悪いままになったり。ホルモン分泌が不規則になっていくがゆえのストレスも抱えがちです。
そうした慢性的にかかるストレスや小さなライフストレスが、血圧を乱高下させる要因になっている可能性があります。不安定な状態は、更年期を過ぎると次第に治まってきますが、その後本格的な高血圧へ移行していく人も多いので、油断は禁物です。私は血圧が低いから大丈夫という思い込みは捨てた方がいいですね」
少し血圧が高くなったくらいでは自覚症状はないのがほとんど。血圧がかなり高くなると、頭痛やめまい、肩こりなど起きやすくなるが、これらは普段の生活でもよくある不調だったりするので判断しにくい。
「健康診断でたまたま高血圧がわかったという人もいます。だからこそ、症状のあるなしにかかわらず、血圧の変化に関心を持ってほしい。自分の本当の血圧を知りたかったら、更年期をきっかけに家庭での血圧測定を習慣にするのもいいと思います。スポーツジムや、薬局などで血圧計を見かけたら、測ってみるのもおすすめです」
----------
【高血圧になりやすい人はどんな人? 】
該当数が多いほど要注意
□45歳以上
□更年期に入りホットフラッシュの症状が強い、または強かった
□体重が増えてきた
□BMI25以上
□あまり眠れていない
□タバコを吸っている
□ストレスが多いと感じる
□両親や、兄弟に高血圧の人がいる
※BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
----------
意外と知らない血圧の平常値
更年期以降、気をつけたい血圧の変動。でもそもそも血圧っていつ測るの? どれくらいの正常値なの? と疑問を持つ人もいるはず。血管の老化度を知るためにも、正しい血圧の基準値や測り方を知っておこう。
まず、血圧は一日中変動するもので、起床後や食事中は上がり、睡眠時には下がる。前述したようにストレスを感じた時には交感神経が刺激され、血圧が上がる。
「仮面高血圧」といって、診察室で測った時は正常値だったのに、家庭では高血圧という人もいる。仮面高血圧は治療に結びつきにくいため、家庭血圧の計測が勧められている。
「高血圧の測定値は、診察室血圧と家庭血圧とに分かれ、家庭測定値の方が低く設定されています。血圧は変動するため、家庭で毎日同じ時間に血圧を測り家庭血圧を記録しましょう。血圧管理アプリや血圧手帳を入手して、血圧の数値とともに、その日あった出来事(ストレス)なども記録しておくといいでしょう」と宮尾さん。
意外と知られていないのが、正常血圧。収縮期血圧が120未満、拡張期血圧が80未満と結構低く設定されている。また、高血圧は3段階と細かく分類されている。
高血圧が進んで動脈硬化になると、心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全など、また脳では、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害(脳卒中)や認知症になりやすくなる。
【まとめ】
1)更年期はエストロゲンが減少し、血管のしなやかさが失われる時期に入る
2)更年期にはホルモンバランスの乱れから、自律神経のバランスが崩れやすくなる
3)睡眠時間6時間を切ると、高血圧の発症リスクが上昇
3)上がったり下がったりを繰り返すのが更年期高血圧の特徴
4)更年期は「高血圧の入り口」。血圧が低めだった人も意識しよう。できれば家庭での計測を取り入れて
----------
宮尾益理子さん
アットホーム表参道クリニック副院長
専門は加齢医学、糖尿病。骨粗鬆症、動脈硬化、内分泌代謝学、性差医療・女性医療。2018年から現職。東京大学医学部附属病院老年病科内の女性総合外来に開設当初から携わり内科医としてホルモン補充療法など性差を考慮した診療を行う。その経験をもとに、更年期の女性に西洋医学から東洋医学、生活指導まで含めた幅広い治療を行なってきた。著書に『臨床医が知っておきたい 女性の診かたのエッセンス』(2007年 医学書院 総合診療ブック) などがある。
----------
後編では、40代から始めたい血圧ケアや血圧測定のポイント、血圧に関する素朴な疑問について、宮尾医師に聞いたQ&Aをお届けする。
及川 夕子(ライター)