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Global blog 〜世界の社窓から〜

アジア、東南アジアに積極展開するインターネットカンパニー
アドウェイズの海外社員ブログです。

インドネシアの経済は華人財閥によって支配されています。財閥或いはコングロマリット(多国籍企業)の形態で30以上の企業グループがあり、その中で民族系企業グループ(プリブミ)は僅か10社もありません。政治・軍関係はプリブミが支配し、経済関係はノン・プリブミ(華人財閥)が支配すると言った二重構造がインドネシアの特徴です。

では、インドネシアにはどんな財閥企業がいるのか。今年GLOBE ASIAから発表されたインドネシアの企業グループトップ10を見てみましょう。

図2



順位:グループ名 売上規模

1位:Astra International(アストラインターナショナル)$20.9 billion
2位:Salim Group(サリムグループ)$15.0 billion
3位:Sinar Mas Group(シナールマスグループ)$11.2 billion
4位:Wilmar International (ウィルマーインターナショナル)$8.7 billion
5位:Djarm Group(ジャルムグループ)$8.2 billion
6位:Philips Morris International(フィリップモリス)$6.7 billion
7位:Lippo Group(リッポーグループ)$5.7 billion
8位:Gudang Garam(グダンガラム)$4.9 billion
9位:Raja Garuda Mas(ラジャガルーダマス)$4.5 billion
10位:Bakrie Group(バクリーグループ)$4.1 billion


昨年と比較すると、バクリーグループの順位が7位から10位に落ちただけで、7位以下は一つずつ繰り上げになり、上位6位の順位に変動はありませんでした。それでは、ベスト5を簡単な解説入りでご紹介します。

1位:Astra International(アストラインターナショナル)
広東省からジャワに移民した華人のWilliam Soeryadjaya(ウイリアム・スリヤジャヤ)が1957年に興した貿易商アストラ社(現在のアストラインターナショナルの前身)に始まり。スハルト政権の新体制化の対外開放政策を背景に、1960年代末にトヨタ自動車の総代理店となり、1971年にはトヨタと合弁でPT. Toyota Astra Motor(トヨタアストラモーター社)を設立。アストラは事業を自動車関連事業だけでなく他の分野へも拡大しており、自動車産業、金融サービス、重機、アグリビジネス、情報技術(IT)、インフラ整備という6つの中核事業を有する。

2位:Salim Group(サリムグループ)

華僑のSudono Salim(スドノ・サリム)が一代で築き上げたグループ。スドノ・サリムはスハルトの莫大な政治資金を陰で賄ってきた一人であり、その見返りとして丁子(ちょうじ)の輸入独占権を獲得、さらには製粉、セメントに進出し事業を拡大した。金融への進出ではバンク・セントラル・アジア(BCA)を設立し、1996年には11事業部、売上223億ドル、傘下企業450社、従業員28万人の巨大グループであったが、アジア通貨危機でルピアが暴落したことにより、財政破綻に陥り事業は解体を余儀なくされた。現在では、香港証券取引所に上場するFirst Pacificをホールディングカンパニーとし、テレコミュニケーション事業、インフラ事業、食品事業、農業の4つに集約。特に食品はPT Indofood Sukses Makmur Tbk(インドフード社)は即席麺の市場の9割を占有している。最近では、トランスコスモスとコールセンター事業、オートバックスセブンとカー用品や部品の卸売事業を行う合弁企業を設立している。

3位:Sinar Mas Group(シナールマスグループ)
1923年生まれの福建省泉州出身華人Eka Tjipta Widjaya(エカ・チプタ・ウィジャヤ)が1970年にシナールマス社を設立し、一代でパームオイルやココナッツオイルなどの食用油、製紙、そして金融や保険などの事業も手がける大財閥を築き上げた。売上の多くを占めるのが、製紙事業で、Asia Pulp and Paper (APP)がシンガポールに本社を置き、インドネシア最大の製紙メーカーPT Pabrik Kertas Tjiwi Kimia Tbk とPT. Indah Kiat Pulp & Paper Tbkの二社の上場企業を統制している。食用油の事業は、こちらもシンガポールに本社を置いているGolden Agri-Resources Ltd. を使い、インドネシアパームオイル大手のPT. Sinar Mas Agro Resources and Technology Tbk(SMART)や中国の食用油事業を統制している。金融事業はPT. Bank Sinarmas Tbkという上場銀行を抱え、保険事業では三井住友海上火災保険とPT Asuransi Jiwa Sinarmas MSIGを合弁で設立し、2012年『Best Life Insurance Award (インドネシアで最も優れた生命保険会社)』を獲得している。

4位:Wilmar International (ウィルマーインターナショナル)
シンガポールに本社を置き、マレーシアの華人企業家Robert Kuok(ロバート・クォック)の甥Kuok Khoon Hong(クォック・クーンホン)とインドネシア企業家Martua Sitorus(マルトゥア・シトルス)が所有経営し、インドネシアのほか、中国やインドで農園・バイオ燃料・油脂加工業を展開する多国籍企業グループである。その規模13ヵ国450を越える農園、50ヵ国以上の供給先、93,000人を越える社員を抱え、パームオイルの生産では世界最大規模を誇っているが、森林破壊の問題にも直面している。

5位:Djarum Group(ジャルムグループ)
スマランで爆薬を製造販売していた華僑のOei Wie Gwanが、1951年にたばこ会社を購入し、PT Djarumを設立したのが始まり。息子のMichael Bambang Hartono(マイケル・バンバン・ハルトノ)とRobert Budi Hartono(ロバート・ブディ・ハルトノ)兄弟に引き継がれ、たばこ工場焼失などの苦難を乗り越え、ビジネスを拡大していく。2012年のニールセンの調査によると、たばこ市場においてPT. Djarum は20.2%のシェアを獲得し、最大手のPT. HM Sampoerna Tbkの31.1%に次いで2番目の数字を記録している。たばこ以外では、1997年の通貨危機後、当時サリムグループの一部であったインドネシア最大の民間銀行BCAが売りに出されたタイミングで、51%の株式を取得。また、ブディ・ハルトノの息子であるMartinはインターネット産業に注目しており、インドネシア最大の掲示板サイトKaskusへの出資、PT. Djarumの子会社であるPT Global Digital Primaでオンラインショッピングサイトblibli.comを立ち上げ、他にもテック系ニュースサイトDaily Social、スポーツニュースサイトのBolabob、ソーシャルメディアのMindtalkなど数々のネットサービスを支援している。


インドネシアでも上場企業であれば売上や株主構成などもちろん公開しているのですが、財閥グループにおいては、非常に複雑な企業形態をとっており、その実体を掴むのが非常に困難でした。上場していなければ、一般への開示義務はありませんし、国によって法律も違ってきます。

例えば、アストラインターナショナルの筆頭株主はJardine Cycle Carriage Ltdというシンガポールで自動車販売を行っている会社で、その持ち株シェアは50.11%です。さらにJardine Cycle Carriage Ltdの72.32%を香港にある親のJardine Strategicが所有しており、アストラインターナショナルは2013年フォーチュン500社の266位にランクインするJardine Mathesonグループの一員になります。このJardine Mathesonグループも非常に複雑で、秘密トラストと共同株主による複雑な株式持合い一族(ケズウィック家)で巨大企業グループを支配しています。Jardine StrategicもJardine Mathesonの株式55.15%を持つ持合構造なのです。

図1
各社アニュアルレポートより著者作成



そして、なんとそのJardine Mathesonグループは、世界最大の財閥企業ロスチャイルド家と繋がりがあると言われています。

ちょっとインドネシアの財閥の話から世界の財閥グループまで飛躍してしまいましたが、インドネシア経済を知る上で、財閥のことを知っておくということは非常に重要かと思います。なにせ経済を支配しているのですから。ただ、深く深く進んでいくと、あらゆる法律を掻い潜るために、お金持ちの世界はもの~凄く複雑になっているのです。


最近同じネット広告代理店業界の方から、
「最近ネット企業のインドネシア進出が多いけど、どこが一番強いのか?」
と質問を受けました。

ここ数年、多くの企業の方々がインドネシアに注目しており、親切な弊社アドウェイズは例え同業者であっても、ご訪問頂く企業様に惜しみなく情報提供させて頂いております(笑)。

先のご質問につきまして、「一番強いのはアドウェイズだ!」と言いたいところですがここは冷静に(笑)、そもそも圧倒的に勝っている企業はいるのでしょうか?何をもって勝つかにもよりますが、圧倒的に利益を出している日系ネット広告代理店は、インドネシアにいないことは確かです。

実際、撤退を余儀なくされた企業もいくつかあります。

しかし、着々とインドネシアに根を張り、今後来るであろうビックウェイブを今か今かと待ち受けている企業も存在します。本日はその一部と少しながら勝つためのヒントをご紹介します。


■PT. Microad Indonesia
日本でアドネットワーク事業を展開されているマイクロアドの子会社で、地元の有力企業Corfinaグループのとの合弁企業です。Corfinaグループは、マイクロアド以外にもネット企業を中心に、GMOインターネット、ネクスト、SBIホールディングス、リアルワールド、リッチメディア、サイバー・バズなど多くの日系企業と合弁を組み、インターネットコングロマリットを目指されています。

図1


HPを見てみると注力されている分野が分かりますが、マイクロアドではトップに出ているように、名だたる大企業のHP制作を行っています。

HIS、ベネッセ、サントリー、マンダムという有名日系企業もありますが、地元の化粧品大手マルタティラールグループの商品ページ制作も行っています。従業員規模で言うと、日系ネット広告代理店最大ではないでしょうか。


■PT Creative Visions Indonesia
@コスメで有名なアイスタイルの子会社です。

図2


しかし、HP見ると@コスメのアの字もコの字も無く、デジタルマーケティング全般を取り扱っていらっしゃいます。特に得意と噂なのが、会社ロゴの隣にあるGoogleの認定代理店マークでわかるように、SEMに非常に強いです。日本人社員の宇佐美君はブログで、Googleのツールを使って非常に興味深い分析を行って記事を書いており、私も大変参考にさせて頂いております。


マイクロアドもクリエイティブビジョンも、そして私が在籍するアドウェイズもそうですが、進出当初から日本本社のメイン事業にこだわらず、現地のニーズに合わせて事業展開を行っています。各社、本社と激しいバトルがあったどうかは知りません(笑)。うちはありません(念のためw)。

現在インドネシア企業のネットに対するニーズを挙げると、

・制作系(HPやfacebookページ、スマホアプリなど)
・インターネット広告(主にGoogleAdsとFacebookAds)
・ソーシャルメディアマーケティング

の大きく3分野です。マイクロアド、クリエイティブビジョン、アドウェイズ、それぞれこの3分野はカバーしていると思いますが、たまたま一番得意としている分野が分かれているように感じます。

ですが、今後はどうなるかは全く分かりません。アドウェイズは先月アフィリエイトサービス『SmartDriver』をローンチし、一気にアフィリエイトのマーケットを広げようとしています。マイクロアドも日本本社で拡大しているアドテク事業(MicroAd BLADE)がHP内に掲載されるようになりました。力を入れていくのでしょう。はたまた、他の新たな進出企業が台頭してくるかもしれません。


来年2014年、インドネシアのインターネット業界は大きなうねりを見せそうで、本当にワクワクしてきました!!!カモン、ビッグウェイブ!!!


うちも正直まだまだ勝っていると言い切れませんが、最後に『日経トップリーダー』に掲載されたアドウェイズグループ代表岡村の記事を転載させて下さい。

岡村陽久社長は、11年に高野CEOを単身ジャカルタに派遣。市場開拓のすべてを一任し、こう指示した。「当面、何をやって稼いでもいい。とにかく誰よりもインドネシア市場に詳しくなってくれ」。当時は、インドネシアに進出する日系のIT企業はほとんどいなかった。インターネットの普及率も今よりだいぶ低く、当然、アフィリエイト広告の概念など全く知られていなかった。それでも進出したのは、「現地にいなければ、いつチャンスが来るのかすら分からないから」(岡村社長)。

やはり勝ち残っていくためには「インドネシアを深く知り、インドネシアのためにビジネスを行う」これにつきると思います。それを突き詰めた企業が勝つのだと思います。

深く知るためにはインドネシアに住み、現地の人と話さなければなりません。高野の場合、インドネシアに進出した当初は、自ら企業が多く集まるイベントに参加しまくり、平日は毎日インドネシア人と会食していました。ガサツな性格のため、日本で言う夏野さんクラスの方に3度も名刺交換をしかけ「お前いつになったら俺の顔を覚えるんだ!お前と名刺交換するの3度目だぞ!(笑)」と怒鳴られたこともあったそうな…。
前回、アドウェイズがPC向けアフィリエイトサービス『JANet(ジャネット)』を日本で2003年にローンチさせてからちょうど10年の月日が経った2013年、インドネシアで『SmartDriver(スマートドライバー)』をローンチさせたと書かせて頂きました。

では、2000年代前半当時のアフィリエイト市場のどのような状況だったのでしょうか。その歴史の1ページを見てみましょう。

図1




スペースの関係上、プレイヤーを絞らせて頂きましたが、日本では、
①ECサイトができる
②メディアができる(比較サイト・ポイントサイト・ブログ)
③アフィリエイトができる
という流れを基本的には汲んでいます。バリュコマさんは凄く早めですが。

では、近年のインドネシアはどうでしょう。

図2


 

実はここ最近で、アフィリエイト市場にとって必要なもの、前述の
①ECサイトができる
②メディアができる(比較サイト・ポイントサイト・ブログ)
が急に出揃ってきたことがわかります。

比較サイトはPraceAreaをはじめ、いくつか既に出てきています。ポイントサイトは日系企業であるエキサイトさんとリアルワールドさんがいらっしゃいます。ブログはまだまだ未発達ですが、Googleが提供するブログサービス「Blogger」を使うアルファブロガーも少し登場し始めています。

図3


 

矢野総合研究所の調査によると、日本の2003年のアフィリエイト市場規模は35.9億円ですが、インドネシアの2013年が1億円もいかないことを考えると、正直あと2,3年は必要です。今のSmartDriverは1999年のValueCommerceさんのポジションか、それより少し早いぐらいの位置にいるかもしれませんが、できる限り早く怒涛のアフィリエイト成長期を迎えられるよう、努力したいと思います。