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Global blog 〜世界の社窓から〜

アジア、東南アジアに積極展開するインターネットカンパニー
アドウェイズの海外社員ブログです。

つい先日インドネシア広告代理店連合(PPPI)から2013年のインドネシアの広告支出が115兆ルピア(約9,900億円)で、前年比25%増の着地見込みとなると発表されました。


媒体別の内訳は下記です。

テレビ:73.6兆ルピア(約6,300億円)
雑誌・新聞:34.5兆ルピア~36.8兆ルピア(約3,000億円)
ネット広告:4.6兆ルピア(約400億円)

我々の位置するネット広告市場は規模こそ非常に小さいですが、前年比50%増で急成長しているとのことです。しかし、このネット広告市場400億円が、純広告によるものなのか?検索連動型広告によるものなのか?PCかモバイルか?インドネシアではそういった情報は非常に入手し辛い状況です。さらにどんなプレイヤーが存在するのかも同様です。まとまった資料などありません。

ということで、今回は私が知る限りのプレイヤー相関図を、現在流行り?のカオスマップなるもので、公開致しましょう。(突貫ですので、間違いやご不満点ありましたら優しくお知らせ下さいw)



Indonesia Digital Marketing Landscape 2013

図1



広告主である企業は、まず電通・博報堂のような総合広告代理店に広告の総合提案を依頼し、そこから総合インターネット広告代理店、そして検索連動型広告に強い代理店、ソーシャルメディアに強い代理店、アフィリエイト事業者など、プロモーション用途に応じて予算と仕事が降りていきます。インドネシアではコスト削減、部分最適化を目的とし、大手企業が直接分野別に特化した企業に発注することがよくあります。上場企業である広告主から末端の広告媒体(図で言うとPUBULISHER)へ直接発注するなんてんこともあります。我々もアフィリエイトという商品の特性上、直接広告主様とやり取りさせて頂くことが多くあります。

現在インドネシアのネット広告市場で最も成功しているプレイヤーはXM Gravityで、2012年の売上規模は200億ルピア(約1.7億円)、社員数は約100人と言われております。2012年のネット広告の市場が200億円ということを考えると、約1%のシェアでトップなのかと思われるかもしれませんが、ネット広告専業の代理店としてトップとお考え下さい。

図1

XM GravityはKevin Mintaragaが2008年3月にXM Gravityの前身であるMagnivateというネット広告代理店の設立したのがはじまり。わずか4年で業界トップになり、世界最大の広告代理店WPPグループに買収され、WPPグループ内で当時最年少の26歳でCEOとなりました。クライアントは、インドネシアで圧倒的な広告投資を行うユニリーバを始め、ダノン、ポカリスウェット、サムスン、XL、インドフード、花王など名立たる企業・ブランドのネットマーケティングを担当しています。Kevin Mintaragaは投資家の側面もあり、医療情報サービスの『Spotdokter』や価格比較サイトの『Telunjuk』に投資を行っています。


私が所属するアドウェイズもXM Gravityとソーシャルメディアや制作業務など、事業領域が被っているのですが、ここ最近はアフィリエイトサービス『SmartDriver』に力を入れており、独自色を強めています。インドネシアではまだまだ小さなアフィリエイト市場ですが、CLOAPと提携を行い、市場拡大に一歩一歩進んで行っております。

今年になってさらに日系企業のインドネシア進出が加速していると感じる今日この頃。私が所属する小さなITベンチャーですら、週3~4社の出張者の方々をご案内したりお話をさせて頂いたりします。

もちろん出張者して調査をして、実際進出を決定するのは、ほんの一握りなのですが、進出する際に考えなければならないことの一つが現地のパートナー選びです。インドネシアは外資規制が厳しく、業種によっては、パートナー無しではビジネス上不利になる、あるいは事業展開すらできない場合もあります。


本日は、近年進出が加速するインドネシアの食品業界、特に菓子業界を見ていきたいと思います。

 

図1


■明治製菓
パートナー:Petra Foods Limited(シンガポール)
合弁企業:PT. Ceres Meiji Indotama
出資比率:明治製菓50%、Petra Foods Limited40%
事業内容:菓子販売
事業開始:2001年2月

いきなり現地企業では無いパートナーですが、Petra Foods Limitedはインドネシアからの売上が74%でPT. Perusahaan Industri CeresやPT. General Food Industriesなどグループ100%の子会社を置き、インドネシア市場を熟知した企業です。
以下、現地パートナーが続きます。


■森永製菓
パートナー:PT. Kinosentra Industrindo社のオーナーであるMr. Harry Sanusi及びMr. Harris Sanusi
合弁企業:PT. Morinaga Kino Indonesia
出資比率:森永製菓株式会社51%。Mr. Harry Sanusi及びMr. Harris Sanusiが49%
事業内容:菓子販売
事業開始:2013年11月1日

■カルビー
パートナー:Wings group
合弁企業:PT. Calbee-Wings Food
出資比率:カルビー90%、伊藤忠10%出資で設立されたSPCが50%、Wings groupが50%
事業内容:菓子販売
事業開始:2014年 3月(予定)

■江崎グリコ
パートナー:Wings group
合弁企業:PT. Glico-Wings
出資比率:江崎グリコ株式会社50%、Wings groupの投資会社PT. Mitrajaya Ekapranaが50%
事業内容:菓子(アイスクリーム)販売
事業開始:2015年 1月(予定)



この日本で競合関係にある2社と展開領域(スナック菓子とアイスクリーム)に分けて、パートナーシップを組んだWings groupとは何者か?

図1



GLOBE ASIA 2013のグループ企業ランキングで第17位、売上高26億米ドル(約2600億円)を誇るインドネシアの第二都市スラバヤを本拠地とする財閥企業です。石鹸製造販売からスタートし、日用雑貨、パーソナルケア、食品の3分野を中心に包装資材・化学品・建設資材の製造、不動産開発なども手がけ、インドネシアを代表する財閥の一つとなりました。

日系企業とのパートナーシップは、一般消費財業界で競合関係にあるユニリーバ(28億米ドル)やサリムグループ傘下のインドフード(2012年の売上50兆ルピア≒約44億米ドル≒4400億円)と対抗するために、戦略的に行っていると思われます。今後江崎グリコと展開するアイスクリーム事業においては、ユニリーバのMagnamが強敵となります。

Wings Groupは、菓子以外でも多くの日系企業とパートナーを組んでいます。


■PT. Lion Wings
ライオンとの合弁企業。一般消費財のユニリーバに対抗。

■PT. Fajar Mitra Indah
インドネシアファミリーマート運営会社でWingsグループ100%子会社。
サリムグループ傘下のPT. Indomarco Prismatamaが展開する業界2位のコンビニエンスストア「Indomaret(インドマレット)」に対抗。

■PT. MULTIRASANUSANTARA
吉野家のインドネシアにおけるフランチャイジー。2009年、Wings groupとタイの最大財閥CP社のインドネシア法人と50%ずつで設立。



しかし、日系企業の進出が増えていると言っても、市場規模としては、まだまだです。



   【2012年日イ市場規模比較】
         小売市場   菓子市場
日本      135兆円   3.2兆円
インドネシア  10兆円   0.3兆円

(「Euromonitor International」「e-お菓子ねっと」「経済産業省の商業統計調査」など各種資料から著者作成)



この市場の中に、合弁で進出する企業、地場の企業がひしめき合っています。いくつか大手菓子メーカーを紹介します。


■PT. Indofood Fritolay Makmur
インドフードと米国食品大手のペプシコとの合弁でスナック事業を展開。

■PT. Mayora Indah Tbk.
菓子のRoma & Betterが有名。
2012年の売上は10兆5110億ルピア(約922億円)

Garudafood Group
飲料事業でサントリーと合弁企業を設立しています。
2010年の売上は約4兆ルピア(約422億円)。




中間層の消費の急拡大が期待されているインドネシア。
進出ラッシュですが、しっかりと業界研究し、パートナーを決めなければなりませんね。
先日好評だった、インドネシアの財閥特集
本日は、今年のGLOBE ASIAから、インドネシアの長者番付をご紹介したいと思います。

インドネシアの富裕層の資産は拡大しており、今年発表された経済誌GLOBE ASIAの長者番付によると、40位までの資産総額は前年比19%増の1,013億4,000万米ドル(約10兆1,000億円)となりました。さらに、上位10人の資産総額を見ると、598億5,000万米ドルで、前年の526億米ドルより33%増加となっています。つまり、より大きな資本を持つ超富裕層が好調ということになります。

上位10位を見てみましょう。金額は資産額です。

1位(前年2位):ハルトノ兄弟(ジャルムグループ)$15.5 billion
2位(前年1位):エカ・チプタ・ウィジャヤ(シナールマスグループ)$13.1 billion
3位(前年3位):アンソニー・サリム(サリムグループ)$10.1 billion
4位(前年5位):スシロ・ウォノウィジョヨ(グダンガラム)$6.0 billion
5位(前年6位):マルトゥア・シトルス(ウィルマー・インターナショナル)$3.7 billion
6位(前年7位):アブリザル・バクリー(バクリーグループ)$2.45 billion
7位(前年8位):プトラ・サンプルナ(サンプルナ・ストラテジック)$2.40 billion
8位(前年10位):ピーター・ソンダク(ラジャワリグループ)$2.3 billion
9位(前年14位):モホタル・リアディ(リッポーグループ)$2.1 billion
10位(前年7位):スカント・タノト(ロイヤルゴールデンイーグル)$2.1 billion

日本ではユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正氏が155億米ドル(約1兆5,035億円)で1位ですので、ハルトノ兄弟と同じぐらいです。日本上位10人の資産総額は661億米ドルでインドネシアより少し多いぐらいですが、前年比が22.9%増ですので、勢いとしては、やはりインドネシアの方があるのではないかという感じです。(※日本はフォーブス誌からデータをとりましたので、あくまで指標として見て下さい)


このインドネシアの長者番付を見て、今回注目したいのが、たばこ産業です。

1位(前年2位):ハルトノ兄弟(ジャルムグループ)$155 billion
4位(前年5位):スシロ・ウォノウィジョヨ(グダンガラム)$60 billion
7位(前年8位):プトラ・サンプルナ(サンプルナ・ストラテジック)$24 billion

10位中3人がたばこ産業出身で、3人とも昨年より順位を上げています。


先日ご紹介したインドネシアの企業グループランキングを思い出してください。
※金額は売上です

5位:Djarum Group(ジャルムグループ)$8.2 billion
6位:Philips Morris International(フィリップモリス)$6.7 billion
8位:Gudang Garam(グダンガラム)$4.9 billion

こちらも10位中3グループがたばこ産業です。


ジャルムグループ以外はインドネシア証券取引所に上場しており、2013年1~6月期の売上は以下です。(レートは10/25の1Rp=0.009059円)

1位:PT. Hanjaya Mandala Sampoerna Tbk(サンプルナグループ)
売上36兆1,990億ルピア(3,279億円)13.5%増

2位:PT. Gudang Garam Tbk (グダンガラム)
売上26兆6,380億ルピア(2,413億円)13.1%増

3位:PT. Bentoel Internasional Investama Tbk
売上5兆6,360億ルピア(510億円)17.6%増

4位:PT. Wismilak Inti Makmur Tbk
売上8,060億ルピア(73億円)66.4%増


ここでフィリップモリスとサンプルナの関係を整理しておくと、サンプルナグループの上場会社であるPT. Hanjaya Mandala Sampoerna Tbkは2005年にフィリップモリスインターナショナルに段階を経て株式の98%を売却(当時の金額で約5,400億円というインドネシア最大の買収劇)し、Philips Morris International傘下となりました。


なぜインドネシアにおいて、たばこ産業がこれ程の規模を持っているのか?

まず言われるのは、インドネシアは世界トップクラスの喫煙国家だということです。

2012年世界保健機関(WHO)と米疾病予防管理センター(CDC)の支援によって行われた調査によると、同国の15歳以上の男性の喫煙率は世界第1位の67.4%にのぼると言われています。女性は4.5%で、成人全体の36.1%(約6,140万人)がタバコ使用者です。さらに13~15歳の若者の20%(男41%、女3.5%)が喫煙しており、毎年23万5千人が喫煙で早死にしているという実に憂慮すべき事態です。

この若者の禁煙率というのが非常に危険で、今後全体の喫煙率が上がっていくと思われます。それは、たばこメーカーの広告戦略から読み取れるのでが、例えばインドネシアの人気スポーツと言えばサッカーとバトミントン。

■グダンガラムがスポンサードするスポーツテレビ番組
www.ggintersport.com

図1


■ジャルムがバトミントンの大会スポンサーに
http://www.pbdjarum.org/

図2


ジャルムに関しては、サッカー国内プロリーグのスポンサーを2011年まで行っていました。海外サッカーを無料で楽しめるのもタバコメーカーのおかげです。音楽イベントもたばこメーカーがスポンサーをしています。今後規制が厳しくなるのを見越し、今のうちに若者が多く集まるスポーツや音楽にスポンサードをかけているのでしょう。若者が多く集まるジャカルタのクマンでは、看板広告もタバコだらけです。

問題は早死にだけではありません。若者の喫煙者増加により、それによる国の医療費も跳ね上がっています。また、インドネシアのような発展途上国では、喫煙が国民の健康を害するだけではなく、貧困を助長します。彼らの1日の稼ぎは3ドルほどで、そのうち1ドルをタバコに費やしてしまうのです。

近年、インドネシアでもやっと規制の動きが出てきましたが、世界160カ国以上が加盟するWHOの「たばこ規制枠組み条約」に東南アジアで唯一加盟しておらず、インドネシアはたばこ規制が強まる先進国に苦悩するフィリップモリスの恰好の的となっています。


私は非喫煙者ですが、たばこ産業が全て悪だとは全く持って思っておりません。しかし、かのアヘン戦争では無いですが、国の発展が阻害され、一部の権力者だけが私腹を肥やす状態にはなって欲しくないなと思います。

サンプルナがフィリップモリスに株を売却したり、ジャルムがインターネットに力を入れていくことが、インドネシアの発展に繋がることを祈ります。たばこ産業出身以外の超富裕層の方々も、どんどん新しい分野に投資していって欲しいですね。