インドネシアの超富裕層とたばこ産業 | Global blog 〜世界の社窓から〜

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先日好評だった、インドネシアの財閥特集
本日は、今年のGLOBE ASIAから、インドネシアの長者番付をご紹介したいと思います。

インドネシアの富裕層の資産は拡大しており、今年発表された経済誌GLOBE ASIAの長者番付によると、40位までの資産総額は前年比19%増の1,013億4,000万米ドル(約10兆1,000億円)となりました。さらに、上位10人の資産総額を見ると、598億5,000万米ドルで、前年の526億米ドルより33%増加となっています。つまり、より大きな資本を持つ超富裕層が好調ということになります。

上位10位を見てみましょう。金額は資産額です。

1位(前年2位):ハルトノ兄弟(ジャルムグループ)$15.5 billion
2位(前年1位):エカ・チプタ・ウィジャヤ(シナールマスグループ)$13.1 billion
3位(前年3位):アンソニー・サリム(サリムグループ)$10.1 billion
4位(前年5位):スシロ・ウォノウィジョヨ(グダンガラム)$6.0 billion
5位(前年6位):マルトゥア・シトルス(ウィルマー・インターナショナル)$3.7 billion
6位(前年7位):アブリザル・バクリー(バクリーグループ)$2.45 billion
7位(前年8位):プトラ・サンプルナ(サンプルナ・ストラテジック)$2.40 billion
8位(前年10位):ピーター・ソンダク(ラジャワリグループ)$2.3 billion
9位(前年14位):モホタル・リアディ(リッポーグループ)$2.1 billion
10位(前年7位):スカント・タノト(ロイヤルゴールデンイーグル)$2.1 billion

日本ではユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正氏が155億米ドル(約1兆5,035億円)で1位ですので、ハルトノ兄弟と同じぐらいです。日本上位10人の資産総額は661億米ドルでインドネシアより少し多いぐらいですが、前年比が22.9%増ですので、勢いとしては、やはりインドネシアの方があるのではないかという感じです。(※日本はフォーブス誌からデータをとりましたので、あくまで指標として見て下さい)


このインドネシアの長者番付を見て、今回注目したいのが、たばこ産業です。

1位(前年2位):ハルトノ兄弟(ジャルムグループ)$155 billion
4位(前年5位):スシロ・ウォノウィジョヨ(グダンガラム)$60 billion
7位(前年8位):プトラ・サンプルナ(サンプルナ・ストラテジック)$24 billion

10位中3人がたばこ産業出身で、3人とも昨年より順位を上げています。


先日ご紹介したインドネシアの企業グループランキングを思い出してください。
※金額は売上です

5位:Djarum Group(ジャルムグループ)$8.2 billion
6位:Philips Morris International(フィリップモリス)$6.7 billion
8位:Gudang Garam(グダンガラム)$4.9 billion

こちらも10位中3グループがたばこ産業です。


ジャルムグループ以外はインドネシア証券取引所に上場しており、2013年1~6月期の売上は以下です。(レートは10/25の1Rp=0.009059円)

1位:PT. Hanjaya Mandala Sampoerna Tbk(サンプルナグループ)
売上36兆1,990億ルピア(3,279億円)13.5%増

2位:PT. Gudang Garam Tbk (グダンガラム)
売上26兆6,380億ルピア(2,413億円)13.1%増

3位:PT. Bentoel Internasional Investama Tbk
売上5兆6,360億ルピア(510億円)17.6%増

4位:PT. Wismilak Inti Makmur Tbk
売上8,060億ルピア(73億円)66.4%増


ここでフィリップモリスとサンプルナの関係を整理しておくと、サンプルナグループの上場会社であるPT. Hanjaya Mandala Sampoerna Tbkは2005年にフィリップモリスインターナショナルに段階を経て株式の98%を売却(当時の金額で約5,400億円というインドネシア最大の買収劇)し、Philips Morris International傘下となりました。


なぜインドネシアにおいて、たばこ産業がこれ程の規模を持っているのか?

まず言われるのは、インドネシアは世界トップクラスの喫煙国家だということです。

2012年世界保健機関(WHO)と米疾病予防管理センター(CDC)の支援によって行われた調査によると、同国の15歳以上の男性の喫煙率は世界第1位の67.4%にのぼると言われています。女性は4.5%で、成人全体の36.1%(約6,140万人)がタバコ使用者です。さらに13~15歳の若者の20%(男41%、女3.5%)が喫煙しており、毎年23万5千人が喫煙で早死にしているという実に憂慮すべき事態です。

この若者の禁煙率というのが非常に危険で、今後全体の喫煙率が上がっていくと思われます。それは、たばこメーカーの広告戦略から読み取れるのでが、例えばインドネシアの人気スポーツと言えばサッカーとバトミントン。

■グダンガラムがスポンサードするスポーツテレビ番組
www.ggintersport.com

図1


■ジャルムがバトミントンの大会スポンサーに
http://www.pbdjarum.org/

図2


ジャルムに関しては、サッカー国内プロリーグのスポンサーを2011年まで行っていました。海外サッカーを無料で楽しめるのもタバコメーカーのおかげです。音楽イベントもたばこメーカーがスポンサーをしています。今後規制が厳しくなるのを見越し、今のうちに若者が多く集まるスポーツや音楽にスポンサードをかけているのでしょう。若者が多く集まるジャカルタのクマンでは、看板広告もタバコだらけです。

問題は早死にだけではありません。若者の喫煙者増加により、それによる国の医療費も跳ね上がっています。また、インドネシアのような発展途上国では、喫煙が国民の健康を害するだけではなく、貧困を助長します。彼らの1日の稼ぎは3ドルほどで、そのうち1ドルをタバコに費やしてしまうのです。

近年、インドネシアでもやっと規制の動きが出てきましたが、世界160カ国以上が加盟するWHOの「たばこ規制枠組み条約」に東南アジアで唯一加盟しておらず、インドネシアはたばこ規制が強まる先進国に苦悩するフィリップモリスの恰好の的となっています。


私は非喫煙者ですが、たばこ産業が全て悪だとは全く持って思っておりません。しかし、かのアヘン戦争では無いですが、国の発展が阻害され、一部の権力者だけが私腹を肥やす状態にはなって欲しくないなと思います。

サンプルナがフィリップモリスに株を売却したり、ジャルムがインターネットに力を入れていくことが、インドネシアの発展に繋がることを祈ります。たばこ産業出身以外の超富裕層の方々も、どんどん新しい分野に投資していって欲しいですね。