「弱まりつつある」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

2ヵ月ほど前。

 

某自火報メーカーの知り合いの方から都内にある事務所ビルの誘導灯交換について相談を受けた。

普段は全くメーカー色のない我々平成め組だが、非常に細々とではあるがメーカーとの取引が無いわけでもない。

とは言っても年に1~2件、小さな案件の相談を受ける程度。

 

でそちらの誘導灯交換。

その大部分が内部のランプのみの交換で、3~4台のみ本体交換ということであった。

慣れた者が2名いれば1日でも何とかいけそうで、2日間あれば間違いなく完了できる。

 

するとその方曰く「25万円くらいでお願い出来れば」とのこと。

正直内容からすればあからさまに高額で、内心「稀に来る美味しい話」と思った。

当初9月実施とのことであったので、私とダイゴローで2日間予定していた。

 

しかしそれから2週間ほどした頃、再度その方から連絡があり、結局「他社に取られた」のだと言う。

よく分からないが、早い話が客側が相見積もりを取り、安い方を選んだということであろう。

 

こちらはてっきりそのメーカーがやることで「既に客側との話もついている」と思っていただけに「何だよ…」と、ちょっとすかされた感だけが残った。

 

とは言え、改めて考えてみるとやはり案件の内容からして、そもそもの見積もりが高額過ぎではあった。

メーカー以外の業者と「見積合戦」となれば負けるのは目に見えていたこと。

 

「美味しい」と思っていた話が流れたのは残念ではあったが、しかし同時に一つ、確信したことがある。

それは「近い将来、各自火報メーカーはメンテナンス業からの撤退、若しくは大幅な縮小を余儀なくされるだろう」ということ。

 

これは私がまだこの仕事を始めた19年前から言われていたことではあるが、やはり自火報メーカーの見積もりは基本的に高い。

 

去年4月にそのメーカーの別の支店の責任者と話す機会があったがここ最近は我々の見積もりより1つゼロが少ない金額で街の消防設備業者が仕事を獲って行ってしまう」と力なく話していたのが印象深い。

 

つまりメーカー側は100万円と見積もったものを中規模以下の業者が10万で見積もりを出すのでメーカー側は太刀打ちできない、ということである。

もちろんあまり安過ぎるのは問題だが、しかしそもそもメーカーは長らく高額な見積を出し続けてきた部分があると思う。

 

特にR型受信機などは各メーカーごとにパスワードを設定するなどとにかく自分たち以外では触れないようにすることで設置後のメンテナンスまでを仕事にしたいという気持ちが露骨に表れていた。

 

だが本来火災受信機とは「その建物を日常的に使う人たち」が最終的に触るべきものであるし、ましてや高度なR型受信機などは通常防災センターなど、一定程度その建物の安全管理に従事する人々のみが触れることが出来る環境に設置される。

得体の知れないパスワードなど本来は不要なはずである。

 

まだインターネットが広まる以前は世の中への情報発信の手段も少なく、そうしたパスワードを設定することで「他社の入り込む余地」を消すことも出来たのだろうが、しかし情報過多の現在ではもはや「情報独占」自体が無理なこと。

 

そうした長年の悪い「しきたり」の結果、世の中の価格設定との感覚が次第にずれ始め、見積合戦に負けることが増えてきたのだろう。

 

自火報メーカーはほぼ100%、メンテナンスは協力業者に任せているが、しかし費用を下げれば「もう出来ません」と業者側から断られる。

振れる仕事が減れば業者も当然離れていく。

 

やってくれる人がいなければ仕事も獲りに行けない。

そうした悪循環が続けば自然と「今後もうメンテナンスは…」という話になって行くだろう。

 

実際、ここ最近は建築検査関連の仕事で大規模な現場に出入りすることも増えたが、しかし以前と比べ消防点検についてメーカーの名前を見る機会が減った様に思う。

「この規模でも自火報メーカーでない会社が点検しているのか…」と、現場で点検業者のラベルなどを見てはそう感じることが多くなった

 

独立した当初、私もメーカーの仕事をやることを少なからず夢見た部分はあった。

何故なら仕事量も安定するし、また何より「メーカーの仕事は金額が良い」という想いがあったからだ。

 

だが昨今の実情を知る中、もはやメーカーの協力業者になることに大した意味もないことを知った。

むしろ縛りが増えてやり辛くなるだけだと。

 

今後強さを発揮するのはメーカーほどではないが、メーカー並みに人員を揃えた中規模の消防設備業者だろう。

がしかし、そこは誰もが目指せる道でもある。

 

つまりメーカーが徐々にメンテナンス業から撤退して行く一方、中規模以下の業者間の争いは激しくなるかも知れない。

だが本来それが正常な「業界競争」ではあるのだと思う。

 

メンテナンスにおける自火報メーカーの力は確実に弱まりつつある

 

 

7月、まだ若干の余裕があります!