「緩すぎるが故の弊害」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

昨日の記事でも触れた通り、残念ながら今回はJIRAAレベル2の取得は叶わなかった私。

 

だが一方、確かに悔しさがあるものの、しかし気持ちの上では6日間に渡る過酷なトレーニングをやり遂げたという満足感が何より大きく、心は晴れ晴れしい。

元々自身の覚えの悪さを思うと「合格は厳しいかな」という思いもあったので、素直に「今回は仕方がない。また頑張ろう」と気持ちを切り替えている。

 

JIRAAは内容的にはIRATAと全く同じもので、なので私は今回、あくまでもJIRAAの「レベル2」のトレーニング受講ではあったものの、基本的にIRATAのレベル2のトレーニングを終えたのと同じことではある。

 

ただIRATAの場合、アセスメント(審査)に不合格になると次回以降に開催される5日間連続のトレーニングに再度参加する必要があり、初回時に比べ費用が多少安くなるとはいえ、やはり痛い出費ではある。

 

しかしJIRAAの場合、一度各課題のトレーニングを終えるとそれ自体は有効で、だからアセスメントだけを後日に受け直すことは可能。

 

とは言え私の場合、やはり苦手な課題のいくつかを再度トレーニングしないと合格は厳しいが、それでもIRATAの様に「5日間連続トレーニングの再受講が必須」というのに比べれば気持ち的には大分楽ではある。

 

実際今回のJIRAAトレーニング、IRATAのレベル1の方々4名と同時受講の様な形であったが、そちらでも1名、課題を完了出来ず不合格になってしまった方がいた様である。

インストラクターの方曰く「☆☆さんはトレーニング受け直しです」とのこと。

 

トレーニングの内容を知る身としてはあの内容を再度1から受け直すのは精神的にもきつく、また何より社会人の場合、アセスメントを含め6日間連続で休みを取るのは容易ではない。

 

気持ちを整える時間も加味すると、やはり受け直すとしても数ヵ月後になるだろう。

でも数ヵ月も経てば覚えた技術も忘れてしまう部分がある。

正直私も4月のIRATAは結構ギリギリな合格だったが、とりあえず落ちなくて良かったと今更ながら安堵している。

 

それにしても改めて思うのが「IRATAインストラクターの過酷さ」である。

レベルが1~3まであるIRATAの場合、レベル3になると必然的にレベル2以下の者への指導が出来る。

 

つまりトレーニング設備などを整え、イギリスの本部の承認を得られれば「IRATAの指導を商売に出来る」ということである。

 

レベル3の更に上にインストラクター資格が存在するようだが、両者の違いは「一度に指導出来る人数」とのことで、レベル3の資格のみ場合、最高4名まで。

インストラクター資格を持つ者なら最高6名まで教えられるとのこと。

 

言うまでもなくIRATAレベル3クラスの人物なら日本の国内法に定める「ロープ高所作業特別教育」も知識面、技術面どちらも問題無く行えるので、IRATAをメインにしつつもそうした指導で収益を上げることは十分可能。

 

今回私が教わった方の場合、ロープ作業に必要な器具の販売、また不定期に実際の高所作業などもこなしながらトレーニングセターの運営をされている様であるが、とは言えそうして「IRATA」を商売にする方々にも3年に1度、例外なく資格更新の時期が訪れる。

何せIRATAの資格更新は過酷。

 

取得時と同じ内容のトレーニングをこなした上で、再度第三者のアセスメントに合格しなければ更新が認められないのだ。

実際過去、レベル3の更新に来た方であまりにも試技が出来ず、レベル2への降格をアセッサー(審査官)から提案された人物もいた様である。

 

つまり各レベル共、資格取得後はその技量を常時「継続保持」しておかねばそもそも更新が出来ない。

と言うことはつまり、IRATA指導を商売としているレベル3以上の方々はその更新時のアセスメントに不合格になってしまうとその瞬間、職を失う。

 

レベル3を失効しても「ロープ高所作業特別教育」の指導くらいは引き続き可能だが、しかし肝心のIRATAの指導が出来ない。

だからIRATAを商売にする人々は日頃から自身を節制し、とにかく技量の維持に努める必要がある。

 

無論、IRATAを商売としていない「IRATA資格保持者」も、資格を更新したければ当然技量を維持しておくことが必要。

なので私も3年後、再度5日間のトレーニングを受けてアセスメントに合格しなければそのまま「レベル1失効」となる。

 

もっとも私の場合、IRATAが失効しても仕事面にそこまで影響は出ないが、IRATAを商売にする方々はそうはいかない。

 

実際私が教わったそのインストラクターの方も毎度昼食は「最低限だけ摂ってる」という感じで、日頃から体力や体形の維持に努めていることが傍らで伺えた。

それを思うとIRATAインストラクターとはあまりにも過酷な職業である。

 

だが極めて専門的な「知識や技術」を商売にする者としてはそれが本来あるべき形なのだろう。

例えば我々消防設備士も5年毎に資格の更新講習があるが、しかし基本的に「受ければいい」だけ。

 

一応講習の最後に「効果測定」なる試験じみたものが存在するが、とは言え落ちるものではないし、また万が一落ちても1時間の補習を受けるだけである。

 

つまり「どれほど出来ない者でも一度取得した資格は事実上半永久的」とも言える。

「消防設備」という人々の生命にある意味直結する設備を「商売として扱う者」として、本当にあんな馬鹿げた講習のみで資格が更新されても良いのであろうか…?

 

などと、IRATAの過酷さを知るとどうしても日本国内の「商売に成り得る専門資格」の更新時の「緩さ」が気になってしまう。

いっそのことあんな簡単な効果測定、もしもパス出来なかった場合(ごく稀に見かける)、そいつの資格は本当に剥奪しても良いのではないかと思う。

 

運転免許にしても、日本は更新についてはとにかく緩い。

「厳しければ良い」ということはないが、しかし緩すぎるが故の弊害はあらゆる専門資格で確実に存在していることだろう。

 

そんなことを思うと何だかこの国の未来に少なからず不安を感じるわたし代表村田である。

 

 

7月、まだ余裕あります!