「優越感に浸りたい」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

今年2月に防火設備検査員の実技講習を終えた若頭のダイゴローであるが、先日ようやくその防火設備検査員の正式な資格証が届いた。

 

最初の学科講習が去年10月末。

そして実技が今年2月で、更に資格証の申請から凡そ2ヶ月待ってようやく届いた格好。

足かけ半年以上という、申請から資格の正式取得まで相変わらずの長丁場。

 

建築士事務所との取引が始まったことで一昨年暮れから急増した防火検査案件。

しかしウチで同資格を持つのが私のみであった為、これまではほぼ全ての案件に私が参加していた。

だがこれでようやくその業務をダイゴローと分担出来る。

 

一応今年の目標としてダイゴローは特定建築物調査員を、そしてタケは防火対象物点検資格者、そして私は防災管理点検資格者を取得出来ればと考えている。

 

防災管理点検資格者はここ最近「平成め組さんでどなたかお持ちですか?」と聞かれる機会が何度かあり、これを機に取得を目指すことに。

「それで少しでも今後の仕事に繋がるのであれば…」という気持ちである。

 

ただ正直なところ、それはあくまでも仕事のために渋々取るだけで、私自身は防災管理なんぞよりも来月の「JIRAA・レベル2」の検定を無事に合格し、今年中に「レベル3」を取得したい。

 

高所ロープ作業を行うにあたり「IRATA・レベル1」と「JIRAA・レベル3」があればそれなりに格好もつくというもの。

新たなる夢、それは「ロープトレーニング施設を併設した消防設備士事務所」を建てることである。

 

 

ところで本日はダイゴローと一緒に現場を回っていたのであるが、その車中の会話で彼が言った。

「☆☆さんも今年の特定建築物調査員の講習、受けるみたいですよ」と。

「☆☆さん」とは前述した現在ウチが取引(業務提携)している建築士事務所の代表者のこと。

 

私より確か2~3歳ほど年下だが、しかし何とあの国内最高峰の国家資格である一級建築士を持っている。

一級建築士と言えば我々消防設備士を含め、広義の意味での「建設業界」において、正に頂点に君臨する国家資格。

 

建設業界を会社に例えるなら堂々たる「役員」であり、もはや経営陣と言って良い。

実際、二級建築士でも課長クラスである。

 

何せ一級・二級建築士資格とは、この私が喉から手が出るほど、そしてアナルから金の延べ棒が出るほどに欲しい建築設備検査員に加え、特定建築物調査員や防火設備検査員なども「取得せずとも建築士資格のみでそれらの資格の業務が可能」という、夢の様な万能資格。

 

そんな神々しい資格を持つにも拘わらず「特定建築物調査員の講習を受講」とは、正直全く意味が分からない。

それこそIRATAのレベル3を持つ現役技術者がロープ高所作業特別教育を受講する、みたいな話。

 

全く持って不可思議かつ奇妙なことであったので、その「☆☆さん」本人に直接LINEで「特定建築物調査員を受けるって本当ですか? 理由を教えてくりすたるきんぐ…」と確認の連絡。

すると程なく返信があり、何でも「管理建築士」の場合だと何かと資格の使用には制限がかかるとのこと。

 

建築設備検査、特定建築物調査、防火設備検査(ついでに昇降機検査)などの建築基準法に定める所謂(いわゆる)「12条検査」の場合、前述の検査員や調査員の資格でそれを行う際は検査表に資格番号のみを記載すれば事足りる。

 

しかし建築士の場合、事務所の登録番号なども記載する必要があり、事務所を開業している管理建築士(要するに事務所責任者)になるとその事務所名義でしか検査報告が行えない…ということらしい。

 

「検査自体は出来るが報告者にはなれない」という、少々分かりにくい決まりがある様子。

やはり資格の権限が強い分、行政の管理も厳しい、ということであろうか。

なので自分の名で報告書を提出する為には結局、各検査員、調査員資格を別に取らなければならないとのこと。

 

とは言え、それらの講習は本来の受講要件は相当に厳しいが(だから私も中々受講要件を満たせずに悔しい思いをしている)しかし建築士であれば当然それだけで受講要件を満たす。

尚且つ、申し込み時に申請をすれば講習の大部分が免除されるのだから、講習時は優越感に浸りまくれる。

 

 

もう今から30年ほど前。

まだ10代後半であった当時、度々東京の中央試験センターまで危険物取扱者の試験を受けに行っていた。

 

東京以外では全ての類を1日にまとめて試験を行うが、しかし東京でのみ、特に受験者が多い「乙種4類」については他の類と分けられる形で試験が行われていた。

 

危険物試験を受ける者の9割以上が乙種4類の試験を初めに受けるが、極まれに乙4受験者の中に「既に他の乙種を取得済み」の上で4類を受けに来る者がいた。

危険物資格は乙種1類から6類まであるが、どれか1つでも乙種を持つ者は3科目中の2科目が免除される。

 

200人以上はいる受験生の中にあって10名にも満たないそんな「免除あり組」の受験生たちは皆と席が分けられ、試験開始前の試験官からの説明の際「受験番号☆番から☆番までの方たちは既に他の乙種をお持ちなので法令と物理科学の2科目が免除となります」と会場全体にアナウンスされる。

 

すると決まってそいつら免除組はさりげない素振りを装いながら会場全体を見回し「僕たちは既に他の乙種を持ってるんだ! 凄いでしょ?」と無言のアピールをしてきた。

 

その時の優越感に浸りまくりの表情が途方も無くムカついた反面、でも心の何処かではやはり「凄いなぁ…」、「羨ましいなぁ…」という気持ちがあったのは否めない。

建築士が特定建築物調査員や建築設備検査員の講習を受講するのはそれにどこか似ている。

 

ヨシ、決めた。

私も今度「甲種防火管理者」の講習でも受講して、会場で1人、優越感に浸りまくろう。