「ルーティーン」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

まだ独立して間もない頃、当時付き合いがあった仕事仲間を経由する形で現場応援に参加していた会社があった。

 

場所は都内のど真ん中で、神保町駅からも程近い小さな雑居ビルの1室に事務所を構えていた

社長、そしてアルバイトの事務の女性を含めても4名の小世帯で、当時40歳前後の社長は2代目。

 

社長とは言ってもほぼ毎日現場に出ており、先代社長時代からの古株の従業員2名と共に業務をこなしていた。

そこに私も度々応援要員として参加していた形。

2名の従業員の内1名は社長と同い年程度だが、もう1名は一回り程上。

 

でその社長より一回り上の人物。

仮に「Aさん」とさせて頂くが、この方が結構遠方に住んでおり、毎日片道2時間程かけて事務所に通っていた。

 

だがそのAさん、毎朝会社に来ると必ずルン子(令和時代のうんちの呼称)をする。

例外なく100%必ずする。

 

会社に来るなり先ずは現場に出る為の身支度を手早く整え、皆と1~2分軽く会話をした後、決まって便所に入りルン子をする。

例えばそれが「それほどルン子がしたいわけじゃないけど念の為便所に入る」という感じでもない。

 

と言うのも事務所のあるそのビル、かなり古い上に立て付けもあまり良くないのか、便所内の「音」、更には「臭い」まで如実に事務所内に漏れ伝わってくる。

なので誰かがルン子をすると少なからず事務所内にルン子臭が広がる

その臭いから察するに、Aさんは毎朝確実に「それなりの量のルン子」を出していたのは明白。

 

ルン子が出る度に数回に分けて流してくれればもう少し臭いも抑えられるところだが、しかし事務所のトイレは何せ水の勢いが弱く、一度「大」で流すと再度「大」が使えるまで2~3分程を要す。

 

その前でもレバーをひねれば一応水は流れるが、本当に「チョロチョロ…」という感じで、到底大人のルン子に打ち勝てる勢いではない。

それゆえルン子を完全に出し切ってから流す形にならざるを得ず、必然的に毎日皆、半ば強制的にAさんのルン子臭を少しは嗅ぐ羽目になる。

 

だがルン子をすることは別に悪じゃない。

しかしそれよりも、私は毎朝必ず事務所でルン子を出すAさんが不思議で仕方なかった

何せAさんの場合「ほぼ毎日」ではなく「毎朝必ず」である。

 

しかも自宅からの移動時間を考えると、たまには「事務所まで我慢出来ずに途中の駅でルン子をする」ということがあっても良さそうなものだが、多分それすらもなかったのだと思う。

 

ある意味、Aさんは「会社までは確実にルン子を我慢できる男」であった。

しかも「限界までルン子を我慢しながら駅から会社までルン子をしたくて走って来る」なども絶対に無い。

 

「しなやかな出勤」に始まり、「手早い身支度」、「皆との軽い談笑」、「颯爽と便所へ」

そしてルン子」

 

私は都合2年程その会社の応援に参加していたが、その間Aさんのそのルーティーンが崩れたことは1度も無かった。

もはや「ルン子マシーン」と化していたAさん。

 

なので私はAさんのそのルン子ルーティーンと時間が重なってはならないのでその会社の応援の際は少々早めに自宅を出て、万が一事務所でルン子をする場合は「Aさんが来るより早く済ます」ということを心掛けていた。

 

そう言えば15歳の頃に働いていた地元の塗装会社にもほぼ毎日事務所でルン子をする「タカセさん」という人がいたが、しかしタカセさんでもたまにはルン子をしない日があった。

あそこまで完璧に毎日事務所でルン子を出せるAさんはやはり只者ではなかったと言えよう。

 

もしも私のその会社の従業員で、尚且つAさんより立場が上であったのなら間違いなく「A、お前よく毎日上手いこと会社でルン子出せるな? 一体どんだけ高性能な腸内時計してんだ?」と聞いていたことだろう。

あれほど自在にルン子のコントロールが出来る人を他に見たことがない。

 

Aさん、きっと明日の朝もいつものルーティーンのままにルン子を出すのだろう。

 

 

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