「中年は明日を見ろ」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

数日前のブログの中で10歳にして宅建試験に合格した小学生について触れさせて頂いた。

 

私自身も宅建試験(当時は宅建主任者と呼んだ)には二十歳の頃に合格しているが、それでも同試験の合格者の平均年齢が凡そ35歳前後。

それを思えば二十歳での合格も相当に「若い」と言えるものであるが、やはり10歳での合格は特異な例である。

 

当時、定時制高校に通っていた私は宅建取得以前にも危険物取扱者の試験にも挑戦しており、そちらについても17~20歳までにかけて「甲種」以外の7種類を取得していた。

 

正直なところ定時制高校の生徒の学力は極端に低いが、そうした中でそれらの資格を立て続けに取得した私は我ながら教職員からも一目置かれる存在であったと思う。

もっとも私の場合、そうした資格の勉強は「アルバイトをしない為の言い訳作り」としての側面が強かったが。

 

卒業後はさすがにアルバイトなどをしながら生活していたが、相変わらず私の資格取得への挑戦は続いた。

火薬類取扱保安責任者など、もはや普通に生きていく上で凡そ使いどころがない資格なども取得してきた。

なので度々周りから「資格マニア」などと言われたりもした。

 

ところで前述したその宅建。

何故だか消防設備業界でも挑戦する人が多い。

 

受験資格などもなく、法律関係の下地など無くとも、しかし努力次第で「誰もが合格出来得るレベル」の試験であるのが宅建。

それゆえ業界問わず受験者は多いのだろう。

 

宅建取得から既に27年。

5年前に神奈川県にて「取引士」として登録をしている私は一応現役の取引士と言えないことも無い

 

なので度々「不動産屋もやればいい」などと言われたりもする。

実際、この業界で宅建取得を目指す人々も「取得後は不動産屋を」などと言う人も少なからずいる。

 

だが私自身の感想として、宅建資格は遅くとも30代半ばまでに取得して初めて意味を成すものだと考えている。

そもそも宅建資格を目指す人々の中には途方もない「勘違い」をされている方が散見される。

それは「宅建を取れば不動産取引が出来る」という勘違いである。

 

ここで言う勘違いとは法律的な解釈云々のことではない。

そうではなく単純に「経験」という実務的な部分での話である。

 

ハッキリ言って不動産取引の案件を自分自身で獲得し、尚且つ円滑に取引を成立させるまでになるには、どれほど少なく見積もっても5年は経験がいる。

しかもそれは「専従的に」そうした仕事を日々行う中での5年である。

 

私は度々このブログの中でも書いてきたが、資格とはあくまでも「スタートラインに立つ為の切符」でしかない。

正式に国や行政から「貴方その仕事行っても良いですよ」と許可を得たに過ぎない。

本当にただそれだけのことで、資格を取ったから「仕事が出来る」ということでは全くない。

 

今現在既に不動産関係の会社に勤めており、資格こそないがそうした実務のノウハウを持っている人であれば、宅建資格は直ぐに実務面に活かされるであろう。

 

がしかし、現在そうした職業に就いていない人物、ましてや消防設備業の人間が取得したところでハッキリ言って何の意味もない。

「あなた明日から不動産会社で働く覚悟はお持ちですか? また就職のあてはありますか?」ということである。

 

不動産取引とは何千万、時には億を超えることも珍しくない高額取引である。

もしも「失敗」などしようものなら大袈裟でなく取引者、つまり顧客の一生を狂わす可能性すらある。

それを思えば5年の修行でも少ないくらいだ。

 

業界問わず受験者の多い宅建であるが、一方で私は宅建資格ほどその仕事に就く意思が無い人が取っても無意味なものはないと考えている。

 

消防設備士などは全く業務経験の無い方でも持ってさえいれば現場で堂々と働かせることも出来るが、しかし宅建はそうはいかない。

資格の取得、不動産会社への就職、そして数年間に及ぶ「不動産取引業の修行」を経て初めて意味を成す。

 

「不動産の知識はあるだけでも意味がある」と言う方もいるのだろうが、しかし悲しいかな…

人間は物事を覚える時間の100倍の速さでその覚えた内容を忘れていく生き物である。

実際私は宅建の勉強に丸1年の期間をかけたが、合格後の1週間で8割の知識が何処かに消えて行った。

 

自身のことを「現役の取引士」と書いたが、日本中の宅建士の中で「最も不動産取引に関与すべきでない宅建士」が私である。

 

私が土地売買の仲介に入れば、販売者、購入者双方に「適当に二人で話して下さい。最後サインだけするんで」と言って終わるだろう。

1分で1億円の損害を与える自信がある。

 

だから今現在、消防設備業に従事している方で宅建の取得を考えている方に言いたい。

「意味が無いから止めておけ」と。

 

宅建を取るなら消防設備士の完全制覇や第一種電気工事士などを目指した方が遥かに意味がある。

中には宅建を取れば「人生が変えられる」くらいのことを語る人もいるが、宅建を取って得られるものは「宅建を持ってます」と他人に言える権利だけである。

 

「これまで不動産会社で働いた経験はゼロ」、「今現在不動産業とは全く別の職業」、加えて「既に30代後半以上」。

これらの条件の全てに当てはまる人が宅建を取得しても本当に意味が無い。

そこに費やした勉強時間は儚くも貴方の記憶の片隅に埋もれていくだけ。

 

年齢を重ねれば重ねるほど、資格の取得は「即効性のあるもの」でなければならない。

「取れれば満足」というその概念は基本的に20代以下の若者の特権と考えるべきものだ。

 

我々中年たちが見るべきは「未来」ではなく「明日」である。

 

 

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