「餅は餅屋、である」 | 消防設備士かく語りき

消防設備士かく語りき

川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

私は過去、何度となくこのブログの中で「業務資格に関する疑念や疑問」について語り、また同業者の皆様に問うてきた。

その最たるものがやはり「消防設備点検資格者」の存在であることは今更言わずもなが、である。

 

昭和41年、各建築物に設置された消防設備の工事、整備について法制度化され、それらの工事、及び整備については「消防設備士が行うこと」と定め、先ずは先んじて消防設備士の資格制度が発足。

 

そして昭和50年4月、そうして設置された消防設備の定期点検報告制度が新たに制定され、同時にそれらの点検もまた消防設備士が行うよう定められた。

 

がしかし、当時は点検対象物件に比べ全国の消防設備士の有資格者の数は少なく、到底点検が追い付かないことは明白。

そうした状況の中、いわば「妥協策」と言うべき形で新たに制定されたのが消防設備点検資格者制度である。

 

本来は国家試験を突破した消防設備士こそがその業務に当たるべきではあるのだが、しかし行政側の全国の消防設備業者に対するいわば「配慮」として「講習で取得可能なこの点検資格者だけは最低限持っていてね」ということである。

 

消防設備士試験は多くの道府県で年1回、多くても2回の実施。

然るに東京都だけは例えば甲種4類などは年に5~6回も試験が実施されており、東京会場まで気軽に足を運べる首都圏在住の消防設備業者は非常に恵まれた環境であると言える。

 

もはや首都圏の消防設備業者で働いていながら消防設備士試験を受けようとせず、いつまでも点検資格者に頼って業務に当たる人間など「ただの甘ったれた連中」というのが私の中の結論でもある。

 

しかし同時に問題なのは、確かに点検制度が発足した当時は「消防設備士の数が不足していた」のは事実であるが、しかし現在は既にそうした問題は解消された、つまり「十分な数の消防設備士」が存在している。

にも拘わらず相変わらず点検資格者などという、この得体の知れない資格を温存させておくのは全くもって理解不能。

 

講習を実施する「消防設備安全センター」には未だ多くの「消防行政からの天下り」が存在していると思われ、講習費用、あるいは資格の更新費用で定期的に得られる金を「意地でも手放したくない」というセンター側の思いが見え隠れする。

 

無論、消防行政側にもこうした「無駄な資格の存在意義」を追求しようとする人もいると思うが、利権に塗れた上層部の手によってその意見を抑え込まれているに違いない。

 

数年前、報告書の「資格者一覧」が大幅に変更され、「その作業員の所持資格」を一覧に掲載する仕様となった。

結果、「消防設備士資格(1~7類)を揃ている点検員」と、「いつまで経っても点検資格者と乙6だけのダメダメ点検員」とでは一覧表の見た目にも相当の差が出るようになった。

 

これについて私は本気で「点検資格者制度に一石を投じようとする心ある消防官の努力」が反映されたものであると信じている。

 

「この得体の知れない資格制度を滅ぼすことが出来ないのなら、では「その資格に頼ることは恥ずかしいこと」という意識を全国の消防設備業に携わる者たちに植え付け、この資格の存在意義を薄めることで将来的に自然消滅に持って行くのだ…!」

 

そんな男気と正義感に満ち満ちたどこかの消防官の魂が形となって「点検者一覧」に反映されたのだと…。

消防設備士資格だけでは「点検不可」である誘導灯でさえも、しかし何故だか点検資格者(2種)では点検可能とされるミステリー…。

 

こんな馬鹿げた制度を一体いつまで野放しにするつもりなのか。

消防庁の偉い方々、各位に対して私は言いたい。

「私が全国的なインフルエンサーになってからではもう遅い」と…

 

この資格制度のあからさまな問題点も、しかし現在はあくまでも「業界内でのみ知られた問題」であるが、しかし私が今以上の影響力を発揮するようになれば、これを「一般市民を巻き込んだ問題」にしてしまう可能性すらもある。

 

世間の人々から「消防庁は一体何をやっているんだ! こんな法の欠陥をいつまでも見過ごすとは…!」と叩かれてしまう前に、先ずはこの部分(誘導灯に関しての)だけでもとっとと改正すべきである。

 

 

などと…

どうしてもこの点検資格者の話になると心も股間も熱くなってしまう私。

ただ一応言っておくが、私は「点検資格者制度は全てがダメ」とまでは考えていない。

 

前述したように地方では消防設備士試験自体、実施回数も少なく、地方の同業者の方々はどれほど「消防設備士資格を揃えていきたい」と思っても、しかしどうやっても時間がかかる。

なのであくまでも「消防設備士を揃えるまでのつなぎ」的な意味合いで一先ず点検資格者を取るのも良いだろう。

 

また日本語を母国語としない外国人、あるいは様々な事情から満足な教育を受けられなかった人々の中にも、しかしこの仕事が本当に好きで日々の業務に当たっている方もいるだろう。

 

そうした人々にとっても点検資格者は一定の意義があるのは間違いない。

と言うか、そもそもこの資格制度の発足時点では行政側も「あくまでも一時的なもの」くらいに考えていたのだと思う。

 

だが時間の経過と共に、講習費用などによって得られる「利益」、そして何よりこの資格にどっぷりと甘える消防設備業者が増えたことも、この資格がいつまでも放置される理由の一つと言えよう。

 

さて、これだけ消防設備士や点検資格者について語っておきながら恐縮ではあるが、実は本日私が言いたいのはこれら「消防設備関係」の資格についてではない。

そうではなくて「建築設備関係」について、である。

 

実は私には消防設備点検資格者制度と同じように以前から疑問を感じていたことがある。

それは、現在4分割されている建築設備等検査員(建築設備検査員、昇降機検査員、防火設備美検査員、特定建築物調査員)の中の昇降機検査員に関してのこと。

 

上記のように4分割されている建築設備関連の点検資格であるが、しかし建築事務所登録をしている一級建築士、または二級建築士の有資格者であれば建築士の資格でもって上記全ての資格を「兼ねている」と見做される。

つまり建築設備の定期検査も、防火設備の定期検査も、そして建物の劣化診断も、更には昇降機(エレベーター)の検査さえも、全て建築士資格のみで行うことが出来る。

 

だがここに私は以前から一つの疑問があった。

確かに建築士は凄い人々である。

建物に設置されるあらゆる設備について、その機能面はもとより、法規制についても包括的に理解してなければならない。

 

特に一級建築士などはもはや「設備関連の全ての資格の頂点」に君臨していると言っても過言ではない。

実際、世の中のあらゆる建物は建築士の存在なしには建てようがないのだ

 

しかし一方で「いくら建築士と言えどもエレベーターの点検までは難しいのではないだろうか…」と長らく考えていた。

建物内部に設置された一般的な非常照明や排煙口、換気扇などは確かに一定の見識を持った建築士であれば検査は容易だろう。

だがエレベーターはいくらなんでも… と思うわけである。

 

 

さてそうした中、最近幸運にも一級建築士の方と知り合い、その方の防火設備検査に度々同行している私。

その方は普段から数多くの物件で建築設備の検査、あるいは建物調査などを手掛けており、いわば「建築物検査のスペシャリスト」。

 

防火設備検査の際、私は専ら「受信機担当」であるのだが、先日車中で一緒になった際、思い切ってその疑問をぶつけてみた。

一級建築士の方ならエレベーターとかの点検も出来るものですか?」と。

 

するとその建築士の方曰く、「いや無理です」と秒の返答。

「エレベーターはやはり専門業者じゃないと… とても無理です。危ないですよ~!」とのこと。

それを聞いて思わず「そりゃそうだよな…」と私は私でコンマ0.5秒で納得。

 

そもそも建築士は「建物全体の設計」をするのであって、エレベーターそのものを設計しているわけではない。

いくら法規上は「診ても良い」とは言われても、しかし「いざ」ではやはり難しいだろう。

 

「昇降機検査員」があればエレベーターやエスカレーターに加え、どういうわけだか遊園地の「ジェットコースター」の点検さえも行えるとなっているが、しかしジェットコースターはジェットコースターで、やはりそれを専門的に扱う会社に入社して学ばなければ点検手順など覚えようもないと思う。

 

因みに弁護士は弁護士資格でもって税理士業務も扱えるが、しかし以前、税理士の方に聞いたことがある。

「弁護士だったら税理士業務も出来るものですか?」と。

 

するとその税理士の方曰く、やはり速攻で「ダメです! 弁護士は税理のことなどまるで分かってません!」とのことであった。

「…ですよね~」と思わず頷いた私。

 

やはりこの世の中、「餅は餅屋」って話である。