同業者の中には時折「マンション専門」などと謳った業者が散見される。
またマンション専門ではなくとも個人的に「マンションの点検が好き」という人もいる。
だが私はハッキリ言ってマンションの点検が相当に嫌いである。
共用部のみを点検する分にはいいのだが、各居室部の点検などは可能な限り「やりたくない」というのが本音だ。
そんな私からすれば「マンションの点検が好き」とか、ましてや「マンション専門」など、もはや理解不能。
毎日マンションだけを点検しなければならないのであれば、私は遥か昔にこの仕事に見切を付けていたことだろう。
と言っても、マンションの点検を「丸っきりやりたくない」と言うことではない。
私にとってマンションの点検とは「箸休め」であり、5現場に1現場くらいが丁度いい。
私自身、「好きな現場は?」と聞かれれば、まず最初に浮かぶのが大学を初めとした教育施設、次いで商業施設や事務所ビル、あるいはそれらの複合施設…
その後に大型倉庫や工場関係などが続き、最後の最後で「中規模以下のマンション」が辛うじて出てくる程度。
繰り返しになるが、要するにマンションの点検が嫌いなわけである。
マンションとその他諸々の各種物件を比較した際、マンション点検には以下の様な「良くない点」がある。
「マンション点検が嫌いな理由1 ～終了時刻まで帰れない～」
仮に点検時間が「9:00～17:00」であった場合、マンション以外の建物の場合、例え時間前でも全ての点検を終えれば帰れるが、しかしマンションはそれが出来ない。
17時ギリギリ位に突然「今帰宅したのでこれから点検を!」という住人が時折存在し、なので時間ギリギリまで現場に待機する必要がある。
またそもそも、「一番遅い時間で!」と予め指定をしてくる住人が大抵どこのマンションにも一人や二人存在する。
その場合、17時終了予定であるなら少々早めに伺ったとしても16:30辺りが限界で、それ以上早く行くと「早すぎる!」と難癖を付けられる可能性も大いにある。
マンション点検は大抵管理会社を経由した上で点検依頼が来るが、その管理会社が弱気だと住人の言われるがまま、それこそ5分刻みくらいで次から次へと時間指定を受けてしまい、実際に作業する我々は何かと振り回される。
「マンション点検が嫌いな理由2 ～大した経験値が積めない～」
基本的にマンション点検は「各居室」という、小さな点検の積み重ねである。
大抵のマンションはどの部屋も似た様な造りであり、言うなればワンパターン。
中規模以下のマンションでは高度な点検技術、あるいは見識を身に付けるのは難しい。
商業施設などは備わる設備の種類も多く、様々な設備に触れる機会があり、やっていて飽きない。
然るにマンションの場合、その規模と比較して大した設備が備わっていないことも多く、あまり経験が積めない。
「マンション点検が嫌いな理由3 ～何故かゴミ部屋の住人ほどフレンドリーに点検を受け入れてくれる～」
どこのマンションも大抵、1部屋か2部屋程度、「ゴミ屋敷」みたいな部屋があるが、しかしそうした部屋の住人ほどすんなりと点検を受け入れてくれる。
「今部屋が汚いから後にして!」と言ってくる住人の部屋は我々からすると全然「大したことない」レベル。
しかし真の「汚部屋」の住人の場合、もはや「見られて恥ずかしい」などという感情はとうの昔に消え失せており、気軽な感じに「ハイ、どうぞ」と言ってくるものだから困ってしまう。
もはや元が何だったのか推測不能な「食べ残し」や、ペットの糞が普通に転がっている部屋もある。
カーペットがやたらと湿っぽく、冗談抜きで呼吸困難に陥る部屋もある。
しかし「汚い」とは言えず、平然とこちらは作業をするしかない。
「マンション点検が嫌いな理由4 ～悪質なクレーマーの存在～」
これはもはや「爆弾」とでも言うべきか。
大抵どこのマンションにも多少のクレーマーは存在しているが、中には「ハナッから」クレームを付けるつもりで待っている様な悪質クレーマーも少なからず存在している。
ほんの僅かな作業員の落ち度を指摘しては「これはチャンス」とばかりに徹底的にその穴を広げ、最終的に何かしら大きな利益を自身が得るまで引かない人間もいる。
ごく小さな「汚れ」を作業員が付けたと言い張り「部屋中の壁紙を貼り返させた」とか、「家具に傷を付けられた!」と言って大型家具を点検業者に購入させたりなど…
そうした話は枚挙にいとまがない。
特に管理会社が「弱気」なダメ会社の場合、尚のことそうしたクレーマー住人が平然とのさばってしまうため厄介である。
「マンション点検が嫌いな理由5…」っと思ったが、もはやキリがないので本日はこの辺にしといてあげよう。
無論、いくら「嫌い」とは言っても、しかし避けては通れないがマンション点検。
なので依頼があれば普通にやっているし、むしろ私は我ながらかなりしっかりと点検をする方である。
避難ハッチの点検時も必ずハシゴに身体を載せており、割と頻繁に住人から「ちゃんと身体を載せて点検したのは貴方が初めて!」とお褒めの言葉も頂戴している。
つまり「キッチリやらないと気が済まない」性格ゆえ、その分他の作業員よりもより疲れてしまうのだ。
真面目さが仇となって「マンションの点検は嫌い」という部分も大いにある。
嗚呼、自身の真面目さが憎い。
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