飛鳥・藤原京廃寺巡り48時間耐久レース(その9)~ 橿原市藤原京資料室 【18】元薬師寺 | 日出ヅル處ノ廃寺

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古代寺院跡を訪ねて

飛鳥・藤原京廃寺巡り48時間耐久レース」2日目の続きは、自転車を借りて藤原京の廃寺巡りに向かいます。

 

まずは、近鉄大和八木駅前ロータリー脇の「かしはらナビプラザ」内にある「大和八木レンタサイクル『かしはらナビサイクル』」で自転車を借りる。
事前リサーチで把握していたのだが、ここでは一般的なママチャリに加え、スポーツバイクの貸し出しもしてくれるのだ。当然こちらをチョイス。

 

どんなヤツかと思ったら、ジャイアントのクロスバイク 。入門機的な位置づけながらシマノの24段変速を装備し、ハンドルグリップはパームレスト付きのもので、長距離走行でも手のひらの痛みは軽減できそうです。

 

こいつはいいぞ!でかしたかしはらナビサイクル

 


黄色だが通常の3倍のスピードで移動できます。料金は一日1000円也


赤い柱が大極殿院閤門跡の跡

 

黄色い彗星を駆ってまず向かったのは、藤原宮大極殿院跡の西にある「橿原市藤原京資料室」。JAならけんの2階にあります。

 

この資料室には、ハイジストには見逃すことができない藤原京の1/1,000の模型が展示されているのだ。
歴史に関心が無ければ、この巨大模型を見ても「わぁ―スゴーい!大きい―!」といった感想しか出ないだろうが、ハイジストは違う!
我々には当時の寺院の伽藍が模型でどのように復元されているのかという、コーフン度マックスな視点があるのであ―る。


自転車を置いて、はやる気持ちを抑えつつ階段を駆け上る。

資料室に入っていざ模型に対面。
 

わあ―スゴーい!大きい―!

 

第一声はこれ


いやいや古代寺院だ。廃寺のチェックをしなければ。

 

資料室に掲げられた解説用写真パネルから。藤原京にはこれだけの寺院がありました


さっそく藤原京の北東部にあったという大井寺(おおいでら)から廃寺チェックを開始。

北側からの視点です

 

この大井寺は大福廃寺(だいふくはいじ)とも呼ばれますが、資料によっては掲載されていない謎のお寺。現在どの地にあるのかさっぱりわからなかったので、今回のラリーでは潔くパス

 

一方で藤原京の南部に存在していた寺院は、昨日の飛鳥編で訪れたこともあり、地形など周辺の状況などと合わせて興味深く拝見。

 

飛鳥寺。一塔三金堂形式のハイパーデラックス寺院

 

名字系3廃寺の一つ、本日捜索活動を予定している石川廃寺は、石川池の北方に伸びる丘陵地の西側に、法隆寺式伽藍が展開するかたちで復元されていました。


石川廃寺の伽藍。伽藍の南の区画は施薬院的な施設か

 

ここの古代寺院の模型を見ていて面白いのは、寺院の中心伽藍の外部にある「経営地域」と呼ばれる場所の建物群。
古代寺院の寺域は一般に二重の四角の区画になっていて、外側がお寺と外部とを区切る区画。さらにその中に回廊などで囲まれる金堂や塔などの中枢部分の区画があります。


内側の区画が「聖」とするなら、その外部は「俗」の部分で、『額田寺伽藍並条里図』(なんと国宝だ!)に示されたような務所や食堂、蔵に馬屋などが立ち並ぶ日常生活空間とも言うべき性格を有しています。


これらによって、当時の寺院の経営や暮らしの状況の一端をうかがい知ることができて、中心伽藍の配置形式とのはまた別の楽しさが感じられますね。

 

藤原京を南から。平城京や平安京と異なり宮城が中央にあるのが特徴。のちにこれがモメ事の原因となる....

さて模型チェックでお腹いっぱいになったので、資料室を辞して向かった先は、超弩級の廃寺であるこちら。

 


【18】元薬師寺跡訪問オススメ度★★★
 

元薬師寺(もとやくしじ)は今さら言うまでも無い、西ノ京の薬師寺の前身寺院。金堂の前に東西両塔が建ち並ぶ、双塔形式の伽藍の嗜矢としてあまりにも有名です。 

 

中央が現医王院の金堂跡。わかりづらいですが、金堂手前両端の土の高まりが東西両塔の跡


さっき見てきた藤原京模型での元薬師寺

 

私は平城京への遷都に伴って、元薬師寺も解体して部材を西の京へ運び、そこで再建したものだと思い込んでいましたが、最近は新旧薬師寺は併存していたという「非移建説」が有力なんだってね。知らんかった。

 

石碑は医王寺の裏手にあります

 

さて、元薬師寺はこれほどの知名度がある寺院跡であるのにもかかわらず、史跡公園のような整備がされず、現代的な手が入っていないところが興味深い。

 

それはそれで良いと思うわけですよ。
 

財政力のある自治体なら、一帯を買い上げて観光名所として整備してしまうところですけどね。
そのままにするのか、整備をするか、私はどちらもアリと思うのです。

 

金堂跡の礎石群


まあ、元薬師寺に限って言うと、創建時の姿を見たければ西ノ京に行けば良いわけで、こちらはひっそりと悠久の時を過ごしている姿が似合っているような気がしますね。
 

ひなたぼっこ中のネッコさん。猫に時間の流るる


西塔跡に行って金堂跡と東塔跡を望みます。新旧薬師寺は金堂と東西両塔の規模は同じですが、回廊は元薬師寺が単廊、西ノ京の薬師寺が複廊形式といった違いがあるようですね。元薬師寺の講堂跡は北側の既存集落内にあって詳細は不明。
 

出べその石は西塔の塔心礎。舎利孔がある方(双塔形式の場合、通常はどちらか一方)も元薬師寺が東塔であるのに対し、西ノ京の薬師寺は西塔なんだとか

 

春の日ののんびりとした雰囲気を堪能させていただきました。

 

春の日差し、ゆるやかな時間

 

 

(その10に続きます)