話題の映画「オッペンハイマー」を観てきました。
アカデミー賞7部門受賞した大作、と言われても、この映画を観ることはないと、ずっと思っていました。今さら原爆の父のことなど知りたくもないし、ハリウッドのプロパガンダはもううんざり。
でも、広島市の八丁座で35mmフィルム版の上映があると聞き、気持ちが動いた。
もともとクリストファー・ノーラン監督の世界観は好き。
監督曰く「オリジナルネガの粒状感や質感、アナログ的な色彩を35mmに凝縮したのでぜひみてほしい。デジタルよりも映像の奥行きがあり、映画の世界に没入できる」と。
35mm版の上映は、全世界で70か所、日本では、新宿の映画館と、ここ広島の八丁座のみ。
八丁座では、廃棄寸前だった35mmの映写機を7年ぶりにメンテしてこの上映を実現されたそうです。広島の愛すべきミニシアターからそんな話を聞いたのも何かのご縁、行かなくては!
実際に35mm版を観て、もちろん内容はデジタルと同一だし、別段の違いは感じませんでしたが、明るくくっきりのデジタルと比べて、35mmはモノクロの奥行きが深い、と言われて、なるほどそうなのか、という感じ。
違ったのは、本編前の予告編の上映がなかったこと。予告編はすべてデジタルですものね。
「オッペンハイマー」はIMAX版もあるし、映画の鑑賞方法を選べるのは面白いね。
「オッペンハイマー」の上演時間は、3時間。覚悟していたけど、長かったー。
主人公とその周りの人間関係を掘り下げ、すごく濃い内容だったし、時系列が目まぐるしく入れ替わるので、かなり疲れる。すこし予習して行ったほうがよかったかもしれません。
キリアン・マーフィーは、オッペンハイマーの栄光と苦悩を体現し、すばらしかった(キリアンご本人は、堅実でやさしい人っぽい)。
大好きなエミリー・ブラントも魅力的だったし、ロバート・ダウニー・Jr、マット・デイモンらオールスターキャストの演技は圧巻。
どの都市を原爆の標的にするかという議論の軽さなど、不愉快になるシーンは多いです。水爆とか圧倒的な大量破壊兵器を示威することで平和を実現できるなどという詭弁がアメリカらしい。
そして冷戦下の赤狩りを背景に、オッペンハイマーにスパイ容疑をかけて酷く尋問するシーンをみて、アメリカは自由の国と言いながら、考え方が違う人間を排斥するキャンセル・カルチャーは、今も昔も変わらないんだと思った。常に敵国をつくって戦争を続けなければ機能しない国家であるということも。
ともあれ、この映画から学ぶことは多かったし、登場人物を一人ずつもっと理解するためにもう一回観たいとも思いました。
そして、、できれば映画は2時間程度におさめていただければ大変ありがたいのですが、、