友人と遊んでも楽しいと感じることが出来ないことが多々あります。それは、私の心の問題な気もしています。
私は、よく嘘をつきます。感じてもいない喜怒哀楽を過剰なまでに表現することで、私は「人間」らしくあろうとしている気がするのです。
今朝、私は雪の降った日のことを思い出していました。確か、薬学部の女子大生が掲示板で出会った男性に殺されたニュースが流れていた時です。
何故、その日のことを思い出したかと言えば、私はその日、ネットで出会った名前も知らない男の子と会う約束をしていたからです。
ええ、ネットで会話していた相手が女と一発ヤりたいと言ったので、私で構わないのならどうぞ。と。
欲求不満だった訳でもなければ、寂しかった訳でもなく。本当に、私は処女を捨てられればよかったんです。
母曰く、私はプライドが高いのですが、私の相手に望む条件は年齢が近くて、顔が生理的に受け付けないものでなければ、後は会いに行くのにあまりお金がかからない。でした。
でも、そうですね決め手となったのは、話が面白くて、何より未経験だったから。だって、名前も知らない好きでもない童貞と処女がヤっちゃうなんてこの世の終わりみたいな行為で面白いと思ったんです。何より友人間での話題に出来ますしね。
処女を捨てたかった理由は、一つは母がよく「処女を大切にしていたっていいことは無い」と娘の私に言っていたからです。彼氏が出来たことの無い娘に対してです。後は「プライドが高すぎる」ともよく言ってました。だから、証明したんです。だって、プライドが高い人間は初体験をこんなにも蔑ろに出来ないでしょう?母の、母親としての在り方に堪忍袋の緒が切れた私は、間違っていることを身をもって証明したかったのです。
もう一つは、社会的に大切にするべきものを捨ててしまえば、拗らせに拗らせたものも手放せると思ったんです。これは正解でした。ええ、そうです。私が勝手に大切にしていたものが、こんなにも容易く手放せるとは夢にも思わなかったでしょう。
だから、私はラブホテルの天井を眺めながら内心、早く入れて出して終わらせてほしいと思いました。
そうですね、記憶しているのは、ファーストキスが好きでもない相手とラブホテルのベッドの上で舌を突っ込まれるものになるとは思ってもいなかった。ということです。悲しくも嬉しくもない。ああ、この人は私なんぞにキスできるほど欲求不満だったんだな。と、それだけです。
相手にはひどいことをしたと思います。だって私はあまりにも淡白でしたから今回の件がトラウマになってEDにでもなったら申し訳ないとも。ああ、前日に童貞の夢を壊さない程度の下着を買いに行ったくらい身なりには気をつけたんですけど、如何せん『そういう』気分にはなりませんでしたね。ま、初体験なんてこんなものでしょう。
帰りの電車で私は母に連絡を入れました。「貴方が処女なんて大切にしても仕方ないと言っていたでしょう?先程、ネットで出会った好きでもない名前も知らない男と合意の上でヤってきた」と、母の第一声は「おめでとう」でした。ええ、本当です。その後はゴムはつけたか等という身体的な心配をして、「これで拗らせていたものも捨てられるでしょう?」と、それだけです。
私に母はいません。ええ、その時、私は初めて、あの人は私の母親では無いことに気がつきました。どんなに血が繋がっていようが、母の「母親としての在り方」を私は受け入れられないことが分かって。私は部屋のベッドの上で少し泣きました。
私は、母が叱ってくれると思っていたんです。あんなニュースがあったばかりなのに、何故そんなことをしたのかと、自分の発言を棚に上げて叱るか、自身の発言は間違っていたと言うと思ったのです。けれど母は『おめでとう』と言いました。ええ、笑うしかありません。私が母に「母親像」を求めていたことにですよ。
私は確かに正しいことをしました。
ええ、確かに私の拗らせ具合からして、ああするしか手放せなかったと思います。けれど、私は間違っていると言って欲しかった。
だって、私の行動は理にかなっていても。それだけなんですもの。人として何か大切なものが欠けている気が、いいえ、いいえ、私の勘違いですね。
だって私は愛されていますから、ええ、「愛されていない」なんて口が裂けても言ってはいけませんから私は愛されているんです。分かりますか?