前回→…金蓮花の花束を1 



天音

「攻撃を開始します!」



天音の攻撃がポイントに駐留する小型のヴァイスを着実に減らしていく。

浅層とは言え、敵陣の中心付近だけあって陣容は厚い。

だがここを制圧する事でこの先、侵攻していく為の橋頭堡を確保出来る。


天音
「VWへヴィを確認!交戦開始します!」

VWへヴィは強力な敵ではあるが、それでもヴァイスである事には変わらない。

一定のリズムで、サイクルで攻撃を展開してくるので、発見事例の多い種はそのパターン解析も進んでいる。

まずは追尾性拡散ビームによる牽制から、その手に持つ剣で斬りかかってくる…。

天音
(…剣…じゃない?)

天音がVWへヴィの手にある武器が違う事に気付く。


天音
「えっ?…きゃぁ!?」

振り下ろしたメイスから爆炎が放たれる。

天音が慣れたパターンから外れた攻撃に困惑し、回避が遅れる。

天音
「あれは…メイス?」


VWへヴィが見慣れた剣ではなく、自分が今振りかぶるハンマーに近い形状の武器を手にしているのを確認する。


光里
「天音さんから入電!現在交戦中のVWへヴィが亜種であると確認!」

またか。
最近こうした亜種、特異型、属性異性体が頻繁に目撃されるようになってきている。
ヴァイスの進化速度が早まっているのか?

しかもそれがVWへヴィの亜種となれば、かなり脅威度が高い。

輪島
「戦闘ログの収集精度を最上級に。可能な限りデータを集めるよう観測班に通達」

計測された強度から見て、やられはしないと思うが、VWへヴィの亜種となれば不意の一撃で危うくなる可能性もある。

今から援護を向かわせても間に合わないだろう。
後は天音を信じるしかない。

天音
「HDMにアクセス!」


ここまでの戦闘ポイントで、テレビ映えの為に撃たせていたSPアタックとは違う。

確実にとどめを刺す為の本気の一撃。

光里
「ヴァイス反応消滅を確認」

輪島
「天音さん、お疲れ様でした。帰投して下さい。光里さんは解析班のまとめた戦闘ログをAegisに報告」


特殊宙域作戦、1日目。
進捗としては予定通りに進行し、橋頭堡は確保出来た。


VWへヴィ亜種と言う懸念事項はあるが、計画に変更は無い。


そして翌日、作戦2日目。
Aegisから件の亜種について「VWジェズル」のコードが割り振られた。

ジェズル…権仗とはまた仰々しい。
作戦名と言い、妙に格好付けた命名をしたがる傾向にあるのがAegisの悪い癖だ。


作戦2日目のブリーフィング。
昨日のVWへヴィ亜種、ジェズルに関しての情報を隊内に共有する。

あの1体だけと言う事は無いだろう。
VWへヴィを発見したら武装を確認するように通達。


2日目の侵攻で浅層を制圧する。
今日の先鋒はファティマ。

選出の理由は冷撃属性のオベリスク。

彼女の持つ爆弾はオベリスクに覿面に効く。


外殻をこじ開けてコアに攻撃するのが通常の戦法だか、彼女の爆弾は外殻ごとコアを破砕出来るので、フェアリーハート隊内でピラークラッシャーの異名を持っている。


その先はまた二手に分かれての侵攻となる。



一方はそのままファティマに、もう一方はすぐみが担当する。

今日もまたメディアがカメラを回しているのだが、よくよく思うとフェアリーハート隊は話題性に事欠かない顔触れだと思う。

ファティマはアルフライラの姫君。
すぐみも造型師として高名で、そちらの界隈では知らぬ者はいないと聞く。


それにしてもファティマの戦い方には時々肝を冷やす。

お淑やかな姫君等では決して無く、剛胆な武人とも言える類稀な戦闘センスを見せる。

このタイミングでボトムスに仕込んだ兵装の推進力を回避に使ってみせるのだから恐れ入る。

さて、すぐみの方はどうだろうか。
モニターを切り替えたその時。



光里
「宙域両弦にドライブアウト反応!敵の増援よ!」


このタイミングで増援はまずい。
すぐみは今正にガーデンと交戦中。
完全に挟撃される。

ファティマも退路を塞がれ孤立する。

輪島
「紅花さん、桃歌さん、ゆみさん、舞さんにスクランブル要請」



輪島
「敵の増援がファティマ姫、すぐみさんの交戦区域へ到達する前に排除して下さい」

ゆみ
「もう!無茶ばっかり!ギャラは弾んでよ?」

桃歌
「仲間のピンチに颯爽と登場とか、桃歌ちゃん大活躍だゾ☆」


脚の速い人選をしたが、果たして間に合うか。